若い人達へ

若い人に夢を託してお願いをする

日立建機、親が課す「5カ条」から見えた課題

2020-02-03 19:33:30 | 意見発表

日立建機、親が課す「5カ条」から見えた課題
証券部 遠藤賢介

2020/1/31 2:00
日本経済新聞 電子版
 
 

 

 

実家暮らしを続けたいが、親からは「稼ぎを入れないと追い出す」と言われる。日立建機が29日発表した減益決算をみると、こんな状況が浮かぶ。グループ再編を加速する親会社の日立製作所からは「実家暮らし」のための5カ条を求められるが、足元では業績底入れが見えてこない。優等生だった日立建機は親の要求を満たせるか。

 

2019年4~12月期連結決算(国際会計基準)は売上高が前年同期比8%減の6871億円、純利益が32%減の351億円だった。直近の10~12月期でも4四半期連続の最終減益だ。採算性を示す売上高営業利益率は18年10~12月期の12.6%を天井に6.7%まで悪化。建機は景気変動の影響を受けやすく、中国やインドで販売が低迷した。さらに新型コロナウイルスによる肺炎の影響が加わる。例年、春節明けは中国の建機販売のピークだけに懸念は尽きない。

今決算と5カ条を比較すると課題が浮き彫りになる。

日立製作所は、主軸のIoT事業との相乗効果が見込めない事業や世界で戦えない低収益事業を整理する方針を掲げる。具体的には22年3月期までの中期経営計画で、(1)海外売上高比率60%以上、(2)3カ年で年平均3%以上の増収、(3)10%以上の売上高営業利益率、(4)10%超の投下資本利益率(ROIC)、(5)グループ全体の2兆5千億円以上の営業キャッシュフロー(CF、3年間合計)、の5つの達成を目指す。連結全体での目標だけに、おのずとグループ各社もこれらの指標を目指すことが不可欠になる。

日立建機はどうか。まず成長に関わる指標。海外比率は4~12月期で79%に達し条件を満たす。日本の大幅な伸びは見込めず今後も比率が下がる可能性は低い。年平均3%の増収を満たすには22年3月期に1兆円以上の売上高(今期予想で9500億円)が必要だ。逆風が吹くが、市場予想の平均であるQUICKコンセンサスでは1兆89億円の見通し。ギリギリだが達成が視野に入る。

 

採算性の面では、営業利益率は20年3月期で9%の見通しで下回る。新興国の成長鈍化で建機の世界需要は数年間は横ばいが続くとの見方が多い。ROICは有利子負債圧縮などが寄与し19年3月期末で11%と高いものの、足元は利益減が鮮明で先行きには不透感がある。

最後の営業CF。個社で求めらる金額が異なり判断は難しいが、日立建機の4~12月期は204億円。18年3月期まで5年連続で800億円を超えていたことを踏まえると、今の水準は高いとは言えない。

5つのうち海外比率と増収率を達成出来るとすれば、最大の課題は効率よく利益を出せるかどうか、だ。純利益が過去最高だった前期までと経済環境は異なる。足元では主力市場のアジアの需要減、ドルや新興国通貨に対する円高懸念など逆風が吹く。

新興国で販売を伸ばす上で「日立ブランドを持つ意味は大きい」。幹部はこう話すように、日立建機は5カ条達成に向け対策を強めている。

代表例が保守サービスの拡大だ。建機の遠隔監視サービス「コンサイト」は稼働をチェックし故障の予兆を察知できる。主要部品の約6割の故障が事前に分かるといい補修などのサービスにつなげやすい。景気に左右されにくい利点もある。サービス(レンタル事業など含む)の売上高に占める比率は19年3月期で39%。これを早期に50%に引き上げる。採算性が高いだけに「比重が高まれば全体の利益率向上に寄与する」(モルガン・スタンレーMUFG証券の井原芳直氏)

 

また中国で従来より価格を1割下げた廉価版を投入する。既に油圧ショベルのシェアが首位のインドで実施し成果を出している。間接費縮小など内部努力も一段と進める。

日立建機は他の日立子会社と比べれば利益や利益率は優れている。建機業界ではIoT活用が不可欠で、平野耕太郎社長は「日立製作所のIoT戦略で我々の役割は大きい」と胸を張る。それでも同業大手のコマツの今期営業利益率は11%、米キャタピラーは15%(19年12月期の市場予想)には届かない。市場が待っているのはグループ内だけでなく、同業2社を上回る実績だ。

 

 

 

 


