今日の社内連絡(ブログver)

sundayとかオリジナルテンポとかの作・演出家ウォーリー木下のつれづれなるままのもろもろ。

今更スロベニア日記その2(5/23~5/29)

2012-08-21 | Weblog
5/23(水)
今日もBパートの稽古。しかし人の集まりは悪い。昨日の打ち合わせで音楽班はそれぞれの担当楽器を使わずにおもちゃ楽器にしてみよう、ということになった。みな、店で買ってきたり、家から持ってきたモノを出して、もちろんオリテンメンバーもそういうのは得意なので、いろいろ出して演奏をしてみる。ワークショップだ。これはなかなか楽しい。なんだか堅いものをほぐれてくる。しかし音楽家というのはまじめな性格なのか、少し突っ込んでいくと、即興ではこれ以上無理だ、もっと現実的に考えよう、そもそもおもちゃ楽器ってなんなんだ、という堂々巡りがはじまる。もちろん僕なりにそういうのには慣れてるので、あの感じのこういうフレーズはよいから、その部分を使って、こうしてああしてと指示して、彼らは理解してくれる。音楽家たちは地下に降り、作曲作業に入る。残された役者たちで続きの動きや、相変わらず完成しないオープニングを作る。稽古後、近くのカフェで取材。通訳には道ばたで知り合ったミハくん。雨が降っている。そのあと、緑の竜がいる橋を渡り、リュビュアナ川沿いのカフェでエスプレッソで考えをまとめたり、日本に手紙を書いたりする。ひとりの時間がわりと大切だ。JSKDに戻り、大量のスープを作る。

5/24(木)
(この日の日記は書かれていない。おそらくBパートも佳境で死んでいたのだと思う)

5/25(金)
朝の4時頃、地震がある。稽古は、ブランコとマルコがいない分、さくさくと進む。とりあえずマチアシュの意見も取り入れつつ、作る。(この日もこれで終わってる。その日の手帳には覚え書きとして以下が書いてある。明確なマニュアル、英語力、会話をあきらめない、ゆずってはいけないことをしっかり伝える、あらかじめ作られた自分の脳みその中のビジョンを強固なモノに、ケセラセラ。なんだかけなげだな)

5/26(土)
10時頃に起きて、12時前に市場に行ってみる。牛乳の自動販売機をはじめてやってみる。ひとりでぶらぶらと野菜市場を回り、タマネギとナスとネギと、レタスと、アプリコットを買う。どれも新鮮でおいしそうだ。その後、中央広場で観光客に話しかけられるも英語がわからずに冷たいあしらいをしてしまう。ただたんに「写真を撮って欲しい」と言ってたのだろう。悪いことをしたし、罪悪感が残った。つい、海外をひとりでいると、警戒モードになってしまう。そのことで得することも損することもある。スーパーのNAMAでベーコンとチーズを買う。部屋でサラダを作り、ヨッシーと一緒にベランダで食べる。この作品の新しい、そして根本的なアイデアを考える。何も思いつかない。ヒントさえ見つからない。このままでは、作品として「ダメ」なものになってしまう。どうにかしたい。そのうちに少しだけ昼寝をしてしまう。5時半にプリモシュとマミさんに招待された在スロ(と言う)の日本人たちのディナーに行く。openという名前のレズビアンカフェで日本食が振る舞われる。こっちにきてこんなにたくさんの日本人に会ったのははじめだ。商社の人や日本領事館の人など。去年会った寿司職人にも会う。日本語だから聞ける微妙なことも聞ける。スロベニアにも徴兵制がつい最近まであったこと、スロベニア人の特性、その朗らかさと緩さと、それにまつわるエトセトラ。僕は先にひとりでJSKDに戻る。

