こころの声に耳をすませて

あの結婚生活は何だったのだろう?不可解な夫の言動はモラル・ハラスメントだった…と知ったウメの回想エッセー。

離婚と希望 ~1年に想う~

2008-02-24 22:13:19 | モラハラエッセー(離婚後)
 今朝、起きてカーテンを開けたら、そこは静かな雪景色だった。軽やかに舞い飛ぶ雪を眺め、空を仰いだ。雪が世界を白く清めていくような、心の中をしんしんと鎮めてくれるような…。確か、1年前の今日は穏やかな晴れた空の下、離婚届を持って歩いたのだったな…。

 1年前の今日、私は離婚届を役所に提出した。結婚生活を続けていれば、10年を祝う直前だった。そう、結婚式では「10年後にまた皆を招いて、10周年パーティーをしよう」と、元夫は言った。
 その日は訪れなかった。

 それまでどんなに苦悩し、幾度も希望を抱いては粉砕され、絶望と憎悪に心を焼かれたことだろう。それでもなお、離婚が怖くて不安で、世間の目が気になって、離婚後の生活の惨めさを想像し、なかなか離婚に踏み出せなかった。
それでも、よく理解していたのだ。元夫と生活することが、どういうことなのかを骨の髄まで思い知っていたのだ。
 心通わない夫婦生活の、なんと虚しい日々を。夫と一緒にいることによって、逆に厳しく迫りくる孤独を。絶望と憎悪にまみれ、自分を見失っていく恐怖を。いつか取り返しのつかない恐ろしい出来事が起こるのではないかという予感を。夢も希望も持てない将来が待っていることも。温かい日々はやってこないことを。
どんなに求めても切望しても泣き叫んでも笑顔を向けても、元夫と笑いあう日々が訪れる可能性は、時間を経るごとに限りなくゼロになっていくことを。

 元夫と別居してから待っていたのは、穏やかで優しい日々だった。家の中に誰も私を責める人はいない。誰も私に指図しないし、支配もしない。それがただ安らぎだった。元夫へにぶつけられなかった、怒りや悲しみが一時的に私を襲った。吹き荒れる心の嵐に戸惑いながらも、それをブログに綴り続けた。でも私は誰からも攻撃されることはなかった。離婚したことも、なかなか他の人には言えなかったが、今は少しずつ周囲の人に話をしている。私は現在、心から穏やかに日々を送っている。

 「一人で暮らすのはさびしくない?」「一人の食事はさびしくない?」と聞かれることがある。「全然さびしくないよ」と私は答える。それは真実だ。かつて、異常に神経をすり減らし震えながら食事を作ったあのころを思えば、今は本当に安らかに、自分の好きなものを好きに料理して、おいしく味わって食べることができる。

 二人の方がよっぽど孤独だった。いつも元夫のことで頭がいっぱいで、仕事が終わればすぐ帰宅し、休日だって元夫と過ごさなければならなかった。でも一緒にいるからといっても、お互い理解するには埋めようのない溝があり、ささいな言葉を交わすことにもピリピリし、常に電流にさらされているようなものだった。私は元夫と一緒に過ごすことで、精神的にも追い込まれた。さらに友人や仕事仲間との時間も持てずに、孤独を深めるばかりだった。

 今、私はひとりで生活している。でもそうしたいと思えば、いつでも友人に会え、おしゃべりを楽しみ、旅行をし、家に招き夜通しおしゃべりすることもできる。好きな時に仕事仲間と飲み、実家に帰り、昔の友人と久々の再会も楽しむことができる。そう、私は元夫と生活していたころよりも、ずっと大勢の人たちと会い、時間を共有し、つながることができているのだ。だからちっとも孤独ではない。
 家の中でひとりだからといっても、すべてにおいて一人、というわけではない。自分の時間を大事にしながら、求め、望めば他の人と思う存分つながりをもつことができるのだ。

 いったいどちらが孤独というのだ?

 別居生活はある意味楽だった。結婚している、という事実を変えなくてもよかったから。なかなか離婚できなかったのは、元夫というよりも、世間の目が気になっていたからだった。離婚に偏見を持ち、離婚を受け止められないのは自分だった。
でも、離婚したら、それは怖くないものだった。むしろ、私を多くの人と結びつけ、私の人生を豊かにしたのだった。

 今月、私は40歳になった。思えば30代は、元夫のモラハラにひたすら振り回された年代だった。40になれば人生、後半戦だ。残りの後半は、納得できる人生を送りたい。自分の好きなように、理不尽な我慢はしないで、有意義な時間をもって日々を過ごしたい、と思う。

 こんな人生になるなんて…!と、あれこれ想いを馳せつつも、これからの人生が楽しみだ、と思っている。



39 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
1周年、おめでとうございます (マーチ)
2008-02-25 22:01:31
ウメさん、こんばんは。
もう1年もたったなんて、ちょっとびっくりしました。
早いものですねえ。

最近のウメさんは、めきめき元気になっていらっしゃるみたい。
おそらく、それが本来のウメさんなんでしょうね。
大きな勇気が必要だったでしょうが、決断を下してよかったですね。

それにしても、そんなに生命力にあふれたウメさんを、瀕死の状態にまで追い込んだモラハラの恐ろしさを、あらためて感じてしまいます(って、他人事じゃないんですが・・・)。
返信する
ありがとうございます (マーチさんへ)
2008-02-26 00:03:41
マーチさん、こんばんは
早速のコメントをありがとうございます!

