政治の季節【稗史(はいし)倭人伝】

稗史とは通俗的な歴史書等をいいます。
現在進行形の歴史を低い視点から見つめます。

日本郵政の社長は誰が決めるか

2009-06-08 18:39:51 | 自民党
日本郵政株式会社の社長人事が揉めている。
西川善文現社長の続投に総務大臣鳩山邦夫が反対を表明しているからだ。
すでに鳩山としては引っ込みのつかないところまで来てしまっている。
郵政民営化にそれ程熱心だとも思えない麻生が西川続投に執着しているらしいのも腑に落ちないところである。
麻生としては、鳩山を切るか、西川を切るか悩ましいところであろう。
西川に自主的に身を引いて貰うように裏工作などしているかもしれないが、これからも起こり得ることである。
いい加減な決着を図るべきではない。

首相VS記者団 日本郵政社長人事「法律の規定通り、やっていただく」 (毎日jp 6月3日)
Q:まず、日本郵政の社長人事についてです。鳩山総務大臣は、西川社長の続投について、改めて認めないという考えを強調されましたけれども、西川社長の続投について、総理はどのようにお考えでしょうか?

A:これは法律の規定がありますんで、法律の規定に従って、努めて、何でしたっけ、法律の規定通り、やっていただくと。それをまとめるのは総務大臣だと思いますが。

Q:そうすると、鳩山総務大臣の主張も、判断の材料にはなるということでしょうか?

A:鳩山総務大臣は所管大臣。株主は財務省、財務大臣。人事のあれをやるのが官房長官。その3者で話し合うということだと思いますが。


3者というのは、「鳩山総務大臣は所管大臣。株主は財務省、財務大臣。人事のあれをやるのが官房長官」

しかし「法律の規定通りに」というのであれば、鳩山の主張は無視できない。

日本郵政株式会社法
(取締役等の選任等の決議)
第九条 会社の取締役の選任及び解任並びに監査役の選任及び解任の決議は、総務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。


ところで”株主は財務大臣”というのはその通りである。
しかし、財務大臣は形式的な株主であり、政府の代理人に過ぎない。
与謝野財務大臣は、与謝野馨個人として株主権を行使できるわけではない。
政府の決定に従って、つまりは内閣総理大臣麻生太郎の指示に従って株主権を行使するだけである。
与謝野馨が、自分の考えで、株主として社長人事に介入することは許されることではない。
内閣の一員として、麻生に意見を述べることは許されるが、それはあくまで閣僚としてであり、株主としてではない。

郵政民営化推進本部という組織が設けられている。
本部長は内閣総理大臣。
副本部長が内閣官房長官、総務大臣、財務大臣、国土交通大臣他。
この組織の下に、郵政民営化推進委員会というのがある。

この郵政民営化推進本部というのがどんな権限をもつのかよく分からない。
総務大臣・財務大臣・内閣官房長官の3人は確かにこの推進本部の副本部長である。
しかしこの3人で日本郵政の社長を決めるという規定はどこにもない。
実は鳩山も、社長人事を拒否は出来るが、社長を決めることはできない。

話をややこしくしているのは、日本郵政株式会社が委員会設置会社であるという点だ。
日本郵政が委員会設置会社であるということも、委員会設置会社というものの性質もわたしは知らなかった。

委員会設置会社(ウィキペディアより)

委員会設置会社に相当する制度は、2003年4月施行の株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(商法特例法)改正により、委員会等設置会社として導入された。当時は、商法特例法上の大会社ないしみなし大会社のみが導入することができ、初年度に導入を決定した企業は36社であった。
その後2006年5月施行の会社法において、委員会設置会社に名称を変更して引き継がれた。

委員会設置会社とは、日本における株式会社の内部組織形態に基づく分類の1つであり、取締役会の中に指名委員会、監査委員会及び報酬委員会を置く株式会社をいう(会社法2条12号)。

取締役会の中に社外取締役が過半数を占める委員会を設置し、取締役会が経営を監督する一方、業務執行については執行役にゆだね、経営の合理化と適正化を目指した。


要は、取締役は業務執行は行わず、執行役を選任・監督するだけであるということである。
そして取締役は業務執行役を兼任できるという。

いわゆる社長つまり代表執行役は取締役会が選任するということらしい。
社外取締役というのは単なる名誉職でもなく、ご意見番でもない。
大きな権限をもった役職なのである。

