German Vintage Modules

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Difference between the Neumann U47 and U48

2013-07-05 01:40:52 | vintage gear
ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウンヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン
価格:¥ 1,800(税込)
発売日:2011-07-19



U47The king of Microphonと言っても過言ではないNeumann U47と言うマイクがありますが、近年ではショートボディーよりロングボディー、K-47よりM-7、サテントップよりクロームトップ等、古ければ古い程良いみたいな傾向が見られるようですが、、、

確かにGN-107と言うトランスの入った極初期に生産された400本の個体(ラージバッジ)だけは別格ですが、BV-08入りの量産されたU47は経年変化による個体差が大きく、およそ7500本生産されたと言われるU47ですが、Neve1073同様、現存する個体はその数倍に及ぶようですので、一部のマニアには7500本の10%以下しか生産されていないU48が狙い目かも知れない 。と言うトピックです。

20年程前に所有していた100番台のU47を手放して以来、それと同等もしくは凌駕するような個体には巡り逢えないで来ましたが、幸運な事にVF14を始めヒーター用のプレート抵抗1780Ω、Bosch製のキャパシターに至るまで極めて健全で恐ろしく素晴らしいサウンドのU47を入手する機会に恵まれ、その際にマニアックですが面白いトピックを耳にしたのでご紹介します。


「U47とU48の違いは何か?」


30年余り録音業界に生息していますが、エンジニアやテックと話してもU47はcardioid とOmni、U48はcardioid と Figure of eight、指向性の違いがあるだけで内部回路は同一との説明以外耳にする事はありませんでした。

国内業界でも1、2を争うメンテナンサーが主宰するWEBにもそのように書かれていますが、どうやらそうではないようです。

"Recording the Beatles"にも書かれていますが、当時Abbey Roadに納品されたU47のほとんどは'60年初頭にNeumann本社へ送り返されU48スペックにモディファイされたのです。

ジョンとポールが向かい合わせで歌うのに都合が良いからでしょうか?


U47_inner詳細に踏み込む前にU47/48の基本的な所から入りますが、U47は1929年にデザインされたM-7と言うカプセルと第二次世界大戦当時に軍用ラジオの真空管として開発されたVF-14を使用して西ベルリンにて生産され戦後初(1947年)に登場した真空管マイクです。

それに対してU48は、M-7からK-47へとカプセルを変更して1957-1965年の間にU47マイクと組み合わせてM/S録音用などの目的で5~600本程生産されました。

先発のM-7はPVCベース、後発のK-47はMylarベースのダイアフラムで、PVCの10~12micronに対してMylarは6 micronと非常に薄いフィルムに金を蒸着させています。

カプセルやトランスに関しては、Andreas Glosserさんの所が詳しいのでそちらをご覧下さい。


さて、肝心な両者の違いですが、同時期に生産された個体を比べれば使用パーツも回路構成もほぼ同一です。

しかし、S/Nとdynamic behavior(動的挙動)はU48はU47に僅かながら劣ります。その大きな理由はPSUからの105Vをfigure of eight時に表裏同じ電圧を掛けるためにU48はcardioid時に50Vで動作させていますが、cardioid / ominiのU47はcardioid時に60Vで動作しています。

この10Vの電圧差がピーク入力時の歪率や音色に大きく影響するのですが、スペック的に劣る事を嫌うU48オーナーはどうにかして60V動作にして、より良いスペックに近づけたくなる訳で、シンメではないfigure of eightになっても良いから、、、とかPSUを120Vにモディファイしようとか色々策を練っている訳です。

これに関して、日本語のサイトを検索してみると「beatles」とか、パチもんの「US製U47」の広告ばかりで有益な情報は皆無ですが、海外のサイトはマイク界の両巨頭Klaus Heyne、Oliver Archut両氏がフォーラム内でスペック至上主義のU48オーナーを相手に熱くやりとりしているのが羨ましいです。

そんな折、「もうリタイアするから、、、」と、このU47を譲ってくれた重鎮から気になる言葉が発せられました。

「皆、U48のサウンドを聴きながらU47について語っている、、、」

諸事情からこのマイクの出自は明かせませんが、指向性スイッチの色からもわかるように'60年代にNeumann本社へ送り返してM-7→K-47サテンヘッド、U47→U48モディファイが行われた現物です。

このマイクを実際に手にして、その言葉の意味がわかったような気がします。

私はビートルマニアではないのでU47/48どちらでも好みのサウンドが録音出来れば、そんな事はどうでも良いのですが、スペック的に劣る何かがあのサウンドに作用しているのではないでしょうか?


もちろん前出のマイク界の巨頭が適切にメンテナンスしているような個体を比較した場合の話でスタジオにもおよそU47とは思えないようなサウンドのマイクが数多く存在し、辛うじてU47サウンドが感じられるような個体でも国内で長年使用されているビンテージマイクは何故か「和」的な印象だったり、USの著名なテックがメンテナンスしたマイクはドーピングでもしたかのようにモンスターサウンドだったり、50年以上の歳月は同じ個体に様々な歴史を刻まれて同じものは2つと無いとは思いますが、高温多湿の日本では吸水率の高いPVCはクラックが入りやすく、何れもre-skinやre-capが避けられない時期に来ています。

国内でre-skin出来るかどうかは知りませんが、前出の両巨匠が認めているのは世界で2人(Thierschさんと気難しい老人)だけですので、歴史的な文化財をお持ちの方は間違った選択をしないよう、人の2人分の寿命があるとされているVF-14と共に後世に伝えて下さい。

ビートルマニアや投機的な筋のおかげで高騰したNEVE/U47/V76なので、こんな事を書くと(多少)安価なU48の相場も高騰しそうで嫌なのですが、これから一生物のマイクをお探しの方は先入観を捨てて試されてはいかがでしょうか?

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