German Vintage Modules

ドイツ等のビンテージ業務用録音機材紹介、ラッキング、モディファイなど。

VUメーター付きPSU - 2

2008-12-10 01:59:18 | Metal work
DHC バッファウォーター 30mlDHC バッファウォーター 30ml
価格:¥ 1,155(税込)
発売日:2004-09-10



Psuvu_inner4このVUメーターは市販のものと同じようにスルーアウトが付いているので、モニター回線に挿んで使用しますが、、、

『モニター回線にメーター入れると音悪くなりませんか?』ある現役エンジニアのこの質問に頭の中が『???』で一杯です。確かにVUメーターにXLRを挿しますがその回路を通って音が出てくる訳ではなく、XLRと3cm程のケーブルを介在するだけで基本的に信号はスルーです。その際にVUメーターをパラでぶら下げると色々問題があるのでハイインピーのVU buffer ampを使用してその影響を最小限にしている訳です。先程の質問はそのVU buffer ampの回路に音声信号が通過した後に出力されると思っての質問だとようやく理解出来た次第です。私の世代は機材等のハード面からエンジニアになった人が多いのではないか?と思いますが、最近は音楽的な感性等のソフト面ばかりクローズアップされてハード面にはからっきし。。。と言う人も増えて来たようです。改めて両方バランス良い(音響工学的な知識も含めて)エンジニアになりたいな~と思った次第です。追求すると『1人生』では時間が足りませんね。

Psuvu_pcb余談からスタートしてしまいましたが、VUメーターはVU buffer ampを使用せずに単体でも3.6KΩの抵抗を介して動作します。アナログ時代は基準レベルが+4dBm(600Ωの負荷に対して 1mW = 0.775vrmsを生じる電圧を 0dBとする)だったので一度調整すれば+3dBとかメーターレンジの範囲内でそのまま使用する事も出来ましたが、デジタル時代になってからは-20dBとか-14dBなどヘッドルームを表す単位での基準値が増えて+4dBm / 600Ω仕様のVUメーターではマスタリング済のCD等ではオーバーレベルでほとんど振り切ったままになってしまい使い物になりません。そこで2回路3接点のELMAスイッチを使用して3段階の切替が出来るようにVU buffer ampをモディファイしました。

基本レベルは+4dBu(負荷を600Ωに限定せず 0dBu=0dBv =0.775vrms)で、マスタリング等で良く使用する-6dB / -10dBレンジ(半固定抵抗で調整可)にそれぞれアッテネート出来ます。dBm / dBu色々入り交じっていますが+4dBuとした理由は、600Ωのスタジオには必ずVUは設備されておりこのVUメーターに繋がる可能性がある機材は192 I/Oと何らかのボリューム(10KΩ程度)とほぼ決定事項ですので、それを想定してレベル調整は行っています。(メーターは接続する機材のインピーダンスで指示するレベルが変わりますので校正済みのものでも注意が必要です。)一方600Ωの負荷抵抗値は現在では長距離伝送が必要な放送局以外ではほとんど使用されていませんので600Ω切替は省略しました。

Psuvu_bufferモディファイはこの回路にある5KΩの半固定抵抗を別の基板に設置してその間に2回路3接点のロータリースイッチと半固定抵抗を付加した簡単なものです。また、この回路は近年の録音事情に対応して通常のVU規格より反応スピードが早いタイプですが、端子間に10uf 100ufをハンダ付けする事で通常の反応スピードに変更する事も可能です。この辺りの時定数で立ち上がりやリリースのスピードが変化する訳でNEVEのVU buffer ampだと昔から見慣れている反応で安心する訳ですが、それより少しだけ立ち上がりのスピードを早くした方がデジタル時代においては現実に即しています。反応スピードを早くすると安価なVUメーターだとオーバースイングしてしまい使い物になりませんが、SifamのClarity FocusはANSI C16.5-1942, British Standard BS 6840, IEC 60268-17、以上の規格を満たしている実質上の国際標準ですので正確です。(1.228Vの1kHzサイン波を入力した場合に0VUを指示、0.27~0.33sの範囲で99%に達すること。 その振れ角の振れ過ぎ角度は1~1.5%の範囲にあること。)

