German Vintage Modules

ドイツ等のビンテージ業務用録音機材紹介、ラッキング、モディファイなど。

RFT MV810 - Mikrofonvorverstärker

2024-03-12 04:26:19 | vintage gear

今から遡ること、14年前の2010年にご紹介したRFT MV810/2がありましたが、今回はその前身のMV810です。

RFZ・RFTお約束であるロータリースイッチのリペアの様子も掲載していますのでこちらをご覧ください。

"/2"と同様に20〜60dB/5dBステップのGAINを持ち、-20〜-50dB/10dBステップのPADも備えているのでMIC、LINE共に様々なドライブ状況で対応可能です。

電源は-20Vハイグランド回路で動作し、/2の20mAに対してMV810は70mAとやや大きめの電力を消費します。

入出力共にトランスバランス、ピンアサインはMV810/2と同様で、コネクターは8ピンのものを2個使用します。

外観上はフロントパネルにあるモデルナンバーの"/2"以外全く同じ形状をしているため違いに気付かないとは思いますが、中身は全くの別物でサウンドキャラクターも大きく異なります。

SC299F、SF126C、SF127D等のシリコントランジスタで構成されているMV810/2に対して、前身のMV810はGC117、GC118等のゲルマニウムトランジスタで構成されています。

製造当時もRFT製のトランジスタは供給が充分でなかったのか、修復歴のなさそうな箇所でも最初からロシア製の代替品が採用されているモジュールも多く見られます。

肝心な音色ですが、シリコンのMV810/2は立ち上がりも良く粒立ちも滑らかで、その外観からは想像出来ない"Rich and Warm"なサウンドですが、ゲルマニウムのMV810はそれと比較すると音の粒立ちはやや粗く、やや少ないヘッドルーム上限近くになるとザラっとした歪みが現れて来ます。

この説明だけではMV810/2に軍配が上がるような内容ですが、実は録音するにあたりビンテージ感を求める際に必要な要素の多くは、粒立ちの荒さの隙間から見え隠れする奥行き感だったり、音の大小のみによる強弱ではなくドライブした際の耳に心地良い歪感だったりするので用途によっては大きく評価が異なります。

とりわけ、音場がわかりやすく立体的に構成される様はV781を彷彿とさせ、強弱への反応性の高さはレベルの変化以上に顕著なニュアンスとして表現されるので使い手次第では唯一無二のアンプになり得る事は容易に想像できます。

ただ、ゲルマニウムトランジスタの温度による音質の変化がやや大きため使用環境が限定されるのと、また入手性が絶望的に困難なため保守にはやや手間が掛かりますが、状態の良いモジュールを入手された方はまず手放す事はない程、魅力的なアンプです。

 

2010年にMV810/2を入手した際にMV810も20+台ほど入手していたのですが、当時もトランジスタが見つけられず5個1 、6個1で最終的には数ペアしか形にならなかったため記事の掲載には至りませんでしたが、14年の時を経過して修理の依頼を頂いたため懐かしくもありご紹介に至った次第です。

次回は故障の具体的な状況について、近年思う所も含めて、ご紹介したいと思います。

 


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