今日から師走。
そんな2012年(平成24年)12月1日、土曜日。
ここのところ、グッとくる寒さの中を新宿駅から京王新線でひと駅目の初台駅にほど近い「東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル」まで急ぐのでした。
開演は17:00。
夜の公演にしては、少し早目ですかね。
12月に入ったからでしょうか、東京オペラシティの施設内は複数のクリスマスツリーやイルミネーションに彩られていて、とてもキレイです。
さて、日本のプロの吹奏楽団としてはシエナに続いて2団体目、50年以上続く老舗の団体がどのような演奏を披露して頂けるのか、とても楽しみです。
開演に先立ち、ステージ上では、本年末日をもって定年退団される同楽団のトロンボーン奏者、萩谷克己氏を中心とした金管アンサンブルが披露され、演奏会に華を添えました。
前にもこのブログでご紹介したとおり、このタケミツメモリアルは、形が箱型になっている、いわゆる“シューボックス”タイプのコンサート専用ホールです。(教会をイメージするとイチバン近いかもしれません。)
今回、何故だか、わずかな金をケチってしまい舞台、上手(かみて)側の3F席を購入してしまいました。
一般的なプロセニアム形式の劇場と違い、決して舞台が見やすいわけではありません。
しかも、私の席は舞台からの距離は、1F席でいうと最前列と同じくらいでしたので、視覚的には、指揮者、演奏者の頭を覗き込んでいるカタチになったのでした。
シューボックス形式は音響を重視しているので(音響に)、大きな不満はありませんでしたが、やはり…。
今度は過ちを犯さないようにしようと思います。
(ただ、演奏会を聴き進めるつれ、多少、違和感を感じた場面がありました。それは、後述します。)
● 吹奏楽のための民話 (J.A.コーディル)
● 吹奏楽のための第2組曲 (G.ホルスト/C.マシューズ版)
Ⅰ.行進曲
Ⅱ.無言歌
Ⅲ.鍛冶屋の歌
Ⅳ.ダーガソンによる変奏曲
● バレエ組曲「火の鳥」[1919年版]
(I.ストラヴィンスキー/R.アールズ編/F.フェネル校訂)
Ⅰ.序奏
Ⅱ.火の鳥とその踊り
Ⅲ.火の鳥のヴァリエーション
Ⅳ.王女たちのロンド
Ⅴ.カスチェイ王の魔の踊り
Ⅵ.子守歌
Ⅶ.終曲
〈 休 憩 〉
● 祈り (佐村河内 守)
【東京佼成ウインドオーケストラ委嘱作品 世界初演】
● バレエ音楽「シバの女王ベルキス」 (O.レスピーギ/木村吉宏編)
Ⅰ.ソロモンの夢
Ⅱ.戦いの踊り
Ⅲ.夜明けのベルキスの踊り
Ⅳ.狂宴の踊り
さあ、口開けの曲は「民話」ですか?
懐かしいですね。
私のような60年代生まれの吹奏楽部員でこの曲を演奏したことがない人はいないだろうというくらいメジャーな曲ですね。
演奏もさることながら、遠い昔の吹奏楽部員であった日々が目の前に浮かんできて、ジーンとしてしまうオヤジはオカシイでしょうか?
やあ、よかった。
タマランデス。
2曲目は、ホルストの「第2組曲」。
定番中の定番ですね。
この曲には“コリン・マシューズ版”ていうのが、あるんですね。
初めて知りました。
コリン・マシューズといえば、プログラムの楽曲解説にもあるようにホルストの「惑星」に「冥王星」を追加した人としても有名ですね。(私も、CD持ってます。ホンモノの方は“惑星”からランク落ちしちゃいましたけど…。)
でも、ホルストの作曲した他の曲と比較して違和感がありますよね。
余談はこれくらいにして、演奏はといいますと前に演奏した「民話」にも共通するのですが、全体的にこの素朴なメロディを非常にうまく歌い上げていて、やっぱりプロは違うなあというのが正直な感想です。
ただ、前述した私の席に関する問題ですが、ラッパが上を向いているユーホニウムの音が天井の反響板にあたっているせいか細部まで聴こえすぎたように感じました。(聴こえなくていい音まで…。)
が故に、特にソロ部分で全体のサウンドに溶け合い具合が薄かったように思いました。
これは、演奏者うんぬんではなく、聴いた場所の問題だと自分は判断しました。
さあ、休憩前の曲は「火の鳥」です。
今日の演奏会で一番楽しみにしていた曲です。
出だしのリズム、音が大きすぎ?(オケだと弦の低音部ppじゃなかったけ?)