Psuvu_led次にメーター照明ですが、Sifam純正のLEDタイプが入手出来たので、それを使用しました。電球の方が見た目には雰囲気が良いのですが、度々『ランプ切れ』するので国内でもLEDタイプの代替品が数多く発売されています。3mmのLEDをいくつか並べた国産品と違い純正品は面で光るタイプですので視認性も良好です。

Psuvu_handle余談から規格の羅列まで振り幅の大きい内容となってしまいましたが、せっかくなのでSifamのグレードについて少々追記します。

Sifam社の正規VUメータとしてはClarity, Clarity Focus,Director,Monitorの4種類にそれぞれR42,R32,R22,R14等のサイズ違いがあります。この他に多少精度は落ちますが廉価版のAudio Level Presentor / AL39,AL29,AL19等、正規VUメータとは少し時定数の設定が違っているVintageタイプのAL20 , AL20SQ 等です。

メインのPSU部分は、PSUボードから5-pin XLRにそれぞれ任意の電圧を接続するだけなので詳しい説明は省きます。

最後に『メーターはなるべく正面から見たい』のでチルト出来る取手を付けて完成です。

10uf → 100uf 数値訂正 2009/11/12


VUメーター付きPSU - 1

2008-12-08 07:00:12 | Metal work
Wild Unit, Vol. 2Wild Unit, Vol. 2
価格:¥ 3,142(税込)
発売日:


Psuvu_comp_frontVintageモジュールは、ほとんどの場合+24VDCの片電源で動作しますが、Neumann RV-75やNTP 179-140、179-160のようなマスタリングモジュールは±15VDC動作のモジュールがあります。それらのモジュールは手元にあった方が使い勝手が良いので『一見VUメーターに見えるPSU』でコッソリ使用していましたが、目敏い友人に発見されて『新たに製作するパーツ代』と引き換えに引き取られて行きましたので第2号機を製作しました。

Psuvu_inner1最近の録音は、ほぼ100%Pro-tools等のDAWが主役となり、それさえあれば自宅でもスタジオとそれほど遜色の無いようなMIXが出来る時代となってしまいましたので、プライベートスタジオでもHDが常識になってしまいましたが、以外と設備されていないのが『VUメーター』です。DAW内蔵のピークメーターだけでのMIXではどうも納得が行かず、かと言ってプラグインのVUメーターはどうも好きになれず、そこで登場するのが『SIFAM R22AF』です。高価なSIFAM製の中でもClarity Focusと呼ばれる最高位に位置するメーターでNEVEやSSLでもお馴染みです。

Psuvu_r22af市販のVUメーターを色々物色しましたが、Sensitivity が切替出来るタイプはどれも高価な上に好みのアンプカード搭載のものは廉価版のSIFAMだったり、R22AFを使用しているものは、未だに600Ω時代のレスポンスだったりで一口にVUメーターと言っても色々ある訳です。結果的にカスタムメードとなり1号機ではNEVEのアンプカードを使用していましたが、先日PSUで紹介したJLM Audioで簡単にモディファイ出来そうなアンプカードと説明があったので今回はそれを使用して製作する事にしました。

Psuvu_comp_rear『VUメーター付きPSU』ですので、裏からは5-pin XLRを介して 0V / +24V / ±15V / +48VDCが出力可能で、それに加えVUメーターのファンクションは+4dbuを基本にそのレベルから -6dB / -10dBと2段階のアッテネーションが可能で、マスタリングスタジオでの作業を行わないローバジェットMIXの際に必要なファイナライズ処理時もメーターが振り切ったままの状態になる事無くモニタリングが出来ます。

次回は、実際の製作過程と変更点などを紹介します。


TAB U83 - Tube Compressor

2008-12-06 04:46:08 | vintage gear
time capsule:th time capsule:th
価格:¥ 2,300(税込)
発売日:2000-12-06



