German Vintage Modules

ドイツ等のビンテージ業務用録音機材紹介、ラッキング、モディファイなど。

Protean Tone Rack

2022-07-02 17:48:17 | Metal work

総重量28kg超のモンスター級ラックです。

左からNTP 179-160TAB W95CWSW 601431、Eckmiller MR90、Neumann PR、WSW 811403 の構成です。

ナチュラルな179-160から、一癖、二癖もある601431、W86aやplutecを彷彿とさせるW95c、ウルトラスイートなのに暴れん坊のマイクプリ811403、コンプの入力調整にもチャンネルストリップ用のフェーダーとしても使用出来るMR90のラインナップで変幻自在なサウンドメイキングが可能です!

背面XLRパネルはモジュールの入出力に加え、601431用のゲインアンプは811403以外のアンプでも試しましたが、45dB程度のゲインがあれば問題なく動作するので、お客様の希望もあってUTCトランスで分岐した601431のゲインアンプ用インサートを設置し差し替え可能にしてゲインアンプによるキャラクター設定を変更出来るようにしました。

UTCのトランスが大型かつ重力級のため設置場所に悩みましたが、どうにか耐荷重もクリア出来るポジションに収める事が出来ました。

 

Dannerモジュールは固定方法に困る事はあまりないのですが、WSW社のユーロカードモジュールは変則サイズで固定用の仕組みもないので、後端を挟む形で固定して、飛び出し防止のため蓋を固定しているねじ穴を流用してストッパーを設置したのですが、そのネジ規格がM2、M2.5や2.6でもなくインチネジも当てはまらない特殊なサイズで少々苦心しました。

もう一点、苦心したのはWSWコンプの出力レベルで、基準レベルが-9dBなので+4dB環境では民生用の-10dB程度しか出力されないため、せっかく設置したハードウエアバイパスもレベル差が大きく実用的にはなりません。

本来なら同時期のラインアンプ等でメイクアップするのが理想的なのでしょうが、外部接続にするとIN/OUTのコンペアも出来ないので、U373aの記事にあるBob LudwigさんのBurr-Brownを思い出して、類似の回路でアンプカードを製作して+20dB程度(-2dB〜+20dB, 2dBステップ)のメイクアップをしています。

手持ちにBurr-Brownもあったのですが、WSWコンプ自体の個性が強烈なため最終的には定番中の定番ですがシグネティクスのNE5532に落ち着きました。

W95CのIN/OUT、WSW 601431のactive/bypassとLink、Makeup Gainの設置場所もコンパクトですがどうにか収まり、使い勝手の良いラックに仕上がったと思います。

キャリブレーションですが、ブレイクアウトケーブルではゲインアンプを分岐する所で使用したトランスの個体差で完全には調整しきれず、T2707のエクステンションケーブルもないので少々困惑していましたが、ラック内の他モジュールを抜いてどうにか行いました。

両ch同時には調整できないので片ch毎に探って何度となく繰り返してようやくどうにかステレオマッチする所まで漕ぎ着けました。

このモジュール達の動作電圧は±15V(179-160)、+24V(WSW)、-24V(W95c)と多岐に渡り容量もそれなりに必要なので少々大型のPSUになってしまいましたが、pin1ショートの心配もなく使用出来るラックになっています。

過去の歴史遺産でもあるモジュールの修理や調整もやりがいがありますが、それらを組み合わせて新たな機材に仕上げる作業は格別の達成感があります。

貴重な機会を与えて頂きどうもありがとうございました。