和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

空穂歌集。

2010-07-21 | 詩歌
岩波文庫の「窪田空穂歌集」(大岡信編)をパラパラとめくっております。

昭和30年に「選歌」と題して

 よき歌を見出づることのたのしさに引かれつつ選む人が詠み歌

 よき歌を得ればたのしく人が歌わが歌といふけぢめのあらぬ

 胸にしむ歌にし逢へばそぞろにも声立てて読む人が詠み歌

 よき歌にそぞろぐ心究(きは)めむは吾は何ぞと問はむに等し


昭和31年には

 第一に親しく良きは自作なり作者の前に作を語るな

 鑑賞はおのれを語るものにあれば陶酔も無視も好むがままに

昭和37年の「孫の成人式に」では

 成人のいたく苦(にが)きを知れる祖父いかに祝はんこの男孫

 責任を果たしぬべくも真向かひて体あたりせばたのしみ湧かん

 責任は己がこころの生むものぞ果たしえん境(さかひ)身をもちて知れ

 危険なき生存あらず二十代三十代は危険を冒せ

 記憶せよいま成人の男孫四十とならば惑ひをもつな


このあとの昭和37年。空穂86歳の歌「庭にむかひて」のはじめに

 もの言へぬ幼児(をさなご)が目を見ひらきて見つむるごとき草の花かも


マイケル・ディルダ・高橋知子訳「本から引き出された本」(早川書房)に、そういえば、こんな引用がありました。


「芸術の目的は瞬間的なアドレナリンの放出ではなく、驚嘆と静寂の精神状態を生涯かけて構築することである。 ・・・ グレン・グールド」(p154)


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