こころの声に耳をすませて

あの結婚生活は何だったのだろう?不可解な夫の言動はモラル・ハラスメントだった…と知ったウメの回想エッセー。

食事への執着

2005-10-14 00:23:41 | モラ夫の特徴
 母から与えられる乳は、愛情とともに赤ん坊の心身に注がれる。人間にとって食事とは、命の糧であり血肉を作るものであると同時に、親密さを分け合ったり、愛情を確認したりする行為であり場でもあろう。私達は家族や親しい人たちと食事を共にする。そんなときには、食べ物は単に栄養補給のためでなく、目を楽しませ、いろいろな味があり、体を満たすと共に、お互いコミュニケーションを楽しみ、愛情を確認しあい、心も満たすことを求める。

 モラ夫はその食事に執着した。美食家であり、外食も大好きだったが家庭料理にもこだわった。私の作る料理の味や内容が、自分の期待通りではないと容赦なく私を攻撃した。身も心も飢えている自分を満たさず不快にさせる妻は、夫を大切にしない、愛情がないことの現れであり、加えて理想の母にならないことへの怒りが投影されているようだった。

 私自身の料理の腕は、そんなに悪くないと思っていた。パウンドケーキやシュークリーム、クッキーなどお菓子作りはかつて得意であったし、お酒を飲むことの好きな私は、居酒屋さん風おつまみメニューもよく作った。一人暮らしの時はよく友人を自宅に招いて手料理でもてなし、好評だった。しかし夫の味覚にはあまり合わなかったらしい。

 結婚前に作ったラッキョウは「こんなまずいもの捨ててしまえ!」と叫んだ(しかしこれには後日談があり、夫の友人が遊びに来たときにこのラッキョウを食べて「おいしいじゃないか」と言った途端、夫も食べるようになった)。煮魚がうまく味付けできないと「こんなまずいモノ食べると怒りが湧いてくる」と言った。麻婆豆腐の味がちょっと濃くなってしまったら「こんなだ辛いもん食べれるかっ」と怒鳴った。また、定番の料理を好み、創作的な料理は嫌がった。そして変なこだわりがあった。例えば春菊のゴマ和えは「鳥の餌みたいで嫌だ」「タクアンは黄色い(着色した)ものを買え」「餃子はおやつで食べるもので夕食に出すものではない」???

 夕食のメニューが気に入らない、あるいは自分の思うような味ではないと、大きな溜息を何度も吐き、下劣なゲップを繰り返した。そして乱暴に音を立てて箸やお茶碗をおいた。そんなとき、私は身を縮こませて下を向き、夫の顔を見ないようにして急いで食べた。まったくやりきれない気分だった。料理はその日によって、うまく味付けができるときもあるし、できないときもあると思うが、夫にはそのような一貫性のなさは許されなかったようだ。

 できあがった食事を前にして不機嫌な顔で一瞥し「外で食べてくる」と出て行ったこともあった。私は呆然として見送った。そんな仕打ちが信じられなかった。これは人間が、しかも夫が妻にすることか?なぜそんなことをするのだろう。何が気に入らないのか。私の全人格が拒絶されたような、誰にも訴えられない惨めな悲しみ。

 夫は麺類も好きで、休日の昼食はたいてい麺類になったが、これまた麺のゆで加減にはひどくうるさかった。ラーメンやそばの麺が少しでものびることは許されなかった。麺をゆでるときには細心の注意を払う。すべての具をそろえ、スープもすぐに入れられるように熱々にし、ざるも流しにおいてからタイマーを10秒単位まできっちりセットする。それからゆでるのだ。タイマーがピピピピッと鳴った瞬間麺をざるにあげ、素早く完成させなければならない。少しでも麺がのびたと診断されると、モラ夫のしつこい溜息と怒りに満ちた顔が待っていた。焼きそばを炒めるときは、モラ曰く「気合いを入れて炒めるんだ!」だそうだ。

 反面、夫の機嫌がいいとき、あるいは夫の気に入ったメニューであったときには食べた後、「おいしかった。作ってくれてありがとう。」と私にお礼を言った。そんな時私はとても嬉しくなってしまうのだ。「私の料理がうまくいけば夫はちゃんと認めてくれる」と。極端にこき下ろされながらも、時には評価される喜び。

 この両極端な夫の態度は私を混乱させた。そして「うまくいかないのは私が悪いから」「うまくいけば夫は認めてくれる」という観念を植えつけた。こうして食事に対する私の緊張は高まるばかりだった。うまくできなかったらそれは私の努力が足りないことになり、制裁が待っている。私は食材の買い物をする時から血の気がひいた。思うようなメニューが考えられないときには、パニックになりそうだった。買い物かごをもつ手が震え、泣きそうになりながら必死で考えた。また料理のできあがりが遅くなってしまっても、夫の怒りを誘発することになる。私にとって食事は恐怖の時間だった。

 そして食事の時間が無事に終わると心底ほっとした。しかしまた明日がやってくる。1日のうちで、食事の時間が私にとっては一番緊張する時間になった。
 食事に関するモラエピソードはいろいろある。モラ夫にとっても食事は思い入れが強かったからだろう。そして食事に象徴されるものに執着していたと感じる。

 決して満たされないモラ夫。何なんでしょうね、この人種は。はぁ~…。
  

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (文旦)
2005-10-14 22:54:02
旦那さんウメさんを手放したくなかったでしょうね。

だって、料理が上手な妻って最高だって言うじゃないですか。(いやいや料理が好きといってもらえるだけでもありがたいのに)

中華OKデザ-トOKらっきょうOKお酒も大好きでおつまみをつくらしても最高なんて。

それなのに文句を言うなんて。

別れて三千万年くらい後悔すりゃあいいのよね。



結婚してもらえただけでも十万年に一度の奇跡なんだから。いや一億万年か?



と、私が近所に住むお節介ばばあだったら旦那さんに

渋い渋いお茶を飲み飲みお説教してやるのにね。
返信する
お説教してやってください! (文旦さんへ)
2005-10-15 01:02:04
文旦さん、こんばんは!

コメントありがとうございます!



なんかね…モラ夫は私の料理の趣味とは合わなかったみたいです。

結婚前は、私が夫に料理を作ったら感激していたんですけどね(あれは嘘だったのか?)。

結婚後は大変でした。私の好みと全然違うし。



結婚ね~。夫は実は×2だったのですよ。

だから夫は私と結婚したことで3億万年生きていたことになるのか?!

うわぁ~~~…もうミイラ化した亡霊状態ですね。

そっか~。だから人間離れしていたのですねえ。感心感心。



文旦さんに、夫へぜひ説教してほしかったですわぁ~。

妻の言うことなんて聞きゃあしないのですからねっ。

渋いどころか、出がらしのお茶でもすすらせてやってください!!



文旦さん、ありがとうございました~☆

     ウメより



返信する

コメントを投稿