なんて思いながら聴いていくと次第に透明感、躍動感のある演奏にグイグイと引き込まれていきました。
どうしても、このようなダイナミックな曲は弦楽器に、かなわない部分があるとは思いますが、それをテクニックや表現力でカバーし、“吹奏楽の「火の鳥」”を完成させていたのはブラヴォーです。
休憩をはさんで、今、話題の作曲家、佐村河内 守(さむらごうち まもる)氏に東京佼成ウインドオーケストラが委嘱した作品、「祈り」の演奏から後半が始まりました。
佐村河内 守氏といえば最近、全聾の天才作曲家としてメディア等に取り上げられることの多い作曲家です。
今年の吹奏楽コンクールの神奈川県大会、職場・一般の部において、佐村河内氏が作曲した「交響曲第1番《HIROSHIMA》」を演奏した団体がありました。(私は実際、コンクールで聴かせて頂きました。)
吹奏楽に編曲したものでしたが、激しい曲だったのを覚えています。
今回の委嘱作品の曲名は、「祈り」。
我々、聴衆にどんなメッセージを与えてくれるのか?
孤高の作曲家の“叫び”に興味津々です…。
曲は破裂音的な不協和音の塊(かたまり)で始まりました。
何かから抜け出そう、逃げようとするような激しいメロディが続きます。
中間部になると静かな曲調に変わりましたが、それでも重苦しさは相変わらず。
苦悩や恐怖の根は、相当深いようです。
しかし、曲も終盤を迎えるとメロディが長調に転調し、次第に明るい曲へと変貌していきます。
暗黒の世界の中に“希望”という曙光を見つけたのでしょうか?
なんかカッコつけたこと書いてしまいましたが、「祈り」と言う曲名から勝手に想像してしまいました…。
なかなか、気持ちのこもった素敵な曲でした。
佼成ウインドの演奏も素晴らしかった。
佐村河内氏の今後にも注目していきたいと思います。
(会場には作曲者である佐村河内氏がお見えになっており、指揮の飯森先生に招かれて壇上に立たれました。そして、私を含めた観客に万雷の拍手を受けておられました。その拍手はしばらくの間、鳴りやみませんでした。)
気分をリセットして、いよいよ、本日、最後の曲です。
「シバの女王ベルキス」ですよ。
もちろんオーケストラの曲ですが、吹奏楽に編曲されコンクールで演奏されることが非常に多い曲です。
吹奏楽での演奏を聴くと思いだすのが、今は伝説の団体、神奈川県立野庭高校吹奏楽部です。
彼らは1995年(平成7年)の第43回全日本吹奏楽コンクールにおいて、この曲を演奏し金賞を手中にしたと同時に全国最高得点を獲得しました。
実際に生演奏を聴いたわけではありませんが、野庭高校吹奏楽部員と指揮者の中澤忠雄先生の泣ける?交流を描いたノンフィクションノベル(「ブラバンキッズ・ラプソディー」「ブラバンキッズ・オデッセイ」共に石川高子著)を読んで感銘を受けた経験があるので、すぐに思い出してしまうのです。
余計な話でした。スミマセン。
それにしても、佼成ウインドの演奏は素晴らしかった。
技術的な面も素晴らしいですが、それよりなにより、会場をひとつに出来るエネルギーはすごいです。
脱帽以外の何ものでもありません。
こうして、大盛況の中、演奏会は終了しました。
東京佼成ウインドオーケストラ、ブラヴォー!
最後に指揮の飯森範親先生について。
先日も、池袋の東京芸術劇場で陸上自衛隊中央音楽隊の演奏会でタクトを振っておられ、不肖、私、浦和河童も拝聴させて頂き、いたく感動いたしました。
そして、本日の演奏会も素晴らしかった。
お忙しいとは思いますが、マエストロの今後のご活躍に期待しております!
(吹奏楽団も出来るだけ指揮して下さい。)
それにしても、このような素敵なホールで、このような素敵な演奏を聴ける私は何と幸せなことか!
首都圏には、まだまだ素晴らしいホールがたくさんあります。
また、素晴らしい演奏者もたくさんいます。
地方じゃ、こうはいきませんよね。
そんな風にふと考える浦和のオヤジでした…。