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映画「ファイター、北の挑戦者」 イムソンミ

2021-11-16 10:57:34 | 映画(韓国映画)
映画「ファイター、北の挑戦者」を映画館で観てきました。


「ファイター、北からの挑戦者」北朝鮮からの女性脱北者がボクサーになって這い上がろうとする話である。ボクシングと映画の相性はいい。個人的には成り上がりのボクサーの映画が好きである。育ちが良くなく不遇な人生を送っていた主人公がボクシングに活路を見出だし這い上がっていく。そんなストーリーが多い。ただ、ここでは若干展開が違う。

ストーリーも単純には行かず、演じる俳優もいい感じで、なかなかよくできている映画である。すごくよかった。これも自分にあっている映画だ。

女性ボクサー映画といえば、ヒラリースワンク主演のアカデミー賞映画「ミリオンダラーベイビー」安藤さくら「百円の恋」という傑作がある。ドツボからボクシングで腕を磨き這いあがっていく高揚感とその後のエレジー的展開はこの2人の好演と合わせて心に残る。「ファイター」はこの2作に接近する要素を持つ傑作と言える。

ソウルの片隅、脱北者の女性リ・ジナ(イムソンミ)が、入国後支援センターでの生活したあと、小さなアパートに入居する。公的な援助はあれど、生活のためにジナは知り合いの紹介で食堂で働き出す。父は中国にまだ残っている出国できない。呼び寄せるためにはカネがいる。でも、水商売はいやだ。ボクシングジムの清掃の仕事を掛け持ちですることになった。

ボクシングジムでは館長とトレーナーのテスが2人で切り盛りしていて、女性も数名ジムで練習していた。スパーリングを興味深げに見ていたジナにテスが声をかけるが、自分はやらないと言う。それでも、早朝にサンドバックを叩いているジナをジムに泊まっていた館長が見つけると同時に素質を見出す。ジナは北朝鮮では軍に入って格闘の訓練を受けていたのだ。いくつもの事件が起きカネを稼がねばならない状況となってきて次第にトレーニングに身が入るようになるのであるが。。。


⒈脱北者の主人公と心の闇
素朴な風貌だ。韓国風派手な化粧はなく、美人ではない。会社の同僚にでもいそうな感じである。働き者で、食堂やボクシングジムで黙々と仕事をする。ただ、周囲にも、積極的に接してくる韓国男性にも心を閉ざしている。

ここでは具体的に触れていないが、やっとの思いで父と脱北したのであろう。中国に行ってから、韓国に入国している。最初に携帯電話で父親と話しているシーンを見て、え!北朝鮮と電話できるの?と思ったが、父親は中国にいるようだ。でも、中国への密入国がわかって父親は収監されてしまう。しかも出るにはお金がいる。


北朝鮮では軍に所属したこともあるらしい。格闘能力の素質がある。いくつかの暴力沙汰のトラブルを起こしてしまう。

⒉予想を覆すストーリー
寒々としたアパートの一室には何もない。トレーラーハウスで暮らす家庭で育ったヒラリースワンクと怠惰な人生を送っていた安藤さくらと同様に下層社会からのスタートであることには変わりない。2人がボクシングに生きがいを見出し、グイッと這いあがっていくのと同様にジナにも転機が訪れる。


そこからは若干違う。リングでのファイト場面での高揚感は両作に比べると少ない。それよりも、周囲との葛藤と対立に焦点をあてる。心理戦だ。脱北者というのは、韓国では異端なのだ。言い寄ってきたアパートの斡旋業者の男やジムで練習する意地の悪そうな女たちはいずれも脱北者を自分より下と見ている。葛藤が起きる。それに加えて、韓国にはジナが12 歳の時にに1人で脱北した母親がいるのだ。しかも、裕福な家庭で娘もいて幸せそうだ。昔の幸せだった家族写真を眺める姿がせつない。

こういう適度に多すぎない登場人物を絡めてストーリーを進める。展開は予想外の方向に進む。この辺りのストーリーテラーぶりはお見事だ。つらい中で生きていくジナへの共感も高まる。満足度は高い。



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