「ポップ・フランセーズ名曲101徹底ガイド」
~フランスは愛と自由を歌い続ける~
向風三郎 著
(株)音楽出版社刊・2007年 1890円(税込み)
※まだ中村ブンさんのCDが届きませんので今回は別の記事です。
本当に「ロック」しているのは
実は「ポップ」の方なんだと思う・・・
私は、日本の、所謂”ロック・ジャーナリズム”と言われるメディアをあまり評価しない。それは、まるで70年代からの某ロック雑誌の某カリスマさん辺りの価値観を頂点とする一種の”ヒエラルキー”みたいなものができあがっているような感じがするから・・・。自分達が認めたもの以外の価値を許容しないような?排他的な感じさえ受けます。それが僕はちょっと好きじゃないんだなぁ・・・(^^;。それに、音楽そのものというより、独自の理詰め感がある”精神論”みたいなものも・・・ちょっとネ。まるで心(感情)の動きの前に頭(思考)ありき、みたいな感じかな~?私にはそれがちょっと・・・なんです(^^;。
じゃあ”自分(私)は全く別の価値観を持っているので関係ないや・・・”と無視すればスッキリするかと思いきや、そう簡単にはいかない。今のメディア関係は殆どこの洗脳下?にあるし、そんなメディアの受け売りでその独特の価値観の再生産が行われているので、このループはずっと続いているのだから。
その結果、いつでも本屋さんの棚にあるのは同じような”ロック”系アーティストばかり。そんな中では、POP系なんて色物扱いに近いものがありますよね・・・。挙げ句に”ロックの名盤”でさえ、いっつも同じ顔ぶればかりだし、だからリイシューCDもそんなモンばかり。なんで”ロック”、それも特定のものばかりこうもありがたく拝聴されるんでしょうね~?なんでポップ系は格下の扱いなんでしょうね~??挙げ句に、テクや音楽性の無さを「俺らはロックだから」という免罪符を「ロック」系のアーティストは持っているしなぁ・・・。「ロック」ってホントに良いよなぁ~。
でも一部の人の価値観によって支配されている「ロック」ミュージックって
”なんだか・・・”だよなぁ~って
と正直、思う(^^;
ところでこの本ですが・・・
(ここからが本題です(笑))
前書きは「それは美しい5月のパリからはじまる」(※)、
その出だしは「大衆の記憶はおのずとポップである」と来ます。
この最初の2行だけで、すでに粋なセンスが漂ってきます・・・。
(※)「美しき5月のパリ」って曲をご存じですよね。
この本は一言で言うと”1968年から今日までフランスで愛されているヒット曲を各年ごとに紹介するガイド本”です。各年の出来事をヒット曲を絡めて解説しています。フランス大衆史でもあります。60年代のジェーン・バーキン&セルジュ・ゲンスブールから70年代にフランス・デビューした沢田研二のフランスでの存在感のお話とか、あのミシェル・ポルナレフのフランスでの位置づけとか多彩な内容です。
※表紙のイラストの軽さと中身の充実度・濃さにはミスマッチがある正直私は思いました<装丁の方、ごめんなさい(^^;。
そうそう、私はあのポルナレフの名曲「愛のコレクション」の歌詞、”ブルトーザーがおばあちゃんを殺した”という内容が全く理解できなかったのですが、この本でその背景を知りましたっ。とても面白く読みました。そんな裏話も満載の本です(^^)
曲の解説も、日本の歌謡曲やらロックやらいろんなところからの引用(ちょっとオヤジ・ギャク近いものもあり・・・??(笑)もあったりして、とてもウィットやユーモア、あとフランスらしくエスプリに満ちあふれた音楽本です。いや実は単なる音楽の本に留まらず、音楽を通じたフランスの現代史のような趣さえあります。つまり、楽曲の音楽的な構成(コード進行とかアレンジとか)より、その曲にまつわるフランス社会情勢とかアーティストやスタッフの裏話に焦点を当てています。洒脱な文章、有り余る音楽・業界知識、そして社会問題への関心の高さ。とても素敵な本です。そして、いろんなジャンルの音楽やもちろんフランスという国が大好きな人ほど楽しめる内容だと言えます。全音楽fan必読の著と言えます。
何よりこの著者は本当に人間が好きなんだなぁ~
といいう事がこの本の端々に迸る本でもあります(^^)
この本はフランスのポップミュージック(注:もちろん”ロック”ミュージック系も含む)の本ではありますが、実はフランスの音楽を介した様々な音楽人間の人生のクロニクル本とも言えるでしょう。そして単に”ポップ”として見過ごされてきたアーティスト達の生き様を見るとき、 その辺のロック・アーティストが足下にも及ばないような壮絶な「ロック」人生さえ垣間見えるのです。
誰か勝手に「ロック」とカテゴライズした「ロック」しか聴いてこなかった「ロック」fanのあなたっ!本当に「ロック」な人生は実はさり気なく「ポップ」の衣を纏(まと)っているという事実をご存じでしたか・・・?
※ちなみにあのバルバラの、文字にするのもおぞましい実父との話なんて、もう下手なロックミュージシャンのスキャンダルも遠くに霞むほどでした・・・
ポップフランセーズ 名曲101 徹底ガイド フランスは愛と自由を歌い続ける (CDジャーナルムック SUPER Disc SELECTION) 向風 三郎 音楽出版社 このアイテムの詳細を見る |