German Vintage Modules

ドイツ等のビンテージ業務用録音機材紹介、ラッキング、モディファイなど。

TAB / Telefunken U73b - Fine tune / Calibration 3

2013-04-24 01:03:40 | vintage gear
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価格:¥ 3,138(税込)
発売日:2007-11-06



U73b_rack_modi以前のように加熱する事なくヒートランも完了して、納品日を迎えサウンドチェックや増設したMakeup Gainの事など一連の説明を済ませて帰宅したのですが、「片chにノイズがのる」との連絡を受けて急遽確認に向かいました。

現場で原因を探って行くと、どうやらU73b本体ではなくモニター系が高周波のPCノイズを拾っていたようで、モニターが拾うようなノイズはMakeup Gainで引き出したハイインピーラインに影響がないはずもなく気になって念のためお預かりで対応策を考える事となりました。


U73b_knobまず、元の状態に戻せる事を条件にMakeup Gainをoliverさんがモディファイしているようにモジュール内に設置するよう変更するため、リダクションメーターのzero調整をするinstr.を2軸2連のpotを使用してなるべく違和感のないノブを探し、ノブを外せばzero調整も可能なレイアウトに変更しました。

このラックにリダクションメーターは内蔵されておらず、使用するメーターは詳細不明なのですが「J-83」と呼ばれる専用のメーターで、現地テックから仕入れた情報でE99Fのシンメの調整(Bypassモードで調整します)に必要なためU373aで使用する1mAのメーターに抵抗を噛ませれば正確な表示ではありませんが、動作する事も判明したのでRパネルにメーター用のコネクターも増設してJ-83が見つかった際にも接続出来るようにしたのが幸いしてリダクションメーター回路も若干の修理を行いました。

上記の作業で、更にS/Nも向上して外的ノイズの心配も個人的にはかなり解消されました。

U73b_rack_inner_f_finalラックに設置されていたトゥルーバイパススイッチは、既に除去してモジュールからXLRに直接結線していたので、スイッチだけ戻して作動しないのも何なので、Belden 1503で引かれていたオリジナルの配線は使用する事なくAPEMの4PDTスイッチとGOTHAMケーブルで新たに引き直しActive/Bypassスイッチも動作するようにしたのでオリジナルのBelden回線より音色も1グレード向上していると思います。

ラック内のACラインは見た目は「ゴツいシールド」がされているようで多少の変更で問題はないと思っていましたが、見えるシールドは見事に飾りで、スイッチまでのラインが220Vから100Vに変更されて電流量も増えた事もあり、頼りないオーディオ用の芯線だったので、Beldenの18AWGで引き直して念には念を入れました。

U73b_recap_final3この2点の変更で大きな影響が懸念された外的スイッチング対策は万全となりましたが、後に判明した某プロショップに注文したXLRパッチベイ等の不具合で不正な負荷が掛かったのかTUBEや一部コンデンサの状態が怪しく補充のために輸入していたコンデンサも届いたので、最後にそれを交換してみたら音色の感じが見事にハマったので、2セット目のNOS TUBEに差し替えました。

U73b_rack_front_finalこれまで何十回と行って来たキャリブレーションも「これで最後」と、より念入りに行っていた所、長年同じ場所に留まっていたカーボンボリュームのワイプの所が凹んで微妙な調整をするとそこに戻ってしまうため、+6dB基準を+4dB基準にキャリブレーションし直して凹みを避けて多少の振動では戻らないように調整して、FパネルのThresholdでは約5dBの微調整、Makeup Gainは0~+12dB程調整が出来るようになっています。

この作業をもってU73bのオタク仕様ステレオマッチングプロジェクトは全て完了となりました。




TAB / Telefunken U73b - Fine tune / Calibration 2

2013-04-16 23:32:58 | vintage gear
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価格:(税込)
発売日:



Tubeかなりの時間をパーツ探しに費やしたのですが、その中でも一番苦労したのはTUBEで、U73bにはE99F、E88CC、E80CFの3種類のTUBEが使用されているのですが、とりわけE88CCの良品を探すのには苦労しました。

