今年の冬は冷え込みが厳しく、あまり寒くない私の地域でも12月に雪が降った。空に雪が舞う。雪は私にとって非日常の世界に連れていってくれる。雪が降るといつまでも、いつまでも見とれてしまう。私が見る世界を、白く染めてくれる雪。汚い物もそっと包んでくれる雪。腐敗をそっと凍結させてくれる雪。
私が子どもの頃は、よく雪が積もった。雪合戦、雪だるま、かまくら、そして雪にコンデンスミルクをかけたかき氷ならぬ雪氷。雪が降ると、そんなお楽しみに心躍ったものだった。そして空から絶え間なく降りてくるぼたん雪に私は見とれていた。じーっと見ていると、雪に乗って空に吸い込まれそうな気持ちになった。
「手袋を買いに」という絵本がある。そこで子狐が雪と出会い、驚き戯れる描写が印象的だ。また、宮沢賢治の「雪渡り」では、雪の上を歩く「キシリキシリ」とか「キックキック」という音が頭に残った。先日降った突然の雪。どんどん降り積もり、私は出勤途中の道に積もった新雪の上を歩いた。キックキックと音がし、懐かしい物語を思い出した。
私は一時雪国に住んでいたことがある。しんしんと降り積もる雪。何もかもが白く覆われていく。長い長い冬の季節。毎日雪が続くと、灰色の空からまるで灰が降ってくるようで迫り来る雪に息苦しさを感じた。あの時ほど春を待ちわびたことはない。雪国に住む人々にとって冬は本当に厳しい季節だ。道路の両脇にできる雪の壁、玄関や窓が壊れないように雪囲いを作る。水道管が凍結しないようにする、そして日々欠かせない雪かき。そこまで生活に迫り来る雪は、きれい、というより圧迫感だけがあった。
そして突然の青空。まぶしく輝く銀世界。目に突き刺さるような光。そんなとき、私は友人と一緒に近くの地元の人たちが利用するスキー場に行った。春が近づくと、少しずつ晴れ間も多くなる。積もった雪がぽたりぽたりと溶けていく様子に春の喜びを感じたものだった。
結婚して夫と生活を始めたこの土地でも、1~2月にはたまに雪が降った。雪が舞う中、夫と雪を楽しみながら散歩をしたこともあった。また、夫がひとりで見つけてきたマンションに引越さざるを得なかった時、引越しの当日は冷たい霙が激しく降っていた。霙の中の荷運び。重い雲がたれ込め、霙に濡れた段ボール箱が室内に運び込まれる。私は寒さに震えながら段ボールを雑巾でぬぐった。暗く重い天候はこの先の生活を暗示しているような気がしたものだった。そして引越し後の夫との生活は常に冬だった気がする。厳冬だったり、雹が降ったり、暖冬かと思ったら吹雪に心身凍りつく…と言ったような。私にとっての春は、夫から離れることだった。夫と生活をしていたとき、どんなに春を待ちわびたことか。私の心が晴れやかになる日は来るのだろうか…?そう感じていた。
時間が経てば、そのうちに季節は移り変わる。しかし夫との生活は待っていても変わらなかった。季節は冬のままだった。私は自分で、太陽を取り戻すために南方向への脱出計画をおぼろげながら夢想し始めていた。それが具体化するまでにはもう少し先になったのだが。
雪降る夜、私は懐かしさを感じながら外を見る。私の生活に、もうモラが入り込むことはあり得ない。モラ夫と過ごした日々が、遠くなっていく。こんな日がくるなんて。こんな心穏やかに、ひとりで暮らせるなんて、こんな日を私は作れたんだ。悲しいけれど、ほっとする。不安だけれど、自信も出てくる。今、私に向かって「最低最悪人間だ!」と言う人は誰もいない。誰も。
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年の瀬も押し迫ってまいりました。この1年、皆様にとってどんな年でしたでしょうか。私は、モラ夫と別居して1年が過ぎました。心の平安を取り戻し、ビクビクすることなく穏やかに暮らしています。『できないことを数えるよりも、今自分ができることを、ささやかでもいいから行動すること』、そう自分に言い聞かせています。
このブログはまた年明けから再開させていただきます。いつも読んでいただいている皆様、どうか良いお年をお迎え下さいますように…!
