和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

若書きを全部。

2010-07-16 | 短文紹介
谷沢永一・渡部昇一著「組織を生かす幹部の器量 宋名臣言行録に学ぶ」(到知出版社)を読みました。たいへん面白く、次に宋名臣言行録を読んでみたいと思ったのでした(次はせめて、山本七平のその関連本を読んでみたい)。ところで、まあ、一箇所ぐらい引用しておきます。

蘇洵(そじゅん)に触れた箇所で、こうありました。

【谷沢】しかし現代人に申し上げたいのは、文章を書かないで本ばかり読んでいるというのは、これはあまりメリットはないと思います。
【渡部】そうですね。この人はたくさん書いて、それを焼いたのですからね。
【谷沢】ええ。読み、かつ書くということを平行して続けなければいけないのではないですかね。

ここに【それを焼いた】とありますエピソードが語られております。

【渡部】・・蘇洵という人は、唐宋八大家に数えられる蘇軾(蘇東坡)、蘇轍兄弟の親ですね。彼自身も唐宋八大家の一人です。ところが、蘇洵は三十になろうとする頃まで本も読まずにいたというのです。これではダメだというので大いに発奮して、遊び仲間との交際を断ち、家の戸を閉じて本を読み、文章をつくり、一生懸命勉強するわけです。
そして一年後に科挙を受験しますが失敗してしまった。そこで今までの学問のやり方ではダメだと考えて、それまでに書いた数百篇の文章をすべて焼き捨ててしまったというのですね。
【谷沢】それはありうることです。若いときは何か書かないといけないと思って無理をしてやりますから、どうしてもそこにはひずみが生じますよね。
【渡部】だから若書きを全部捨ててしまったんですね。それからは文章を書かず、ひたすら読書に励み、五、六年してから一気に文章を書き始め、数千言に及ぶ論文をたちまち書き上げたというわけです。
【谷沢】そしてこの蘇洵は名文家となり、書もできる人になりました。・・・
【渡部】それから有名になって、みんなが彼の文章を暗記したというんですね。その結果、当時の文章のスタイルが一変したというのだからすごい。(p174~175)
コメント
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