German Vintage Modules

ドイツ等のビンテージ業務用録音機材紹介、ラッキング、モディファイなど。

WSW 601431 - limiter compressor

2022-06-26 21:58:19 | vintage gear

WSW社(Austria Siemens)のリミッター・コンプレッサーです。

ダイオードブリッジ方式のリミッター・コンプレッサーとしてはNEVE 33609が有名ですが、こちらも同じ方式のモジュールです。

33609は19インチの機材らしくPSUからMakeup gainまで一体型となっていますが、こちらはコンソール内蔵用モジュールなので動作には別途+24Vの電源と+50dB程のブリッジアンプが必要になります。

ブリッジアンプはWSW811403が推奨になっており、このアンプを抵抗またはトランスで分岐して設置する必要があります。

811403以外のアンプでも試しましたが、45dB程度のゲインがあれば問題なく動作するので、お客様の希望もあってインサートポイントを設置し差し替え可能にしてキャラクター設定を変更出来るようにしました。

同世代のU373aU273bはキャリブレーション次第で+4dB環境でも使用可能ですが、こちらはコンソール内の基準レベルが-9dBになっており調整幅も少ないため通常の+4dB環境で使用するには-15dB程の入力PADとブリッジアンプとは別に+10〜20dB程度の出力用makeup gain ampも必要になります。

これらをまとめたアウトボード型AIOモデル(WSW601431A)も存在するようです。

ファンクションは、入出力が逆連動したゲイン設定、リリース(0.1/0.2/0.5/1/1.5sec)、Knee設定(K1ハード〜K4ソフト)のみで使いこなしには若干の慣れが必要となりますが、モジュール同士の相性が良ければStereo Linkにも対応しています。

音色傾向はWSWらしくマイルドな高域で野太いサウンドですが、コンプ感はなかなかマッシブで一言で表現すれば「ソフトに過激」です。

ピンアウトはこちらの14コネクターは13pin T-2707です。


TAB W95C - Hoch Tief Entzerer

2022-06-23 03:15:07 | vintage gear

ディスクリート初期の3バンドEQです。ポイントはHigh:10KHz Low:60Hz MID: 700/1K/1.4K/2K/3KHz となっておりHigh・LowはGain・Attn、MidはGainのみになっています。

このEQの系譜には次世代のW395、孫世代W695W295等がありますが、W395以降はモノポーラ+24V動作であるのに対し、このW95cはTK45C、BCY18等で構成された-24V動作のEQです。

ピンアサインには24V +ーと記載されているので混同しやすいのですが、+24V機材との併用は1ピンショートを回避する必要があります。(pin3 = 0V、Pin4 = -24Vと読み替えた方が良いと思います。)4、5ピンはEQのON/OFF用リレーに電源を供給する仕様となっており、使用する電源によっては注意が必要です。

注:ちなみにモジュールやリレーに電源を供給しない場合でも音は出ます。

修理をご依頼頂いたモジュールは海外の「残響」と称される販売サイトから購入された個体らしいのですが、掲載の画像を確認すると3、5ピンがブリッジされておりリレーOFF状態で動作品として販売されていたもので、音は出るがEQは効かない、つまみを上げ下げしても実際は何も変わらない(プラセボで効きの悪いEQだな〜なんて錯覚するような)状態でした。ebayでは目ぼしい機材は枯渇してしまい他社に移行して久しいですが、パーツの枯渇で魔改造が施された個体やJUNK品をやたら高額で販売するセラーが残念ながら多いように思います。

話は逸れてしまいました、、、後継のW395からはシリコントランジスタBC140Cとなっているため温度変化の影響は然程気にする必要はありませんが、ゲルマニウムトランジスタの場合は熱による音質変化が顕著であり最悪の場合熱暴走で破壊される事も少なくないので修理には気を使います。

ゲルマニウムの場合、フロアノイズや音質変化にはややシビアな面はありますが、うまくメンテナンスが完了したモジュールの音質面ではやはり一頭地抜きん出た印象があり、近年のEQに比べると細かい事は出来ませんが通すだけでも抜群の存在感を醸し出す辺りはEckmiller W86a等を彷彿とさせ流石だと思います。

最後に、パッシブEQはゲインロスを補うため30dB程のメイクアプゲインアンプが必要となり使用するのに少々面倒な印象がありますが、こちらはその時代の雰囲気を醸し出し、単体でもユニティゲインで出力されるため便利で、何よりもミリタリー仕様かと思わせる重厚なストラクチャーに圧倒され久し振りにビンテージらしさを満喫させていただきました。