日立建機、親が課す「5カ条」から見えた課題

2020-02-03 19:33:30 | 意見発表

日立建機、親が課す「5カ条」から見えた課題
証券部 遠藤賢介

2020/1/31 2:00
日本経済新聞 電子版
 
 

 

 

実家暮らしを続けたいが、親からは「稼ぎを入れないと追い出す」と言われる。日立建機が29日発表した減益決算をみると、こんな状況が浮かぶ。グループ再編を加速する親会社の日立製作所からは「実家暮らし」のための5カ条を求められるが、足元では業績底入れが見えてこない。優等生だった日立建機は親の要求を満たせるか。

 

2019年4~12月期連結決算(国際会計基準)は売上高が前年同期比8%減の6871億円、純利益が32%減の351億円だった。直近の10~12月期でも4四半期連続の最終減益だ。採算性を示す売上高営業利益率は18年10~12月期の12.6%を天井に6.7%まで悪化。建機は景気変動の影響を受けやすく、中国やインドで販売が低迷した。さらに新型コロナウイルスによる肺炎の影響が加わる。例年、春節明けは中国の建機販売のピークだけに懸念は尽きない。

今決算と5カ条を比較すると課題が浮き彫りになる。

日立製作所は、主軸のIoT事業との相乗効果が見込めない事業や世界で戦えない低収益事業を整理する方針を掲げる。具体的には22年3月期までの中期経営計画で、(1)海外売上高比率60%以上、(2)3カ年で年平均3%以上の増収、(3)10%以上の売上高営業利益率、(4)10%超の投下資本利益率(ROIC)、(5)グループ全体の2兆5千億円以上の営業キャッシュフロー(CF、3年間合計)、の5つの達成を目指す。連結全体での目標だけに、おのずとグループ各社もこれらの指標を目指すことが不可欠になる。

日立建機はどうか。まず成長に関わる指標。海外比率は4~12月期で79%に達し条件を満たす。日本の大幅な伸びは見込めず今後も比率が下がる可能性は低い。年平均3%の増収を満たすには22年3月期に1兆円以上の売上高(今期予想で9500億円)が必要だ。逆風が吹くが、市場予想の平均であるQUICKコンセンサスでは1兆89億円の見通し。ギリギリだが達成が視野に入る。

 

採算性の面では、営業利益率は20年3月期で9%の見通しで下回る。新興国の成長鈍化で建機の世界需要は数年間は横ばいが続くとの見方が多い。ROICは有利子負債圧縮などが寄与し19年3月期末で11%と高いものの、足元は利益減が鮮明で先行きには不透感がある。

最後の営業CF。個社で求めらる金額が異なり判断は難しいが、日立建機の4~12月期は204億円。18年3月期まで5年連続で800億円を超えていたことを踏まえると、今の水準は高いとは言えない。

5つのうち海外比率と増収率を達成出来るとすれば、最大の課題は効率よく利益を出せるかどうか、だ。純利益が過去最高だった前期までと経済環境は異なる。足元では主力市場のアジアの需要減、ドルや新興国通貨に対する円高懸念など逆風が吹く。

新興国で販売を伸ばす上で「日立ブランドを持つ意味は大きい」。幹部はこう話すように、日立建機は5カ条達成に向け対策を強めている。

代表例が保守サービスの拡大だ。建機の遠隔監視サービス「コンサイト」は稼働をチェックし故障の予兆を察知できる。主要部品の約6割の故障が事前に分かるといい補修などのサービスにつなげやすい。景気に左右されにくい利点もある。サービス(レンタル事業など含む)の売上高に占める比率は19年3月期で39%。これを早期に50%に引き上げる。採算性が高いだけに「比重が高まれば全体の利益率向上に寄与する」(モルガン・スタンレーMUFG証券の井原芳直氏)

 

また中国で従来より価格を1割下げた廉価版を投入する。既に油圧ショベルのシェアが首位のインドで実施し成果を出している。間接費縮小など内部努力も一段と進める。

日立建機は他の日立子会社と比べれば利益や利益率は優れている。建機業界ではIoT活用が不可欠で、平野耕太郎社長は「日立製作所のIoT戦略で我々の役割は大きい」と胸を張る。それでも同業大手のコマツの今期営業利益率は11%、米キャタピラーは15%(19年12月期の市場予想)には届かない。市場が待っているのはグループ内だけでなく、同業2社を上回る実績だ。

 

 

 

 


就活生、「専門スキル」で武装せよ 惑う就活「新ルール」

2020-02-03 18:41:10 | 意見発表

就活生、「専門スキル」で武装せよ
惑う就活「新ルール」(1)

