こころの声に耳をすませて

あの結婚生活は何だったのだろう?不可解な夫の言動はモラル・ハラスメントだった…と知ったウメの回想エッセー。

脱依存

2007-05-03 00:19:29 | モラハラエッセー(離婚後)
 誰にでも優しい優男。仕草もゆったり落ち着いた感じで、他人に安心感を与える雰囲気があった。しかもとてもまめ。気がつけば他の社員のコーヒーカップなども洗っておいてくれたり、紙で指を切ったりすると、さっとバンドエイドを出してくれる。他の社員からも「優男さんはまめでよく気がつき助かる」と評価が高い。彼の優しさに、私も大いに慰められ、嬉しい気持ちにさせられていた。
 ただ優しさの裏返しは優柔不断だとも言えるが、そんなところも少しずつ見えてきたりもしたのだった。

 優男に「優男さんは優しいからいろんな人に頼られるんじゃないんですか?」と聞くと「頼られてしんどいときもあるけどね。相手の事情もわかると断れないね~」と言った。「でも我慢しすぎて怒ることってないんですか?」「う~ん、3年に一度くらいは爆発するかな」「え?爆発って?」「あはは。ちょっとものに当たったりするだけだけどね」…思わず引いた。
 この人、実は内面はコワ~イ人かもしれない…。ついモラの二面性を思い浮かべてしまう私…。

 「僕は弟が難病で親がずっとつきっきりだったし、弟自身も大変だったからけんかもできなかったしね。常に優しくしなくちゃっていう意識があったんだ。親も苦労してたから、あまり親の手を煩わせないようにって、家事なんかも手伝ったしね。その頃からかな。自分よりもいつも他人のことばかりが気になってしまって…。自分がないな~って感じることがあるよ」「就職だって自分がこれやりたいって思ったわけじゃなくて、親戚から勧められたところに就職したわけで。まあ、それでも何とかなってるからいいことにしようか」う~~~ん。深読みする私。そういえば、飲みに行くときも優男にどんなお店がいいか聞いても、いつも「どこでもいいよ」「ウメさんの行きたいところでいいよ」と言っていた。自分の欲するところがわからないのかもしれない…。

 そして何回か優男と一緒に映画に観ながら、「え?」と引っかかるようなことが何回かあった。それは何か。私は映画が好きなので、観たい映画はとても楽しみにしてみる。優男は映画の話しをすると「じゃあ僕も観てみよう」とついてくる感じだった。そして映画を観ながら寝ていたりすることもあったのだ。それを見て私は少々不愉快な気分になった。この人はほんとに映画を楽しんでいるのか?
 そしてある映画を観終わった後、私が映画の感想を言いながら「あの場面では泣けたわ」と言ったら「そう?あそこで泣いたんだ」と冷めているのだ。これにもムッとした。この人、ほんとに面白くて映画を観に来ているの?再度私の中で疑問が湧き起こった。ある日、優男とお茶をしながら「ほんとに映画楽しんでます?面白いと思って観てるの?」と聞くと、優男は言葉に詰まった。少し考えてから「僕は自分で楽しみってあまりもてないんだよね。だから何かを楽しんでいる人と、それを一緒にすることで自分も楽しめるんじゃないかな~、と思っているんだけどね」と言った。更に「仕事が終わって早く家に帰っても特にすることがないからつまらなくて、何となく店をぶらついたりパチンコしたりして時間をつぶしてから家に帰るんだ。だから映画なんかが楽しめたらいいな~、とは思ってるよ」と言った。

 ここで私の頭の温度がサーッと下がった。優男にはまるで自分というものが感じられない。映画だって悪く言えば暇つぶしだったのだ。だから興味もない映画を観たら眠くなったりするのだ。自分で欲するものはわからない。でも誰かがお膳立てしてくれれば、それに乗ればいい。そうすれば楽だ。自分の欲することも他人が考えてくれる…。優しくすれば他人は自分の期待に応えてくれる。自分の存在を認めてくれる…。それが優男の優しさだったのだ。でも人間には限界がある。あまりに優しさを他人から求められ、本人がその要求に応えられなくなったら…彼は多分突如感情的になって爆発するのだろう。自分の限界も知らず、自分の気持ちを伝えるコミュニケーションも求めず、怒らせた相手が悪い、と。