5/27(日)
午前10時半にJSKDの前にプリモシュ夫婦と娘まりかちゃん(5歳)、それとカトリナ・ビジー夫妻と娘のミラちゃん(3歳)。僕はプリモシュの車に乗る。あっという間に田園地帯に変わり、ブレッド湖に連れて行ってもらう。スロベニアに来た観光客が必ず行く場所だ。湖の中に教会のある島が浮いている。観光地は観光地らしく存在していてそれが有り難いときもある。今はなんとなく、観光地にきてもほっとはしない。カフェでKrema Rezinaというケーキを食べる。これがめちゃくちゃうまい。ブレッド名物だそうで、でもリビュアナでも買えるそう。それから教会の島にボートで渡る。30分近くかけて、のんびりと。動いてるのかい動いてないのかわからないくらいのスピードで。教会の島は、歩いて一周5分くらい。鐘の音が気持ちいい。こっちにいると鐘の音を頻繁に聞くのだけど、それが異国情緒とあいまって心休まる。絵を描いて、湖畔に戻る。レストランでたらふく魚と肉を。こっちはこういうバーベキューのような大皿で出てくることが多い。ポテトやパプリカもももちろんある。そのあと、プリモシュ家と一緒に湖畔のカフェへ。コーヒーを飲み、きよと兄にお土産にKrema Rezinaを買う。自分の分も買う。家に帰ると隣の部屋のベランダではバルーンアートのWSが開かれていて、ぱん、ぱん、と風船が割れる音が景気よく何度も響いていた。日曜日のリュビュアナはとても静かだ。夜の9時頃に日が沈みだし、濃いブルーがあたりを染める。いつものごとく作品の話をキッチンでする。

5/28(月)
9時に起床、昨夜遅くまで起きてたために調子がのらない。そのせいもあったのかもしれない。今日のリハは大変だった。僕がBパートを作ってると(厳密に言えばブランコに段取りを落としてると)、マチィアシュが割り込んできて、やいやい言い出した。そのせいで現場は混沌とし、そこに僕も怒りをわらわに反応し、そのため、雰囲気はどんどん悪くなった。僕としては、まだ時間が足りないし、そんなタイミングで言われても困る。その後、兄がウクレレをほおりなげ、自分の持ち場から離れる。そのことはスロベニアの人たちに少なからず動揺を起こし、結果、稽古は途中で終わった。マチィアシュとグッチとアンドレカと一緒にカフェに行き、腹を割って1時間話す。このことでマチィアシュはだいぶ理解をしてくれた。共同演出の礼儀というか、ルールというか。同時に僕らも彼のことをもっと尊重し信用しなくてはいけないのだろう。なにか不穏な雰囲気がある。スロベニアチームでいえばカトリナがだいぶややこしい。彼女のことは気をつけないといけない。JSKDに戻り、兄が卵を買いすぎたので、それを使って巨大なオムレツを作る。ゆかの焼いたポテトとハムを合わせて、ビールで流す。それからビジーの1人芝居を見に行く。ニジンスキー、あの有名なダンサー、をモチーフにしたもので、舞台セットは面白かった。他はあまり面白くなかった。ずっと考えるのは「言葉がわからなくても、わかる演技とはいったい何なのか」ということで、それは役者の魅力に何かかかわってることなのか、どうなのかは、今はわからない。

5/29(火)
朝、少し寝坊、9時にシャワー。そのあと、ラストシーンの具体案が浮かび、それをヨッシーとベランダで話す。彼らが日本に来たときに印象深かったものが、この作品には入っている。それは僕らにとってはたいしたことではないかもしれない。じゃあ、僕らがこの国に来て、一番印象に残ってること、深く感銘を受けたことはなんなのか。それをラストシーンに描きたいと思った。それは空だ。ふたりで空を見ながら、いいねえと言い合う。午前の稽古場は、僕のBパートを音楽中心にフィックスしていく。昨日の反省も生かし、スムーズに進む。しかし最後にカトリナが軽く「わからない」と言いだし。30分近く、議論する。よくわからないことは、わからないとはっきり言う。ついつい声を荒げてしまう。そして最終的には理解できる。時間はかかるが仕方ない。この方法しか僕らにはない。2時過ぎに稽古がいったん終わり、兄とMercatorへ行き、歯磨き粉とひげそりを買う。JSKDでパスタとスープを作る。スープにはこの間の土曜に市場で買ったネギとタマネギを入れる。塩のふたが馬鹿になってて、大量の塩が入ってしまい、あわてて、巨大な鍋に入れ替える。それでもだいぶ辛い。「意味の向こう側にあるモノ」という言葉にたどり着く。ひとつの目標が見えた。夜に稽古再開。美術のトマシュに何度も美術の問題を提案する。彼も「こりゃダメだ」と言ってたから、わかってるのだとは思う。衣装のマタヤはアイデアもデザインもすばらしいが、仕事が遅いのと、あまりにも出たとこ勝負すぎる。スタッフはみないい人なんだけど、それとこれとは別だ。果たしてこれがスロベニアの演劇事情なのか。

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