今度の場合でいうと、西川の社長続投を決定するのは取締役会である。その決定は総務大臣の承認が必要になる。

日本郵政の取締役

取締役兼代表執行役社長(CEO)
西川 善文(にしかわ よしふみ)

取締役兼代表執行役副社長
高木 祥吉(たかぎ しょうきち)

社外取締役

牛尾 治朗 ウシオ電機株式会社代表取締役会長
奥田 碩  トヨタ自動車株式会社取締役相談役
西岡 喬  三菱重工業株式会社相談役
丹羽 宇一郎 伊藤忠商事株式会社取締役会長
奥谷 禮子 株式会社ザ・アール代表取締役社長
高橋 瞳  青南監査法人代表社員
下河邉 和彦 弁護士


財界の郵政進駐軍といったおもむきである。
この連中が三つの委員会を構成している。

指名委員会
委員長 牛尾 治朗(うしお じろう)
委員  西川 善文(にしかわ よしふみ)
委員  高木 祥吉(たかぎ しょうきち)
委員  奥田 碩(おくだ ひろし)
委員  丹羽 宇一郎(にわ ういちろう)
監査委員会
委員長 高橋 瞳(たかはし ひとみ)
委員  西岡 喬(にしおか たかし)
委員  下河邉 和彦(しもこうべ かずひこ)報酬委員会
報酬委員会
委員長 奥田 碩(おくだ ひろし)
委員  西川 善文(にしかわ よしふみ)
委員  高木 祥吉(たかぎ しょうきち)
委員  奥谷 禮子(おくたに れいこ)
委員  西岡 喬(にしおか たかし)


特に注目されるのが”指名委員会”である。
西川、高木の社長・副社長の二人に加え、奥田・牛尾・丹羽といった財界の重鎮。
普段から自民党政治の応援団として、諮問会議だの有識者会議だのに引っ張りだこの人気者である。
どこまで郵政会社の実情に通じているかは疑問である。
取締役を指名する委員会に西川・高木の二人が入っているのでは委員会の結論は見えている。

これらの取締役がどういう経緯で選ばれたのかは分からない。
小泉・竹中の意思による選任だろうが、疑問の多い人選である。
取締役の選任というところから見直す必要がありそうだ。

政治が民間会社の経営に口出しするのはおかしい、などと石原伸晃などが言っているが、バカの言うことは無視しよう。
政治が口だししなければ、現在の取締役と執行役員による会社支配を牽制するものはなくなる。
永遠にこいつらの支配が続くことになる。
日本郵政の株式売りだしがいつ始まるかは分からないが、三分の一は政府が持ち続けることになっている。
株主総会がまともに機能するのは何十年先になるか分からない。

社長人事ばかりが騒がれているが、取締役の顔ぶれにも気をつけていなければならないだろう。

「鳩山総務相、1人で騒いでる」自民党内で批判相次ぐ (asahi.com 2009年6月4日)
(抜粋)
日本郵政の社長人事の混迷については、経済界も懸念を強めている。

 経済同友会の桜井正光代表幹事は2日の会見で「社長人事は指名委員会に議論してもらう委員会設置会社方式になっている。それを重んじるのが大事だ」と述べ、人事への過度な政治介入を批判。ある財界首脳も「経営問題のはずが、政争の具になっている」と半ばあきれ顔だ。

 水面下で西川氏の後任探しを進める鳩山総務相は複数の民間企業の元トップなどに打診したが、難航している模様。日本経団連幹部は「この逆風下で社長を引き受けるとしたら、よほどの物好き。後任の推薦を求められても、責任は持てない」と冷ややかだ。


経済界の思い上がりも甚だしい。
それというのも、これまでの自民党政治が経済界におんぶにだっこできたからであるある。
金で世話になり、無数にある有識者会議などに委員を出して貰い、政策の中身まで世話になってきたから、こんなことでまで大きな面をされる。





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