浦和河童便り

埼玉・浦和のオヤジ(浦和河童)が「吹奏楽メインで、時々、オーケストラのコンサートに行ってみた」という話

21世紀の吹奏楽 第18回“響宴”

2015-03-12 20:05:19 | 吹奏楽

私には、毎年楽しみにしているコンサートがいくつかあります。

もちろん、好きな吹奏楽団の定期演奏会は、その中に含まれますが、それとは別に特別なコンサートとして、“3つの演奏会”を個人的に、非常に待ち遠しく感じています…。

ひとつは、吹奏楽コンクール全国大会です。

やはり、吹奏楽を愛する者にとって、全国大会は、その年の最大のイベントです。

全国各地の選ばれた精鋭たちが一同に会して競い合う様は、まさに“壮観”のひと言。

 

二つめは、「なにわ《オーケストラル》ウィンズ」です。

毎年、全国の(おもに)オーケストラで活躍されているプロの管楽器奏者の方々が集まって、大阪と東京で吹奏楽のコンサートを行うという催しです。

プロだから、あたり前と言えば当たり前なのだけれど、実に見事な演奏なんですよ、これが。

東京佼成とかシエナとかの吹奏楽専門のプロ吹奏楽団とは違う味わいがあるんです…。

敢えて表現させて頂ければ、サッカーに置き換えると「なにわ」が“ナショナルチーム”とするならば、「佼成、シエナ、市音」なんかは、“クラブチーム”と言ったところでしょうか?(練習量が多いので“クラブチーム”のテクニックは素晴らしいのですが、“ハート”の部分での高揚感は“ナショナルチーム”の方が感じますよね。それと同じように思います。)

本音で毎年、「なにわ」のコンサートが行なわれるゴールデンウィークが待ち遠しいですね。

 

そして、三つめが今回、ご紹介させて頂く、「21世紀の吹奏楽“響宴”」です。

未発表あるいは、未出版の吹奏楽の新曲をアマチュアとは言え、素晴らしいテクニックを持った吹奏楽団の皆さんが演奏するコンサートです。

内容を聞いただけで、私のような吹奏楽大好き人間は興奮してしまいますよ!

私も今年で3回目の“響宴”となりました。

どんな素晴らしい曲を聴かせて頂けるのか楽しみです。

 

2015年(平成27年)3月8日、日曜日。

お馴染みの文京シビックホールへと向かいます…。

一昨年、初めて“響宴”を聴かせて頂いた時のブログの記事(もちろん、この“浦和河童便り”の記事です)を読み返してみると、ポカポカ陽気で電車に冷房が入っていて、風が強かったなんて書いてありますけど、今年は全く違います。

冬の訪れが早く、そして、いつまでも寒さが続いている…、そんな気がしますね。

 

「21世紀の吹奏楽“響宴”」で演奏される楽曲は、応募された未発表ないしは未出版の楽曲の邦人作品の中から、選曲委員によって選考されたものです。

プログラムで確認しますと今年は、“応募のあった103作品と昨年からの越年作品9作品の、合計117作品の中から選ばれ”たそうです。

そうは言うものの、作曲者の名前を拝見すると私でも知っている著名な方が多いようです…。

さあ、無駄話をしているうちに「21世紀の吹奏楽 第18回“響宴”」が始まるようです。

 

[司会]賀内 隆弘

 

司会は、秋田放送アナウンサーで秋田吹奏楽団事務局長の賀内隆弘さん。(毎年、司会をされていますね。“響宴”の会員でもあるようです。)

なお、各団体の演奏レベルは、かなりの高水準で非常に満足できるものでした。

したがって、今回は、楽曲の紹介や私個人の感想が主体になっています。

当然、“未発表・未出版”という知られていない曲ばかりですので、プログラムの“曲目解説”に頼らざるを得ない事をお許し下さい。

 

[演奏]川越奏和奏友会吹奏楽団

[指揮]佐藤 正人

 

◆  Fanfare for wind orchestra “In Triumph”(下田 和輝)

◆  海の歌 The Song of Sea(福田 洋介)

◆  不条理~何故に~ Absurdity, why?(飯島 俊成)

◆  吹奏楽のための交響的断章 Symphonic Movement of Wind Orchestra(福島 弘和)