就活
 
2020/2/2 23:00
日本経済新聞 電子版
<form id="JSID_formKIJIToolTop" class="cmn-form_area JSID_optForm_utoken" action="https://www.nikkei.com/async/usync.do/?sv=NX" method="post">
 
</form>
学生(右)はプログラミングなど専門スキルを磨き望む(1月末、「インティ」の面接会)

学生(右)はプログラミングなど専門スキルを磨き望む(1月末、「インティ」の面接会)

「もう1年以上も就活をしているのに結果が出ない」。早稲田大商学部3年の女子学生の表情には疲れが浮かぶ。人よりも早く就活を始めたつもりだったが、10社程度を受けまだ内定がない。

友人はすでに外資系企業の内定を得て就活を終えた。手帳の2月以降のスケジュールは真っ白。「予定がないので不安しかない」

就職情報大手ディスコ(東京・文京)によると、1月1日時点ですでに内定を得た3年生は約7%。2年前の倍の水準だ。一方、まだ内定がない9割以上の学生のうち、早大の女子学生のように長期の就活を強いられる人も増えている。

足元の大卒求人倍率は2倍弱。就活生1人に2社近い求人がある売り手市場は続いているのに、なぜ二極化が進むのか。

 

18年秋に廃止が決まった経団連ルールを引き継いだ「政府ルール」は、「説明会は3月解禁、面接は6月解禁」と定める。学生を学業に専念させる狙いで、政府は中小や外資系などあらゆる企業に順守を求める。しかし罰則規定はない。

ディスコによると21年卒の採用で2月以前に選考を始めると答えた企業は19%と前年から倍増した。ルールの形骸化が一段と進み、採用する側もされる側も前のめりになる。

JTは昨年に比べ3カ月早い3月に選考を始めることを決めた。これまで6月だった選考を今年は3月と6月の2回に分け、学生の出方を探る。KDDIも昨年まで3月に始めていたエントリーシートの受け付けを3カ月早めた。これまで経団連ルールに従っていた大手企業も優秀な学生の確保へなりふりを構っていられない。

就活をめぐる地殻変動はほかにもある。デジタル時代に即した人材が不可欠な日本企業は、年功序列など旧来の賃金・雇用システムに変わる最適解を求め試行錯誤している。

「競争相手はスタートアップだ」。ソニー人事センターの浅井孝和は語る。これまで新卒採用では日立製作所などの電機メーカーを意識していればよかった。だが学生が就職先として天びんにかける相手は、人工知能(AI)のスタートアップ企業など業種の垣根を越える

ソニーはデジタル分野で高い能力を持つ新入社員の年間給与を最大2割積み増す。NECも能力に応じ年1千万円の初任給を提示するなど、限られた優秀な人材を求め異業種間の競争が活発だ。

学生側も企業の変化を敏感に感じ取る。かつて就活スキルと言えば「面接受け」の改善やエントリーシートの書き方が中心だったが、最近はITなどの専門スキルで武装する動きが広がる。

東京工業大大学院2年の神里知弥は19年秋、人材サービスのITプロパートナーズ(東京・渋谷)が運営する「インティ」に登録した。有望な学生を選抜しエンジニアやWebデザイナーに育て上げてから企業に紹介する。学生は登録すれば無料でプログラミング講座を受講できる。

神里の専攻は応用化学だが「持っているスキルは多いほうがいい」。有力企業の選考でITスキルをアピールしほかの学生に差をつけようと、登録者は1万人を超えた。実践的なITスキルは数カ月の研修で身につくものではないが、基礎知識があれば社会に出て応用も利く。

「企業は従業員を一生雇い続ける保証書を持っているわけではない」。経団連会長の中西宏明は19年4月、必要な人材を随時採用する「通年採用」を推進していくことで大学側と合意した。現在の「一括採用」から、海外のように在学中に専門分野の勉強に集中し、卒業後にインターンなどを経て人材を随時選考するスタイルへの移行を目指す。

日本企業の雇用は年功序列や終身雇用など「メンバーシップ型」と呼ばれる。新人を時間をかけて育成し競争力を高める仕組みはかつて機能した。求められる人材のスキルが刻一刻と変化するデジタル競争の時代。仕事内容に応じたポストを用意し、適切な人材をあてがう「ジョブ型雇用」への過渡期に立つ。

(敬称略)

就活シーズンが今年も本格化する。環境変化に適応しようと手探りを続ける企業や学生の動きを追う。