U83_front西独製の真空管コンプレッサーと言えばU73bが有名ですが、その前身のU73とほぼ同じ回路のU83です。違いは2段目のE88CCの所の回路が少々違っていて、実際のオペレーションではU73は+6dBで作動するリミッターと緩い『Knee』のコンプレッサーの切り替えに対して、U83は+6dBと+12dBで作動するリミッターの切替となっています。カタログに『Begrenzorversärker für UKW - sonder 』と記してあり、それを例によって機械翻訳にかけると『モノFMラジオ用リミッター』らしい事が判明します。回路的には簡単な変更(1MΩ、5MΩ、10nfの追加)でU83→U73にモディファイ出来ますので有名で酷使されたU73より程度の良いモジュールが入手出来る事が期待出来ます。

U83_innerこのモジュールは以前V76/80用のランチボックスを納入させて頂いた方からお揃いのラック製作をご依頼頂いた際にお預かりしたもので画像の通り『新品(NOS)』のような素晴らしいモジュールでした。NOSと言うと見た目は良いですが、40~50年経過した個体は長期間通電していないのでコンデンサーの容量抜け等のリスクは多少なりとも避けられない事が多く通電前は心配しましたが、今回は幸運な事に全く問題がなく、そのサウンドを聴いた瞬間は目が覚める思いでした。

U83_pcbU73シリーズのコンプレッサーは何台か目の前を通り過ぎて行きましたが、VARICOMの入手が困難な事とステレオリンクの問題がネックとなり少々避けて通る事になっていました。もしお預かりしたモジュールのような個体が2台入手出来れば迷わず『買い』です。U373aに使用するようなコンフィギで試聴しましたがアタックやリリース等の調整出来るファンクションは何もありません。と言うより何も調整しなくても『何をどれだけ調整する』のかU83が理解していると錯覚する程に音楽的な利き方です。製造時に完璧に調整されてそのままの状態で40年程タイムカプセルに詰め込まれていたようなサウンドで、いつも気になる『新品当時の音』を体験させて頂きました。

ピンアウトはこちらです。


Solders - ハンダ

2008-12-03 05:23:43 | Metal work
MIXA IMAGE LIBRARY Vol.7 天然の意匠MIXA IMAGE LIBRARY Vol.7 天然の意匠
価格:¥ 10,500(税込)
発売日:1995-04-04



Soldersこの所、ラッキング作業が立て込んでいて、いつも使用しているハンダが残り少なくなったので久しぶりに注文しました。ケーブルで有名なCardasは以前から使用しているQuadeutecticと今回試しに入手したLead FreeのTrieutectic、Wonder Solderは鉛入りのRohsではないタイプです。Wonder Solderの成分は『鉛が入っている』事しか公表されていないので詳しい成分は解りませんが、CardasはTin / Lead / Silver/ Copperの4種類で Quadeutectic、その成分から鉛が除かれてTrieutecticのようです。1 lbスプールですので、これだけあればしばらくは安心して作業出来ます。(以前、作業の途中でなくなってしまったので急遽オークションで調達したのですが国内では取り扱いがないためか結構高いんです。。。細い銀を溶かして付けている感じでXLRのメス側なんかは泣けて来ます。)

Lead Freeのハンダは健康にも環境にも良いのですが、溶解温度が少々高くなったり、艶が出なかったりと言われてますが、Cardasに関してはそれほど作業性の差は感じませんでした。音質が良好?と噂されるVintageハンダと呼ばれるものの中には『たっぷりの鉛』が含まれているタイプが結構ありますが音質は鉛の有無で変わるのでしょうか?QuadeutecticとTrieutecticを同じような条件で試聴してみましたが全く違いは感じません。ハンダの1~2ヶ所で劇的に変わる方が問題ですが、ラック全体をホームセンターで売っているようなハンダで仕上げた物と比べるとかなり劇的に違った事からこの2社のメーカーに落ち着きました。

鉛というより素材金属の質が大きく関わっている気がします。ハンダもそうですが、ケーブルもトランスも金属が関わるものは昔の素材の方が優れていると思います。精製技術などは昔と比べ物にならないくらい現在の方が発達していると思いますが採掘される鉱物の質なのでしょうか? 資源は有限だな~と、、、これからは健康(注意書きには触ったら手を洗え!と激しく書かれています)と環境のためにLead Free化して行こうと思いますが、どうしても『鉛入りハンダ』にこだわる方は、その旨お知らせ下さい。寒さに負けず換気を良くして作業します。