 

まず、“我が”埼玉の川越奏和から。

最初の曲は「Fanfare for wind orchestra “In Triumph”」。

この曲は、大江戸シンフォニックウィンドオーケストラの第3回定期演奏会作品公募の入選作品です。(2014年5月6日、同団により初演。)

短い曲では、ありましたが、ファンファーレが目立つさわやかな曲でした。

作曲者の下田和輝氏も1992年生まれと言いますから、20代前半の若さ。

今後の活躍に期待します。

続いての曲は、2012年度の吹奏楽コンクール課題曲の「さくらのうた」や同じく、2004年度の「吹奏楽のための“風の舞”」で私も存じ上げております福田洋介先生の作品です。(プログラムの福田氏のプロフィールを見て初めて知ったのですが、作編曲は独学だそうな。すごいですな。)

曲名の「海の歌」と言えば、私のようなオヤジにはR.ミッチェルの作品を思い出してしまいます…。

ゆったりとした美しい曲でした。

“あらぶる”海ではなく、おだやかで大きな世界を表現されていて、心が和みました…。(海上自衛隊東京音楽隊2013年委嘱作品)

続いては、「不条理 Absurdity, why?」。

“響宴”実行委員でもある飯島俊成先生の作品です。

現在、東池袋のサンシャインシティのあたりにあった巣鴨プリズン。

そこには、先の戦争の日本の敗戦直後、多くの“戦犯”が収監されました。

戦争に負けたとは言え、まともな裁判も受けられないまま、多くの日本人が処刑されたのです。(中には、「冤罪」であった方も多数いたようです。)

このような「不条理」に想いを込めて作曲されたのが、この曲。(現在、世界で横行しているテロで理不尽にも命を落とされる方がいらっしゃる事実を鑑みても、決して忘れてはならないのが、“命の尊さ”ですね。)

曲調も激しさだけではなく、透明感や深さを感じるものでした…。

恐ろしく、川越奏和に合った曲だと思いました。

見事な“表現力”でした。

そして、個人的に私がこの日の楽曲でイチバン好きな曲でした…。(2012年豊島吹奏楽団委嘱作品。同年、大釜宏之氏の指揮にて初演。)

川越奏和、最後の曲は、2013年に常総学院高等学校吹奏楽部の委嘱によって作曲された「吹奏楽のための交響的断章」。

ご存知、福島弘和先生の作品です。

福島先生の曲らしい華やかで、ドラマチックな展開をする曲でした。

このような難しい曲を川越奏和のような実力のあるバンドが演奏すると際立ちますね。

期待に100%応えた演奏でした。

 

ここで、この“響宴”の代表(“21世紀の吹奏楽”実行委員会 代表)である小澤俊朗先生がご挨拶され、この催しの意義を語って下さいました。

 

[演奏]浜松交響吹奏楽団

[指揮]浅田 享

 

◆  アストロラーブ製作所 Astrolabe Factory(伊左治 直)

◆  “Oneiros”〈スクールバンド・プロジェクト委嘱作品初演〉(保科 洋)

◆  デカンショ・ラプソディ Dekansho Rhapsody(酒井 格)

◆  コンサートマーチ「海原を越えて」 Concert March “Beyond The Ocean”(渡邉 大海)

 

2番目の団体は、浜松交響吹奏楽団。

これも、素晴らしい団体です。

浜松と言えばヤマハ吹奏楽団を思い出さざるを得ませんが、それにも引けをとらぬ活躍は素晴らしいものがあります。

指揮者で音楽監督の浅田氏は、もともとヤマハ吹奏楽団にいた方のようですね。

現在は、ヤマハの管打楽器の製造会社の社長をされているとか。

やっぱり、浜松は、「ヤマハ」の街なのですね…。

最初の曲は、「アストロラーブ製作所」。

「アストロラーブ」とは、“中世イスラム圏で使われた天体の位置を調べる道具”なのだそうです。

この曲は、アラビア旅行の折に未だにこの「アストロラーブ」を製造する工場に迷い込んでしまったことを題材にしています。

太鼓のフチ(打楽器に詳しくないので何と言うのかわかりません)をまるでメトロノームのような、ある一定の間隔で叩いているのが、“工場”の感じを出していましたし、神秘的な雰囲気も醸し出しておりました。