 これはモラ元夫が抱えていた空虚さと似てはしないだろうか。自分がないから妻に自分を丸投げし、妻が自分の期待通りに動いてくれないと、怒りを表明する。でも自分が何を欲しているのかすらわからないモラは、妻が自分の欲するものを当ててくれることを期待している。しかしそんなものは妻には永久にわからない。妻はあれかこれかとモラに差し出すが、モラは決して満足しない。だってモラだって自分の欲するところがわからないのだから。

 ああ、やっぱり。私は心の中で大きなため息をついた。私はいつも寂しい男性を選ぶ傾向にあった。その寂しさを埋めたい「わかってあげたい病」。自分が相手の寂しさを埋められれば、自分の存在意義が強まるような気がしていたのだ。共依存傾向にある私。そんな私は同じような相手に吸い寄せられてしまうことを、モラ元夫で痛い目に遭い漸く心底から気づくことが出来た。
 そして優男とも、少しずつ疎遠になっていった。というより自分から疎遠にしていった。すると優男からも、何の連絡もこなくなった。相手次第の男なのだと、改めて理解できた。

 私は今、自分で自分を満たす方法をやっと会得したように思う。他人によって自分を埋めようとするのではなく、他人によって自分の存在をつかもうとするのではなく、自分で自分を認めるということ、自分で自分を受け入れることを、この年になって漸くできつつあるのかな、と思う。優男から離れることができたことも、自分にとって大きいことだった。以前だったら、また相手の心を埋めようとその優しさに取り憑いてしまったことだろうから…。そしてまた泥縄…。


 だから…もう男の方はけっこうでございます~…なんてね(爆)!




17 コメント

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お久しぶりです~ (宇砂子)
2007-05-03 00:37:24
>自分が何を欲しているのかすらわからないモラは、妻が自分の欲するものを当ててくれることを期待している。しかしそんなものは妻には永久にわからない。妻はあれかこれかとモラに差し出すが、モラは決して満足しない。だってモラだって自分の欲するところがわからないのだから

唸りまくりました(爆)
久々に思い出しましたけど、元夫そのものですわ~。
思い出したからって、な~んにも思うところもありませんが(笑)

相変らずの簡潔で的確な描写に、頭下がりっぱなしになりますわ~(^^)
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お久です~ (まっち~)
2007-05-03 02:32:19
久しぶり更新して久しぶりに来たらなんと似たテーマでの更新!!
私も今、「依存されることに依存する心理」について考えてるんですよね。
自分もそういう色強いし。
これから脱却しないとしんどいばっかりですよね。

しかしその優男、アリガチすぎて怖い。
どんなに寒かったか想像できて怖い。
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優男について考えさせられました (すみれ)
2007-05-03 07:50:08
お久しぶりです。
私もつい、優しい人とか、自分がいろいろしてあげないと駄目なタイプの男性とくっついてしまう傾向がありましたので、とても考えさせられました。

ウメさんが「気づいて」、思い切り痛い目にあうことが無くてよかったです。ほっとしました。

>男の方はけっこう

いやいや、いないよりはいたほうがましかも。
この手の男はけっこう、っていうことで。。
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なるほど・・・ (poohpapa)
2007-05-03 08:30:42
モラハラ男と、そういう男にいつも吸い寄せられてしまうモラハラ被害者女性との「メカニズム」のようなものが実に良く理解できました。

でもね、世の中、圧倒的にモラハラ男のほうが少ないのですよ。懲りるのはまだ早いのではありませんか。きっと、いつか良い出会いが待っていますよ。それはもちろん、年齢には関係なく。

それにしても、ウメさんの文章力は凄い、と思いました。
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ありがとう~! (宇砂子さんへ)
2007-05-03 20:48:38
宇砂子さん、こんばんは~!