ほんとに、あれから1年なんて信じられませんね~。
あの時もマーチさんにはいろいろ励ましていただきましたね。
今は、1日1日歯を食いしばるようにして
過ごしていた日々が遠く感じます。
時は経ち、状況は変化していくものだと実感します。

今は、気持ちがすごく楽なんです。
地獄を見て悟ったというか(苦笑)
だって、あのときほどコワイ状況を経験していれば
何もかも楽に感じます(爆)
おかげさまで、元気になりました~
いつもありがとうございます♪
     ウメより
返信する
おめでと~ ()
2008-02-26 08:54:03
1周年おめでとうございます

ウメさんが今の生活を楽しんでいることが
ブログでも伝わってきてますよ。
私も1周年にはもっと晴れ晴れとした
気持ちになれるといいなぁ。

せっかくの人生楽しく過ごしたいし
お互いこれからの人生に楽しいことがたくさん
ありますように
返信する
おめでとうございます♪ (みなみ)
2008-02-26 09:55:15
ウメさん、こんにちは~

私の友人も最近めでたく離婚しました。相手の不倫に苦しみながらも、がんばって許容し、家庭を守ってきた彼女。

「責任をとるっていうことは、自由になるっていうことだったんだね♪」と、子どもの将来や今後の生活に不安を抱えながらも吹っ切れた表情の彼女は輝いて見えました。

私も、いつかは・・・!
自分の人生を自分で歩いて締めくくりたいと、ウメさんの文章を読んで切に思いました。それにしてもウメさんは知的だわ~ 分けて欲しいわ~
返信する
Unknown (塩砂糖)
2008-02-26 19:21:09
あれから、数年後で、こんなに、モラハラが認知されるようになってうれしいです。
私の住む、田舎でさえ、モラハラが認知されてきています。
あの時、全国のどこかで確かに、共に戦ったみんな。
モラハラ被害者同盟で、みんなの調停や、裁判の日をお互いに心配したあの日がある意味、懐かしいですね。
モラハラのブログだって、いっぱいあるし・・・
久々の更新、うれしかったです。
返信する
もうそんなに。。 (ちっこ)
2008-02-26 20:00:52
あれから1年たったんですね。

さっそうと前に進むウメさんを羨ましく
思っていたあの時を思い出します。

あれからウメさんの日常の中の小さな幸せを楽しんで過ごされている姿に励まされ続けた1年でした。

こんな幸せの形もあるんだ。
こんな生き方だってあるんだと気づかされる事がいっぱいありました。

これからもウメさんのお話を楽しみにしています。
宜しくお願いします。
返信する
ありがとうございます~♪ (灯さんへ)
2008-02-26 21:51:41
灯さん、こちらにもコメントいただきありがとうございます~!
私は元夫とは、まず別居して、うじうじと考える期間も長く
やっと離婚にこぎつけたんですよ。
だから、灯さんが悩んだり落ち込んだりするのは当然ですよ!
しかも、灯さんは私よりもずっと決断は早かったですし
それはとても前向きですごいな~と思っています

きっとこれから楽しいことがたくさんまっているに違いないっ(笑)
灯さんらしく、日々を楽しめますように
私も遠くからエールを送っていま~す
     ウメより

返信する
ありがとうございます! (みなみさんへ)
2008-02-26 21:53:29
みなみさん、こんばんは~!
いつもありがとうございます♪

おぉ!みなみさんのご友人も勇気ある決断をして
ご自身の人生を勝ち取ったのですね。
そういう方が身近にいると、こちらも勇気を与えられますね。

みなみさんも、焦らず“その時”をお待ちになったらいいかと思います。
思い続けていれば、望み続けていれば、いつかきっと叶うと信じています。
みなみさん、応援していますよ~
     ウメより
返信する
ありがとうございます! (塩砂糖さんへ)
2008-02-26 21:58:17
塩砂糖さん、お久し振りです~!
あぁ、あの時を思い出しますよ。
モラハラ被害者同盟の掲示板で、お互いの想いを話し、
共感し、励ましあったあの頃…!
あの頃があったからこそ、今の私がいます。
あの頃出会った方々も、ご自身を取り戻すために闘い
生活も随分変化されたように思います。
ひとりでも多くの方が、モラハラの罠に気付き、
自分の力を取り戻してくれたら嬉しいです。

塩砂糖さん、見守っていてくださってありがとうございました。
コメントいただき嬉しかったです
     ウメより
返信する
ありがとうございます♪ (ちっこさんへ)
2008-02-26 22:00:52
ちっこさん、こんばんは~!
そうなんです。早いものであれから1年になりました。

ちっこさん、颯爽となんて前に進んでいませんよ。
長い間、別居を続けながらうじうじと考えてましたもん(笑)
ちっこさんこそ、いつのまに離婚を決断されて
力強く歩まれたではないですか。
私もちっこさんの勇気に励まされましたよ。

幸せの形は、自分で作るものだって思いました。
以前は世間の「幸せ」の形に合わせようとしていたのですが
それは幻想なんだと気付きました。

ちっこさん、ささやかな幸せを、季節の移ろいを、友人との親交を
子どもたちの成長を、お互いに喜んで生きていけるといいですね
北国のちっこさん、こちらこそよろしくお願いいたします。
いつもありがとうございます
     ウメより

返信する

コメントを投稿