E88CCは、Std.グレードの"ECC88/6DJ8" →Mil.グレードの"E88CC/6922" →電話やマイク等の用途に使用するため独政府が製造をリクエストした "CCA"、更には、DUAL TRIODEなので"TRIODE Section"をマッチさせた"E188CC"や背の高い"E288CC"など様々なバージョンが存在します。

オーディオフィリーの方にはお馴染みのTUBEのようで、高値で取引されるためかTelefunken製TUBEのほとんどが偽物(払い下げられた製造機材を使用して箱まで完璧に現在でも製造しているので厳密には真偽の判断は難しいですが、、、)で、アキバファンケンやロシアファンケン、チャイナファンケン、、、あげくの果てにベトナムファンケンまで呆れるような状態です。

仕方なく、困った時の「正倉院」高価だが確かなストックを誇る老齢の紳士を頼る事になったのですが、最少ロット12本~と高価なTUBEなのでかなりハードルが高い取引となってしまい先行きが思いやられますが、送られて来たのは大変素晴らしい音質のTUBEで上記の偽物とは明らかに違う深みや立体感が感じられます。

ネットでは、CCAに限ってはTelefunken製よりSiemens製の方が良いとの記載もあったので、バックアッププランとしてSiemens、VALVO製のCCAも用意して比較したのですが、やはりUlmプラントのTelefunken製に軍配が上がります。(怪しい○○funken製CCA vs Simens製CCAなら後者の勝ちです)

他に確認する方法もない余談ですが、当時はE88CCの中から"CCA"を選別して納品していたので、Telefunkenマークに"CCA"とプリントされている個体の殆どは偽物であるとの情報もありました。


話が逸れてしまいましたが、U73bにE88CCを使用する際には左右2本のマッチングを気にするより、DUAL TRIODEのマッチングを求めた方が音色は揃えやすいと思います。逆にE99Fはシンメの必要があるのでマッチ管を使用して下さい。

高いTUBEなので、本来ならリキャップ等の作業が全て終了した後に差し替えたい所ですが、元々入っていたTUBEがロシア管やVALVOのグレード違いだったため、入手したTUBEから2セットのペアが取れたのでそれを使用してのファインチューンに取り掛かります。

U73b_recap_ver2代替の容量でも大きな問題がない事はVer.1のリキャップでも確認済みなので、Ver.2ではフィルムコンに置き換えられる箇所の電解コンを交換してフィルムコンの検証に掛かります。

V76系でも電解はNGでもフィルムは生き残っていて音色の要となっている所なので、出来るだけ交換はしないようにしますが、このU73bは熱でやられてしまったのか残念ながら容量、ESR共に残すか交換するか微妙な状態でリークも気になったので、選別した手持ちのフィルムと交換しました。

リキャップ済みの電解も全て上位グレードに交換して音質を確認したり、オリジナルのNOS在庫があるcapはそれと交換してみたりかなりのパターンを試してみましたが、音色はさておき流石この年代のモジュールは、容量その他測定出来る数値は全て計測して左右とも同じ値のものを使用すると特性はかなりの精度で揃います。しかし近年のcapばかりだと雰囲気に乏しいので、精度と音色のバランスで最善の組み合わせを模索すべく、時間は掛かりますがその場では決定しないで音声をファイル化して後日判断する手法を採用して、最終案に辿り着いた頃には大量にあったNOSコンデンサもかなり消費してしまいました。


Rack_modi3この辺りから、ステレオのマッチングはかなり良好になって来たので、Makeup GainをFパネルに引き出す作業に取り掛かります。

本体/ラック共に極力追加工しない条件だったので、ラックに装備されていたBypassスイッチの場所にMakeup Gainを設置するために音声回線を引き直し、ACTIVE / BYPASSの切り替えは本体のコインスイッチで行う事に決定して、62番ハイインピー100KΩのラインをモジュールの外に引き出すとしばしばハムやノイズを拾いやすいのですが、定格ギリギリの低い電圧で動作させてみたりや近くにトランスを置いて意図的に悪条件を想定しても問題なしと判断して、6mm穴に適合するVOL.探しには苦労しましたが順調に完了。