そして、そのエキゾチックな流れが曲全体を支配している面白い曲でした。

是非、もう一度、聴いてみたい曲です。

次は、保科洋先生の曲。

この曲は、昨年より始められた〈スクールバンド・プロジェクト委嘱作品〉です。

小澤先生も「ご挨拶」の中でおしゃっておられましたが、“響宴”で演奏される曲は、大編成で大曲になりがちです。

そこで、〈スクールバンド・プロジェクト〉として、“中・高スクールバンド、特に小編成でも取り組むことのできる教育的な作品を開発、発信する目的”で作曲家の先生方に委嘱作品を書いて頂くと言う試みなのだそうです。(今年は、保科洋先生と長生淳先生が委嘱作品を書かれました。)

少子化で若い世代の人口が少なくなってきている昨今、吹奏楽部員の人数が集まらない学校もあると思われますので、すごく良い企画だと思います。

さて、話を曲にもどしましょう。

曲名にある「“Oneiros”(オネイロス)」とは、ギリシャ神話の夢の神。

保科先生は、“この曲はほろ苦い青春の想い出を夢に託して回想する老人の心境を綴ったもの”とおっしゃっておられます。

きっと、ご自身が若者たちへ未来を託す気持ちを表現されているのだと思います。

少人数で演奏されたにもかかわらず、厚みのある曲に聴こえます。(もちろん、浜松交響吹奏楽団の“技量”があっての賜物です。)

ゆったりとした曲調が“時間”と“歴史”を感じさせる名曲でした…。

続いては、人気作曲家、酒井格先生の「デカンショ・ラプソディ」。

こちらは、兵庫県篠山市で“広く愛されている”「デカンショ節」をモチーフにした楽曲です。

デカンショ節のメロディが“テンポや演奏する楽器を変え、都合11回繰り返す、変奏曲風スタイル”なのだそうです。

民謡的な泥臭さを感じさせない現代的なアレンジは、若い学生さんたちにも違和感なく受け入れられる楽曲だと思います。

なお、この曲は、地元、兵庫県篠山市の市民バンド「篠山吹奏楽団」の委嘱で作曲され、2013年12月7日に第30回定期演奏会(指揮:尾花尚史)で初演されたそうです。

また、“響宴”の演奏前に篠山市長からの“祝電”が紹介されたのが印象的でした…。

浜松交響吹奏楽団の演奏の最後の曲は、海上自衛隊佐世保音楽隊の副隊長、海上自衛官の渡邉大海氏の作品でコンサートマーチ「海原を越えて」。

渡邉1等海尉(階級だそうです)も“曲の解説”で言われているように海の上での心情を描いた明るい曲です。

おおらかな自然と立ち向かう自衛官の姿を想像してしまう、ハツラツとした曲でした。

 

一回目の休憩に入りました。

そして、川越奏和奏友会吹奏楽団、浜松交響吹奏楽団と実力派の重厚なサウンドを聴かせて頂き、私は大満足でありました。

それと言い忘れましたが、委嘱作品を書かれた保科洋先生を除いて、他の全員の作曲者が会場にお見えになっており、自分の曲が終わるたびに立ち上がり、観客の声援を受けておられました…。

休憩後は酒井根中学。

中学生かぁ、と思って侮っていましたら、とんでもない事に。

それでは、続けてお読み下さい…。

 

[演奏]千葉県柏市立酒井根中学校吹奏楽部

[指揮]犬塚 禎浩

 

◆  セレモニアル・ファンファーレ Ceremonial Fanfare(内藤 友樹)

◆  Lament(松下 倫士)

◆  ソナチネ Sonatine for Wind Orchestra(河邊 一彦)

◆  季のまど Perspective on Time〈スクールバンド・プロジェクト委嘱作品初演〉(長生 淳)

 

三つ目のの演奏団体は、柏市立酒井根中学校吹奏楽部の皆さん。

近年では、中学校のトップバンドであると言っても過言ではないでしょう。

今まで全国大会に10回出場し、そのうち8回が金賞。(しかも、2006年からは、7回連続。但し、「3出」休み除く。)

