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都市部も郊外も売れない… マンション氷河期を形成する約1700万人の「就職氷河期世代」

2019-10-10 16:19:42 | 意見発表

 

都市部も郊外も売れない… マンション氷河期を形成する約1700万人の「就職氷河期世代」 

2019.10.7
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 かれこれ10年以上、首都圏と近畿圏で販売されている郊外型の大規模マンション(200戸以上)を眺めて分析している。どちらも一言で言うと売れていない。この3カ月間で、20戸規模が売れた物件はほとんどないのではなかろうか。3戸や5戸という物件も多いはずだ。どれも、それなりの値引きを行った上での契約だろう。

 これほど売れないのはなぜだろうと、いろいろ考えてみた。

 確かに、ここ6年ほどで価格は上昇している。郊外型でもざっくり見て10%から20%ほど価格が上がった。しかし、その分は住宅ローンの金利が低下したことや、拡大した税金の控除などを利用すれば、ほぼ相殺できている。また、売れ残って完成在庫になっている物件なら、1割程度の値引きはラクに引き出せているはずだ。

 にもかかわらず、どの物件でも一様に販売が不振のようで、「これは売れるのではないか」と推測した優良な物件までうまくいっていない。

 出した1つの仮定は、大規模マンションのターゲット層が就職氷河期世代のボリュームゾーンにしっかりとはまってしまったからではないか、というものだ。

 就職氷河期世代とは、バブル崩壊後の1993~2004年頃に高校や大学を卒業した年齢層の人々を指す。その数は約1700万人とも言われる。

 現在、彼らは30代半ばから40代半ばに達し、ちょうど大規模マンションの購買ターゲット層と重なる。

 この世代の人々は、正規雇用率が低いことで知られる。所得水準も他の世代に比べて低い。政府は今になってやっと氷河期世代対策を打ち出してきたが、遅すぎたと言える。正規雇用でなければ、住宅ローンを組むのは難しい。そもそも婚姻率も低いので、住宅へのニーズも生まれない。

 この就職氷河期世代の中堅所得者に買ってもらおうと、いまの大規模マンションが開発・分譲されているというわけだ。

 この世代の問題は、今後深刻化する。今はまだ、せいぜい「マンションが売れない」程度の現象を生み出しているだけで、一業界の販売不振に過ぎない。だが、年金未加入率が高そうなこの世代が65歳以上の高齢者になった時に、日本はどうなるのであろう。

 巨大なボリュームをもった高齢貧困層が日本社会に生み出されることになる。彼らは年金だけでは生活できないから、生活保護の受給者になる可能性もある。約四半世紀後、この国はまたぞろ解決の難しい問題を抱え込むことになりそうだ。

 ■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案・評論の現場に30年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。


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