加部安と忠治の関わりに、ついて
前回の記載に、一部は重複致しますが、
大戸村の加部安は、当時上州の三分限者(注)の一人で、当時は、
俗に「一、加部 二、佐羽 三、鈴木」とうたわれた上州三大尽の
筆頭であった。
二位の佐羽は桐生の豪商、三位の鈴木は甘楽郡一宮町(現在富岡市)
分限者(注)である。国定忠治が、大戸を通過して浅間山龍から
信州へ脱ける際に、何度か加部安には会っていたと伝えられいる。
その加部安は分限者ゆえ酒造家でもあったので、処刑される前日、
忠治は、特に其の酒を所望した。
加部安の酒は非常によい酒であるから、ぜひ一杯飲ませてくれと言ったのである。
飲むと、いい気持になってホ口酔い機嫌で寝につき、忽ち雷のような鼾を、
かいたという。明日消える命と知りながら、上記の記載の通りだと
すれば、その大胆さは驚くべきものである。
その夜は、前述(詳細の弐拾)の記録のように、新井屋善治平の宿で
夜を明かしたわけであるが、奪還を警固して厳重な一夜であった。
なを、加部安の酒の銘柄は、牡丹であった。
(注)
分限者=欲に流されず自分の分をわきまえる事(分限)が、
経済的な成功者に成るという戒めから、=大金持ち=大尽です。
続く