私が子どもの頃は、よく雪が積もった。雪合戦、雪だるま、かまくら、そして雪にコンデンスミルクをかけたかき氷ならぬ雪氷。雪が降ると、そんなお楽しみに心躍ったものだった。そして空から絶え間なく降りてくるぼたん雪に私は見とれていた。じーっと見ていると、雪に乗って空に吸い込まれそうな気持ちになった。
「手袋を買いに」という絵本がある。そこで子狐が雪と出会い、驚き戯れる描写が印象的だ。また、宮沢賢治の「雪渡り」では、雪の上を歩く「キシリキシリ」とか「キックキック」という音が頭に残った。先日降った突然の雪。どんどん降り積もり、私は出勤途中の道に積もった新雪の上を歩いた。キックキックと音がし、懐かしい物語を思い出した。
私は一時雪国に住んでいたことがある。しんしんと降り積もる雪。何もかもが白く覆われていく。長い長い冬の季節。毎日雪が続くと、灰色の空からまるで灰が降ってくるようで迫り来る雪に息苦しさを感じた。あの時ほど春を待ちわびたことはない。雪国に住む人々にとって冬は本当に厳しい季節だ。道路の両脇にできる雪の壁、玄関や窓が壊れないように雪囲いを作る。水道管が凍結しないようにする、そして日々欠かせない雪かき。そこまで生活に迫り来る雪は、きれい、というより圧迫感だけがあった。
そして突然の青空。まぶしく輝く銀世界。目に突き刺さるような光。そんなとき、私は友人と一緒に近くの地元の人たちが利用するスキー場に行った。春が近づくと、少しずつ晴れ間も多くなる。積もった雪がぽたりぽたりと溶けていく様子に春の喜びを感じたものだった。
結婚して夫と生活を始めたこの土地でも、1~2月にはたまに雪が降った。雪が舞う中、夫と雪を楽しみながら散歩をしたこともあった。また、夫がひとりで見つけてきたマンションに引越さざるを得なかった時、引越しの当日は冷たい霙が激しく降っていた。霙の中の荷運び。重い雲がたれ込め、霙に濡れた段ボール箱が室内に運び込まれる。私は寒さに震えながら段ボールを雑巾でぬぐった。暗く重い天候はこの先の生活を暗示しているような気がしたものだった。そして引越し後の夫との生活は常に冬だった気がする。厳冬だったり、雹が降ったり、暖冬かと思ったら吹雪に心身凍りつく…と言ったような。私にとっての春は、夫から離れることだった。夫と生活をしていたとき、どんなに春を待ちわびたことか。私の心が晴れやかになる日は来るのだろうか…?そう感じていた。
時間が経てば、そのうちに季節は移り変わる。しかし夫との生活は待っていても変わらなかった。季節は冬のままだった。私は自分で、太陽を取り戻すために南方向への脱出計画をおぼろげながら夢想し始めていた。それが具体化するまでにはもう少し先になったのだが。
雪降る夜、私は懐かしさを感じながら外を見る。私の生活に、もうモラが入り込むことはあり得ない。モラ夫と過ごした日々が、遠くなっていく。こんな日がくるなんて。こんな心穏やかに、ひとりで暮らせるなんて、こんな日を私は作れたんだ。悲しいけれど、ほっとする。不安だけれど、自信も出てくる。今、私に向かって「最低最悪人間だ!」と言う人は誰もいない。誰も。
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年の瀬も押し迫ってまいりました。この1年、皆様にとってどんな年でしたでしょうか。私は、モラ夫と別居して1年が過ぎました。心の平安を取り戻し、ビクビクすることなく穏やかに暮らしています。『できないことを数えるよりも、今自分ができることを、ささやかでもいいから行動すること』、そう自分に言い聞かせています。
このブログはまた年明けから再開させていただきます。いつも読んでいただいている皆様、どうか良いお年をお迎え下さいますように…!