Rack_modi4追加で、V系モジュールでしばしば問題になる220VAC問題に対応するため昇圧トランスを内蔵して欲しいとのリクエストに、いつも使用するHAMMOND製の182シリーズを使用する予定でしたが、前述のハイインピーラインが気になり、少しでもリーケージフラックスの少ないものを使用したいと考え、K澤製トランスなどオーディオフィリーの方々に最近話題の「Rコアトランス」を奢ってみた所、結果は良好で聴感上も数字的にもクリアになりました。

最終仕上として念入りにキャリブレーションを施し、MONO/STEREO時の左右偏差0.3dB辺りまで追い込んで3~16dB辺りのコンプレッションでも綺麗に同じようなカーブを描くのを確認して納品となった訳ですが、、、、

 


TAB / Telefunken U73b - Fine tune / Calibration 1

2013-04-12 13:50:35 | vintage gear
サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンドサージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド
価格:¥ 2,600(税込)
発売日:2009-09-09



U73b_u373aモディファイの概要としては、Stereo Bus Compとして2MIXにインサートしても問題なく使用出来るStereo Matchingと、Vari-muコンプにしては少々素っ気ない音質を「ある時期の」Beatlesが感じられるように改善する事に加え、Thresholdは現地テックによってFパネルに引き出し済みなので、+16dB固定の出力ゲインをBypass状態とコンペア出来るようにMakeup Gainを新たに増設するのがメインの作業となります。

まず、現状を把握するため測定器にかけてデータを取ったのですが、聴感上好ましいと思われる方のモジュールでも-3dB@60Hzと低域特性が腰高なV76の内部フィルター的なF特を示している事が気になります。

念のためリファレンスで使用している曲に数パターンの入力レベルやリリースタイムを設定した音声ファイルを作成して手を入れる度に良くなっているのか、悪くなっているのかが常に比較出来るような態勢を整えました。

オーナーはラッキング前にブレイクアウトケーブルで使用していた際に、本体がかなり熱くなるのを気にしていたのですが、私の印象では長時間の連続使用でもU73bは素手で持てない程の熱が出るような記憶はありません。


U73b_connecViricomなしでStereo Linkさせるためには、モジュール同士(限るU73b、U73/83はこれではダメです)の"4a"をON/OFFする事でMONO / STEREOの切替が可能になるのですが、そのブレイクアウトケーブルと後にラッキングされた内部配線を確認した所、何故か両方とも"5b"のシャーシと間違えて"5a"と0VがジャンパーされておりVari-mu回路に逆側の音声が不正に入力されてMONOモードにしても常にカップリングされた状態で妙な負荷が掛かり発熱していたのだと予想されます。

U73bの回路図ですが、ハンダ面からの見た目では"a-b"が逆になりますのでご注意下さい。

それを正常に結線し直してMONO/STEREOは正常に切り替わるようになったものの、肝心なマッチングはどうも芳しくありません。

懇意にしているテックに確認した所、どうしてもステレオペアにならない個体をステレオ使用する時に例外的に使用する荒技的な結線らしく、コネクターを確認すればスグにわかりますが、内部にアクセス出来ない際には、本体のモード切替スイッチで片方をCompモード、もう一方をBypassモードにした際に位相のずれたMONOが出力されるようならこの結線になっているとの事でした。


ここがスタート地点となった訳ですが、電解コンはほぼ全て新品に交換済みなので左右の個体差はトランス、Tube、チョーク、フィルムコンや抵抗などの何れかになる訳ですが、幸いな事にトランス単体の特性は揃っているので、加熱されていたVari-mu系のT188は多少気になるものの、入力トランスに同じものが使用されていたので入れ替えて試してみても状態に変化はないので問題なしと判断してファインチューンの作業へ取り掛かります。


U73b_recap_ver1近年では、電解コンはアキシャルが多く、チューブラそれも耐圧350V以上のモノを探すのはひと苦労なのですが、おまけに、2uf→2.2ufや4uf→4.7uf等と現在では生産されていない容量のコンデンサがU73bやV76には多数使用されています。低域特性が気になっていたので、フィルター回路になりそうな箇所はオリジナル記載の容量に差し替えてみたり色々試しましたが、聴感上も測定的にも大きな変化はないので、現地のテックに問い合わせたり、フォーラムを覗いたりして「IRT製造のモジュールはこのような特性が顕著である」事が判明したため、低域は早めにロールオフすると仮定して作業を進める事にしました。