モラって、やっぱりどこのモラも同じなんですね~。
空虚なモラの心の穴はブラックホール。
満たされることを知らないんですもんね。

それにしても、モラ独裁帝国から脱出した
私達にしてみれば、勝手にモラ帝国のひとり王様やってろ!
って感じですね~。
もう奴が生きてようが死んでようがどーでもいいですわ。

宇砂子さんのコメント、嬉しかったです~♪
ありがとう~(^^)
     ウメより
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お久し振りです~ (まっち~さんへ)
2007-05-03 21:02:20
まっち~さん、こんばんは!
お元気にされていましたか?

まっち~さんのブログはいつも楽しみにしていますが
最新の記事も読ませていただきました。
私自身も当てはまることばかりで
改めて自分の傾向についても考えさせられました。

モラ元夫とは荒んだ関係だったので
つい他人の優しさにしがみついてしまいそうになったのですが
ふとモラと似たような臭いに気がつきました。
気がついてよかった~~(^^;)
本質が見えたときは、ほんと恐く寒かったですよ~。。。

まっち~さんがいらしてくれて嬉しかったです。
ありがとうございます~♪
     ウメより
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すみれさんもですか~ (すみれさんへ)
2007-05-03 21:10:48
すみれさん、こんばんは!

すみれさんも、異性に対して私と同じような傾向を
お持ちなのですね~。
私も、いろいろしてあげることに今までは
つい生きがいを感じてしまっていました。
もう相手の世話をするのはやめよう、と心に誓いました。
ほんと、また相手のことで頭がいっぱいになって
自分を見失うところでした。。。

そうですね~。
どうしても私はこの手の男性ばかり惹かれていましたが
他のタイプにも惹かれることがあるのかな~。
自分でもよくわかりませんね~…(^^;)

すみれさん、ありがとうございます!
     ウメより



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ありがとうございます (poohpapaさんへ)
2007-05-03 21:25:00
poohpapaさん、こんばんは!

もしかして、モラハラ被害男性も
このような状況は被害女性と共通なのでしょうか?
とにかくモラハラは身内であれ職場であれ
相手を深く傷つける、許せないものですね。

そうですね~。
元夫とのことで、自分の惹かれる相手はキケン、と
ストップかけている自分がいます。
自分が必要以上に依存しない、健康な心を取り戻したら
違う出会いがあるかもしれませんね。
今後、いい出会いがあればそれも嬉しいですね。

poohpapaさん、いつもありがとうございます(恐縮です)!
      ウメより


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さびしい男 (ちっこ)
2007-05-06 18:45:05
自分と同じ痛みを持つ人を探そうと無意識に働いてしまうのでしょうか

自分の抱えてきた痛みを分かるのは
同じ痛みを持つ男。

付き合ってきた人達はみなさびしい男ばかりでした

ウメさんは優男さんの裏を見抜けたんですから
凄いですよ。

>私は今、自分で自分を満たす方法をやっと会得したように思う。

そうですね。
今のウメさんはひとりをとても楽しまれているなぁといつも感じています。

私もこれからひとりを楽しめるようになりたいなと思っています
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お互いこれからですね (ちっこさんへ)
2007-05-06 23:14:26
ちっこさん、こんばんは!

そうですね~。
似たような匂いをかぎ分けちゃうのですよね。
そして何かしらの心の飢えを共感してしまう部分と。
でも飢えの部分に共感したら
結局はお互いに奪い合おうとするばかりになり
余計苦しくなるだけだとわかりました。
以前はそれを埋め合えると勘違いしてました…。

それと…
優男を見抜いたというよりも
結局は私の惹かれる相手はキケン、という
自分自身への不信感(笑)が
疑いの目を持ち続けさせたのだと思いますよ。

それから、モラと一緒に生活したことで
2人で暮らすことの恐怖と苦しみを味わいすぎたせいで
ひとりの平安な暮らしがなんだか嬉しいんです。
ただ時がたてばまた心境も変わるかもしれませんが(笑)
今のところは、ひとりが安らぎです。
ちっこさん、今度は元夫さんに向けていたパワーを
ご自身に使えば、もっともっと元気になりますよ。
きっと大丈夫!
      ウメより
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