輝かしい成績です。

でもね、所詮、中学生ですよね。

ここ数年、中学校のバンドを何回か聴いた事があります。(うまいのも、下手なのも…。失礼!悪意のある発言ではありませんので悪しからず…。)

しかし、高校大学、職場一般、音大、プロのバンドに比べて聴く機会が圧倒的に少なかった。(私自身が“避けていた”と言う意味で。)

確かにコンクールの支部大会以上に出場する団体になると、テクニックに問題はなかった。

音程、リズム、アンサンブル…、どれをとっても、そのへんの高校バンドより遥かにうまい。

ですが、サウンドが…薄いんです。

そのため、ハーモニーやサウンドが“融合”しないから、平坦な演奏になってしまう。

と同時に曲にも“感情”を乗せにくい…。

中学校の吹奏楽部に私は以上のような印象を持っておりました、酒井根中の演奏が始まるまでは…。

最初の曲は、内藤友樹先生の「セレモニアル・ファンファーレ」。

この曲の“冒頭”部は、2012年に岐阜県で開催された『ぎふ清流国体』及び『全国障害者スポーツ大会』の“開式通告”として演奏され、その後、航空自衛隊中部航空音楽隊の依頼により、加筆された楽曲です。(2013年、航空自衛隊中部航空音楽隊により初演。)

岐阜県の「山」「川」と言った自然をイメージした曲は、“素朴さ”や“透明感”を内包しながら、ファンファーレを中心とした明るい曲でした。

実際に聴かせて頂いて、“セレモニー”に相応しい曲だと実感した次第。

次の曲は、松下倫士先生の「Lament」。

東京都立尾山台高等学校の委嘱により、吹奏楽コンクール小編成の部の自由曲として作曲されました。

旧約聖書の中の「哀歌」をテーマにした宗教色の強い曲ですが、小編成向きにも関わらず、曲の印象がかなり重厚でスケールの大きい演奏に感じました。

それと、特筆すべきは、曲冒頭のフルート・ソロの音色、テクニックとも素晴らしかった!

3曲目、「ソナチネ」。

昨年の3月まで、海上自衛隊東京音楽隊の隊長を務められていた河邊一彦先生の曲です。(自衛隊時代も海上自衛隊初のソプラノ歌手、三宅友佳里[3等海曹]さんとコラボした「祈り~a Prayer」が大ヒットしましたね。)

クラシック音楽にとって重要である“ソナタ形式”を題材にしたものですね。

“楽典”に関しては、素人のオヤジなので、詳しくはわかりませんが、河邊先生らしいメロディラインの美しい曲でした。

今後も“美しい曲”を書き続けて頂きたい。

期待してます。

酒井根中、最後の演奏曲は、〈スクールバンド・プロジェクト委嘱作品〉でもある長生淳先生の「季のまど」。(「季のまど」は、“ときのまど”と読むそうです。)

長生先生の解説によると「季のまど」とは、“人生の中でのいろいろな時期を眺める窓”とのこと。

ひとりの人間の人生の節目を振り返る“瞬間”という意味合いに近いのでしょうか?(英題の“perspective”の方が分かりやすいような…。)

小編成であろうとも長生先生の楽曲らしい“独特のうねり(流れ)”は健在でした。

また、演奏人数の少ないことを感じさせない重厚なサウンドは作り出す技術は、素晴らしかった。(長尾先生にしろ、保科先生にしろ、スゴい方です…。)

センチメンタルな感じもする曲調の部分は、私のようなオヤジには、心にグッとしみ入りましたね…。

それにしても、酒井根中の演奏は凄かった!

オヤジは、感動しました。

客席で目をつぶって聴いていると他の大人のバンドと遜色ないサウンドが私の脳裏に響いてきます。

でも、目をあけて演奏者の姿を見てみると、まだ、あどけない少女たち。(男子もいましたが異常に“女子率”が高かったので…。)

これが現実なのか、夢なのか、わからなくなってしまいました…。

どうしたら、中学生にあのようなサウンドやテクニックを指導できるのでしょうか?

犬塚先生、教えて下さい!