そうなると、Tubeか余り交換したくないフィルムコンとなりますので、パーツロッカーにある手持ちのNOSパーツ以外にも新たに探さなければならないパーツが相当数ある事が判明してパーツ探しに奔走する事になります。

 


TAB / Telefunken U73b - Kompressor / Begrenzerverstärker

2013-04-08 01:29:03 | vintage gear
Rubber Soul (Dig)Rubber Soul (Dig)
価格:¥ 2,343(税込)
発売日:2009-09-09



U73brackThe BeatlesやPink Floydで有名なコンプで、当時のREDDコンソール@Abby Road StudioのStereo Bus Compressorとして使用されていました。


Fairchild 660/670と同じような原理のPentode管を使用したvri-muコンプで、2 x E99F、E88CC、E80CFで構成されており、後発のU373aU273b同様にThresholdやMakeup Gain等もなく、通常のコンプとして使用するには前後段にATT.等(+6dB入力、+16dB出力)が必要になりますが、前身のU73/83では固定されていたリリースタイムは"b"タイプからLimitモードで、0.3 / 0.6 / 1.2 sec、Compモードで、2.5 / 6 / 10 secの可変式になりました。(実際はどちらのモードでも0.3~10secまで使用出来ます)

細かい調整は出来ませんが、U83の記事にも記述した通り非常にヒューマンライクなコンプレッサーで「良い塩梅」にMIXソースをまとめてくれる魔法の箱です。

このBLOGを始めて間もない頃に、そのサウンドに憧れて数台のU73bを輸入して何とかStereo Bus Compressorとして使用出来るよう色々試みたのですが、Varicomがどうしても入手出来なかったり、近いシリアルでも個体差が大きくプロの現場で使用出来るような状態に仕上げるには途方もない手間と金額が必要な事が判明して、当時は主に使用する側だった私は諦めるしかなかった苦い思い出がある機材です。


U73brack_innerこの機材のオーナーは、本国でも腕利きで評判のテックにラッキングとリキャップを依頼して使用するのを楽しみにしていたのですが、イザ使ってみると何かしっくりと来なかったようで、先日私の所に持ち込まれました。


私も数年前に同じテックにU373aのラッキングとマスタリングでも使用出来るような精度のファインチューニングを依頼したのですが、半年程の期間と@1900ユーロ x 2を請求された事などを説明したりして費用について気になったので尋ねると、、、

U73b_inner修理/リキャップ自体の費用は@5~600ユーロだったようで、ラックを開けてみると「名」があるテックらしく金額の割に大変良心的で丁寧な作業が施されており実際に使用してみても、(近年の)プロ環境では「Stereo Link 可」として何ら問題のないレベルに仕上がっています。


U73brack_inner2しかし、求められているのは私がU373aで依頼したような内容なようなので、しっくり来ない理由を色々と解明して行くと、コンプしない状態でも左右の音色に違いがあり、3dB程度の浅いコンプや15dB近く深い状態ではあまり気にならない左右差も、6~10dB程度の頻繁に使用する辺りではアタック、リリースのタイムラインが気になったり、音質も変化の様子が左右違ったり、何よりもU73bらしい質感が乏しく単にキャリブレーションをやり直すだけでは良くなる事はなさそうな個体で、予算内でどうにか納めようとした本国テックの苦労の痕跡が感じられます。


念のため本国のテックや現オーナーの名誉のために付け加えると、今まで10台以上のU73bを扱って来ましたが現状でも(Stereoに限ってですが、、、)恐らく国内では1、2を争う優秀なステレオペアのU73bだと思います。オーナーと私が極端なオタク体質(あのサウンドでないと、、、)ゆえの記事ですので、その辺りは差し引いてお読み頂けると幸いです。


音質改善とオタク仕様ステレオマッチングに関する一連の途方もない作業メニューをオーナーに説明した所、「そこまで追い込んで、あのサウンドが再現出来るのであれば、、、」と太っ腹なお言葉を頂いたので、現状では「最善の結果」である事も伝えて、上手く行かなかった際には可能な限りの現状復帰を条件として、ファインチューニングをお受けする事となりましたので、作業の様子は徐々に公開して行こうと考えています。