『劇盗忠二小伝』は次のように表現している。
行刑ノ前(ぜん)タ(せき)二曰ク、大戸加部氏ノ酒某嗜ム所願クバー椀ヲ
乞ハント、微酔シテ即チ寝ムヽ鼾声(かんせい)雷(いかずち)ノ如シ
なを、原文は当て字例えば、加部を、壁などと記載してあるので
私が訂正している。
処刑前日の夕、忠治はかつて嗜んだことのある、コクといい味わいといい
絶品の、加部氏醸造の銘酒を一椀所望した。そしてほろ酔い加減で眠りに
ついた。いびきは雷の様であった。
しかし、忠治は新井屋善治平に泊まっていたが、中気で、
酒を所望する事が出来ただろうか?
其れは、当時上州一番の大尽ので、役人も一目置く加部安が
事前に用意して与えたのを、『劇盗忠二小伝』の著者の羽倉簡堂が、
あえて事をこう記したと考える方が自然で、忠治は自らの手で飲み
干す事すら出来ずに、他人に与えられたと思うそして、前回の状態で
夜を明かしたと考える。
続く