German Vintage Modules

ドイツ等のビンテージ業務用録音機材紹介、ラッキング、モディファイなど。

NEVE 33609 - Stereo compressor / limiter

2015-01-06 00:05:36 | vintage gear

新年明けましておめでとうございます。

本年もどうぞ宜しくお願い致します。

 

Recording Studioの定番コンプ、NEVE 33609です。

メーターベゼルが透明なvariantなしの33609に始まり、メタルノブの通称"33609A"、トランスがBelclere/Willesden、ノブがプラスティックに変わった"33609C"、ロック付きのメイントグルスイッチが安価なプッシュスイッチに変更されたJapan仕様"33609J"、それをディスクリートにグレードアップした"33609JD"に至るまで様々なバージョンが存在しますが、今回は人気の高い2世代目のメタルノブ33609をご紹介します。

 

海外では、EP4メインコネクター240V仕様でメタルノブ最後期に製造された(variant A rev.12)個体の評価が高いようですが、この個体はメインコネクターがXLR 2pinである事から、rev.12とほぼ同じ時期にゼネラル通商(当時のNEVE社日本代理店)によって輸入された個体であると想像されます。

当時は現地価格の数倍にも及ぶ価格設定(NEVEコンソール1億円なんて言われていた時代ですw)にもかかわらず、コストダウン交渉は熾烈さを極めたようで、メタルノブでも"J"仕様には残念ながらちょっとしたトラップが潜在していますので、メインコネクターを始め地味な改善を重ねるファンチューンを実施しました。

詳しくは設計者Geoff Tannerさんのフォーラム"The History of the 33609"にも変遷が記されていますのでお読み下さい。

テクニカルな方面は、33314にも使用されているBA475マザーボードに2N3055ベースのB190 PSUカードで給電する2U/19inc.のステレオコンプ/リミッターですが、入力はmarinair/st.ives T1452/31267(10KΩ)で6dB程下げられた後に、Diode Bufferとして(1073等のマイクトランスでお馴染みの)T1454/10468でゲインを稼ぎ、ICベースのBA640で出力トランスのLO1173(600Ω)ドライブするClass AB動作の機材で、コンプ/リミッター以外の音声回路構成や使用パーツは33608Aとほぼ共通しています。

BA640はB440の600Ω負荷問題をクリアするために開発されたアンプカードですが、良くも悪くも古典的なICのNE5534ベースで若干の粗さが耳につきます。幸いな事にディスクリート構成のB440やBBC特注のB512も同じピンアサインで差し替えも可能なので「ロー出しハイ受け」が一般的になった現在は用途や音色の好みによっていくつかの選択肢がありますのでお持ちの方は是非お試し下さい。

内部のコンフィギはフロントパネルの並びとは逆にコンプレッサー→リミッターなので、リミッターのthresholdはコンプ部のMakeup Gainに影響を受けます。

バイパスは一応ハードウエアバイパスなのですが、入力はパラで常に31267がぶら下がった状態のまま3PDTのトグルスイッチで出力のみを切り替えていますので厳密にはトランスからの跳ね返りでバイパスしても若干位相が乱れます。

コンプセクションのアタックは固定(簡単なモディファイで調整出来るようにもなります。)で、レシオも1,5/2/3/4/6 : 1、リリースは100/400/800/1500msに加えauto1(500ms)/2(2s)と多彩です。

リミッターセクションのアタックはfast(2ms)/Slow(4ms)の切替式で、リリースは50/100/200/800ms、auto1(800ms)/2(8ms)と数字的には一般的ですが、定評あるNTPNeumannのリミッターとは若干方向性が事なり、LA-2やLA-3のlimiterモードのような感じです。

実機の内部をじっくり見たのは久し振りですが、以前書いたU373aU273bの記事を思い出しました。

私感ですが、33609のコンプ部はU273の影響を大きく受けているような印象があり、後段にEMI/abbey roadのZener Limiter的なリミッターをプラスして、2N3055ベースのPSU(簡易的なN224a)で駆動するのですが、大きな音色の違いは"Haufe" vs "marinair"がやはり決定的な違いのように思います。

そんな機材達の良い所取りをしながらスタンドアローンで動作する使い勝手の良い名機に仕上げた手腕は当時の縦割りだったNEVEのR&D部門を統合して機能的にまとめあげたGeoffさんの偉業を彷彿とさせます。

この機材はメジャー過ぎて殆どのスタジオに常備されているため短い期間しか所有した事がありませんでしたが、自ら整備出来るようになった今、改めて向き合ってみると、、、やはり偉大な記念碑ですね。

 

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