 

ここで、舞台転換の合間に選曲委員長である後藤洋先生の登場。(私のようなオヤジには、後藤先生が高校生の時に作曲され、吹奏楽コンクール課題曲となった「即興曲〔1967年度全日本吹奏楽コンクール課題曲A」が思い出されてなりません。〕

〈スクールバンド・プロジェクト〉や“著作権”の事を中心にお話されました。

 

次は、グラールウインドオーケストラ。

それにしても、昨年の全国大会は、惜しかった。

一昨年に真島俊夫先生の「レント・ラメントーソ」という名曲で熱演したのにも関わらず、東関東大会敗退の憂き目にあいました。

復活をかけて挑んだ昨年、天野正道先生の「トラジニ・ソナタ・ナ・ジュレバカ・イ・プォーヴェ」で見事、全国大会出場。

しかし、全国大会での結果は、惜しくも銀賞。

とにかく、頑張って頂きたい。

 

[演奏]グラールウインドオーケストラ

[指揮]天野 正道

 

◆  邯鄲の夢(八木澤 教司)

◆  神々の系図~神と人間が共存する土地へ~(清水 大輔)

◆  AMPLITUDE(本多 俊之)

 

指揮は、天野正道先生。

本音で言うと天野先生の曲も聴きたかったかなぁ。

最初の曲は、「邯鄲の夢(かんたんのゆめ)」。

人間の栄枯盛衰が如何に、儚いかを説いた中国の故事ですね。

“標題音楽”らしい起伏にとんだ曲でした。

八木澤先生らしいドラマチックなところもあって、まるで、映画音楽のようでもありました。

この曲は、浜松交響吹奏楽団の第36回定期演奏会なために委嘱された曲で、2009年に同団によって初演されました。

今回の“響宴”には、浜松交響吹奏楽団も出演しておりますが、“本家”ではなく、他の団体で演奏を聴けるのも、この“響宴”の醍醐味のひとつですね。(基本的に“響宴”では“初演団体”ではないバンドが演奏するような気がします。)

続いては、この方も人気の作曲家である清水大輔先生の作品。

「神々の系図」とは、神々しい曲名です。

“天孫降臨”の地と伝承される宮崎県。

その宮崎県で活動されている宮崎市民吹奏楽団の委嘱で作曲されました。

プログラムの楽曲解説を拝見しますと清水先生ご自身も団員の方の案内で『実際に高千穂や、夜神楽、神話にまつわる場所』を回られたようですね。

美しく厳かで、どこか懐かしくも感じる前半部分。

そして、ストラヴィンスキーの「春の祭典」とリンクしたという“夜神楽”の部分は、神秘的でもあり土俗的でもあり、曲名に合った雰囲気を十二分に感じさせて頂きました。

曲の終り、突然、ピッコロ奏者が立ちあがり、ソロを吹きながら、スタスタと歩き出す…。

そして、ひとり、舞台上手(かみて)へと去っていく…。

曲の雰囲気にあった効果的な演出だと思いました。

それと、曲の最初の部分と終わりの部分で金管楽器の皆さんが“楽器を吹く”のではなく、“楽器に息を吹き込む”事によって、まるでウインドマシーンのような“効果音”を出していたのが面白かった。(神秘的な「風の音」に聴こえた…。)

グラール、最後の曲は、本多俊之氏の「AMPLITUDE」。

ご自身もサックスのソリストとして参加されました。

この曲は、昨年の5月、川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団の第48回定期演奏会(第22回“吹奏楽の響き”)にて福本信太郎先生の指揮で初演されました。

リベルテファンの私としては、残念なことに、この時の定演は行ってないんですよね。(ここ数年、年2回の定期演奏会には必ず行っていたのに…。この時だけ仕事で行けなかった…。)

曲名の「AMPLITUDE」は、辞書を引くと「広さ・豊富・振幅」って出てきます。(ざっくり言うと何か物事が“広がっていく”って意味合いなのでしょうか?)

その名のとおり、躍動感あふれる曲でした。

ちなみに曲名は、リベルテのメンバーと観客からの公募で選ばれたとのこと。(リベルテ団員、堀越巌さんのアイデアを採用。)

一流のサックス奏者、本多先生とジャズにも造詣が深い指揮の天野先生、そして、“大人の楽団”グラールウインドオーケストラ。

素晴らしい演奏にならない方がオカシイ。

ノリノリの10分余りでした…。

 

10分の休憩ののち、いよいよ最後の団体、神奈川大学吹奏楽部の登場です。

少し、“真面目すぎる”傾向が無きにしも非ずですが、技術、表現力、どれをとっても、日本のアマチュア大学吹奏楽団の中では、ナンバーワンと言わざるを得ない団体です。

それにしても、部門を問わず、アマチュアトップバンドの演奏を1日で聴けるのですから、“響宴”ってホントに素晴らしい!

