浦和河童便り

埼玉・浦和のオヤジ(浦和河童)が「吹奏楽メインで、時々、オーケストラのコンサートに行ってみた」という話

カナディアン・ブラス(2014.11.9ルネこだいら)

2014-11-16 19:40:37 | 吹奏楽
私が学生の頃の金管アンサンブルと言えば、圧倒的に「フィリップ・ジョーンズ・ブラスアンサンブル」が人気でした。
FM放送をラジカセでカセットテープに録音して(古いなぁ…)、何度も何度も聴きたおしたものです。
エヴァルトの金管五重奏曲なんか、とても印象に残っていて、自分たちでも演奏したことがあるような…。(あまりに昔のことなので記憶違いかも知れませんが。ちなみに私は、トロンボーンを吹いていました。)

今の若い方々は、もしかして知らない人もいらっしゃるかも知れませんので、「フィリップ・ジョーンズ・ブラスアンサンブル」の事を簡単に説明します。
BBC交響楽団などイギリスの主要オーケストラで首席トランペット奏者として活躍したフィリップ・ジョーンズが1951年に結成した金管アンサンブルです。
最初は、金管四重奏から活動し始めたようですが、最終的には十重奏まで幅を広げたようです。
レパートリーも古典から現代曲までと幅広く、録音も多数、残したため、その後の金管アンサンブルに多大な影響を与えました。
また、全世界30以上の国で演奏旅行を行い、多くのファンを魅了しました。(日本にも5回、訪れています。1974・1976・1979・1983)
1986年、惜しまれながら、ロンドンで解散しました。

そして、この「フィリップ・ジョーンズ・ブラスアンサンブル」に遅れること20年弱、1970年に産声をあげたのが、「カナディアン・ブラス」です。
トランペット2、ホルン1、トロンボーン1、テューバ1の金管5重奏団。
創立時のメンバーはテューバのデーレンバック氏しか残ってないようです。
また、今回の来日公演では、2004~2007にメンバーであったスカリー氏が“復帰して”ホルンを担当しているようですね。

2014年11月9日、日曜日。
場所は、「ルネこだいら 大ホール」です。
名前はよく聞くホールですが、訪れるのは初めて。
西武新宿線の小平駅から歩いて2~3分の距離ですから、アクセスもかなり良い。
1993年オープンとの事なので、もっと、くたびれているのかと思いきや(失礼)なかなかステキな外観をしています。

中に入ってみます。
ロビーを抜けて、いざ大ホールへ。
座席数1229、落ち着いて聴ける広さですね。
舞台は典型的なプロセニアム形式(額縁)です。
音楽だけではなく、ミュージカルや演劇等にも利用できる多目的ホールといったところでしょうか?

さあ、間もなく開演です。
「世界第一級の金管アンサンブル団体」と評されている演奏を楽しみましょう!

[演奏]カナディアン・ブラス Canadian Brass                   
    クリス・コレッティ(トランペット)
    ケイレブ・ハドソン(トランペット)/ Caleb Hudson(Trumpet)
    バーナード・スカリー(ホルン)/ Bernhard Scully(Horn)
    アキレス・リアルマコプーロス(トロンボーン)/ Achilles Liarmakopoulos(Trombone)
    チャック・デーレンバック(テューバ)/ Chuck Daellenbach(Tuba)

◆ ムイ・リンダ(A.ホルボーン)
◆ カンツォーナ・ペル・ソナーレ 第4番(G.ガブリエリ)
◆ 小フーガト短調 BWV578(J.S.バッハ)
◆ アメリカ組曲 第1番から第2曲「ペルー風ワルツ」(E.クレスポ)
◆ アルバム「カーニバル」より(R.シューマン/arr.コレッティ、ライデノー)
◆ ペーニー・レイン(レノン=マッカートニー)
◆ アメリカ伝承曲(L.ヘンダーソン)
   
    アメイジング・グレイス
   ルッキン・グッド・バッド・フィーリン・バッド
   ハンドフル・オブ・キーズ


【休憩】

◆ エル・レリカリオ(スペイン民謡/arr.バグレー)
◆ ワルツ・アルバム「ブラームス・オン・ブラス」より(J.ブラームス/arr.コレッティ、ライデノー)
◆ エリーゼのために幻想曲(L.V.ベートーベン/arr.ライデノー)
◆ 「ポギーとベス」より「必ずしもそうじゃないぜ」(G.ガーシュイン)
◆ キラー・タンゴ(S.コンパネック)
◆ カルメン組曲より(G.ビゼー/arr.ミルズ)


〔アンコール〕
● くまんばちの飛行(リムスキー=コルサコフ)


まず、オープニングは1階客席の出入口から登場!?
というのも私は2階席でしたので、見えなかったのでした。
1階席にすれば、良かった…。

それからの時間は、“音楽”に飢えていた私にとって、とても有意義な時間でした。
細かいテクニックは、もとより、タンギングの妙には感嘆致しました。
どうしたら、あんなに美しい“音の粒”が出てくるのでしょう!
そして、イチバン感動したのは、そのサウンド。
柔らかくて、温かみのある音色は素晴らしいのヒトコトです。
しかも全員の音が“統一”された音色なので実によく融け合っている。
だから、ハーモニーが恐ろしく美しい!
ブラヴォーです!

あとは演出のこと。
私は、昨年、二つの金管アンサンブルの演奏会を聴かせて頂きました。
まずは、7月に東京オペラシティコンサートホールに「ベルリン・フィル12人の金管奏者たち」。
そして、10月に東京芸術劇場で行なわれた「ブラス・クインテッド ウィーン=ベルリン」。
どちらもベルリン・フィル、ウィーン・フィルといった世界のトップオーケストラの皆さんの途轍もなく、素晴らしいステージでした!
ただ、上記ふたつの団体にはない“演出”がカナディアン・ブラスにはありました。
素晴らしい技術で音楽を“奏でる”だけではなく、動作や時には“小道具”を使い、観客を楽しませてくれます。
しかも、ふざけ過ぎず、ノーブルな雰囲気を保ったまま、ある意味“演技”をしてくれるのです。(フィリップ・ジョーンズ・ブラスアンサンブルも、このようなスタイルでした。と言うか、フィリップ・ジョーンズ・ブラスアンサンブルの方が“先駆”でしょうが…。堅苦しい音楽にエンターテイメントを加味した新しいタイプの“クラシック音楽”だったのだと思います。)

特に面白かったのは、トリの曲、ビゼーのカルメン組曲。
“カルメン”の物語に即したカツラや帽子を使い、視覚的にも楽しませてくれました。(もちろん、演奏が超一級であったのは言うまでもありません。)
また、カナディアン・ブラスの皆さんは、ある曲は、暗譜で演奏したり、またある曲は譜面を見て演奏したりと様々でしたが、楽譜が“紙”ではなく、“iPad”だったのには時代を感じましたね。(ある意味、“演出”だったのかな…。)

コンサート終了後、ロビーではCDにサインを求める観客で長蛇の列が出来ていました。
また、それに笑顔で応じている「カナディアン・ブラス」のメンバーの様子が印象的でした。
これからも「カナディアン・ブラス」の皆さんには世界トップクラスの金管アンサンブルとして活躍して頂き、私たちに素晴らしい「音楽」を提供し続けて頂けることを切に希望する次第であります。
それにしても…、金管楽器の音色って本当にいいものですねぇ。

遅筆にて、お許し下さい。