 

[演奏]神奈川大学吹奏楽部

[指揮]小澤 俊朗

 

◆  行進曲「イーグル・アンド・ソード」(星出 尚志)

◆  ゆりのねゆらり(井澗 昌樹)

◆  Respiration(堀田 庸元)

◆  Windjammer(真島 俊夫)

 

最初の曲は、星出尚志先生のマーチですね。

行進曲「イーグル・アンド・ソード」。

陸上自衛隊第12音楽隊の委嘱作品で、所属する第12旅団の部隊マークに“鷲”と“日本刀”描かれているので、この曲名になりました。

私の個人的な印象としては、荒々しいというより、格調高い…、むしろ上品な曲に聴こえました。

とても、ステキなマーチでした。

次は、井澗(いたに)昌樹先生の「ゆりのねゆらり」です。

2013年12月23日、アンサンブルリベルテの第47回定期演奏会の委嘱作品として初演されました。(幸いなことに、この曲は初演に“立ち会わせて”頂きました。)

井澗先生の作品は「Bye Bye Violet」が有名ですよね。

コンクール自由曲としても人気が高い。

その特徴は、井澗先生独特の“激しさの表現”にあると素人なりに考えます。

ハッキリとはわからないのですが、“激しい感情”が曲に表現されている…。

それは、決して不快なものではないのですが、聴く人間の感情を揺さぶる力を持っているような…。

今回の「ゆりのねゆらり」にも同じようなことを感じました。

私のボキャブラリーが貧困なせいか、上手く伝えられないもどかしさがあるのですが、きっと聴けばわかります。

機会があったら、是非、聴かれることをおススメします。

3曲目は、「Respiration」。

川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団の第48回定期演奏会で委嘱作品として初演されました。(この時の定期演奏会には、私は行ってないのです…。)

「Respiration」は、“呼吸”という意味なのだそうです。

演奏している楽器の奏でる音楽(演奏行為)を“呼吸”のような生命活動と意図しているのでしょうか?

解説を読んでいると、そんな意味合いにもとれましたが。

そう言えば、第16回の“響宴”の時にも作曲者の堀田庸元先生の「Prelude and Fugue」が演奏されました。

スケールが大きく、ドラマチックな曲調に大変感動した覚えがあります。(第16回では、“私がイチバン好きな曲だった”とその時のブログ記事に書いてあります。)

なぜか個人的に堀田先生の曲って“シックリ”くるんですよね。

「Respiration」も私の中にいつのまにか入り込んできました…。

まるで、“呼吸”のように普段は意識しないのに絶えず行なっていないといけないものとして…。

さあ、これが本当の最期、お馴染み真島俊夫先生の「Windjammer(ウインドジャマー)」。

“ウインドジャマー”とは「帆船」という意味。

この曲は、横浜市立桜丘高等学校吹奏楽部の創部50周年記念作品です。

解説を見ますと『理想に燃えて飛び立とうとする若人の気持ち』を出港しようとする『Windjammer(ウインドジャマー)になぞらえて』書かれたそうです。(また、この“帆船”は「日本丸」をイメージしているそうです。)

明るくさわやかな曲調は、真島先生らしい名曲だと思いました。

広く、中高生の皆さんに演奏して頂きたいですね。

ちなみに司会の賀内さんによると真島先生は、“響宴”18回のうち、第15回を除いて、全ての回で楽曲を演奏されているようです。(余談ですが…。)

 

さあ、全ての楽曲紹介が終わりました。

最後は、舞台上に作曲者と各演奏団体の指揮者が全員、登壇し、挨拶されました。(所用でお見えにならなかった保科洋先生を除く。)

錚々たる顔ぶれです。

この時が、ずっと続けばいいのに…、と心から思った“浦和のオヤジ”でした…。

それにしても、“吹奏楽”って、本当に楽しい!