普通の夫婦は、一緒にテレビを見るとき、どうしているのだろう。それぞれ見たい番組が違っていたとき、どう折り合いをつけているのだろう。普段見る番組は、どうやって決まっていくのだろう。それとも家には2台以上のテレビがあって、それぞれで見るのだろうか。
うちのテレビは居間に一台だけあった。そして夫との生活において、テレビのチャンネル権は常に夫にあった。食事の時も、くつろいでいるときも、夫は自分の好きな番組だけを見た。
夫は特にプロ野球観戦が好きだった。プロ野球シーズンになると私は密かに胸をなで下ろした。なぜならテレビ中継をしている間は、野球に関心が向けられ、その時だけは夫にあまり神経を遣わなくてすむからだ。夫は阪神ファンだ。阪神の選手がヒットを打てば「おぉー」と叫び、得点が入れば「やった!」と拍手をしていた。その時の夫は非常に嬉しそうだ。そしてビールも進む。私は夫を上機嫌にしたくて、阪神選手の名前を覚えた。そして夫と一緒に勝利を喜び、負けると嘆いた。私はそうしながらプロ野球が夫と私の「かすがい」みたいなものだと苦々しく思いもした。
また、夫は感動ものの人間ドラマが好きだった。悲しい場面になると、涙をこらえて震えていた。笑える場面では、声を上げて笑っていた。
そんな夫の姿はとても不思議だった。夫は私との関係では、テレビに向けるような感情表現はしない。むしろ無感情、無関心だった。現実の人間関係においては、何かと文句ばかり言っているし、深くかかわることができないタイプだ。それをバーチャルな世界においてはひどく感情移入し、感傷的になっている。後に、私はそんな夫の姿を見て「このナルシストめ!」と思ったが、初めの頃は「実は感受性豊かな優しい人なんだ」と勘違いしていた。当時はまだ私の目に「モラ歪曲フィルター」がかかっていたようだ。
あるときは特に好きな番組を見るでもなくテレビをつけ、チャンネルをコロコロ変えていた。あまりに変えるので「何の番組が見たいの?」と聞いたら「別に何も見たくない」と言いながら変え続けた。かといって私の見たい番組を聞くわけでもないのだ。
そしてまた大きな音量にしてテレビをつけているのだ。耳が遠いのではないかと思うくらい大きな音で、私はその音に耐えられなかったし、マンション暮らしだったので、近所に聞こえているのではないかと気になった。一度「音、大きくない?」と聞いたが無視された。「近所に聞こえるんじゃないの?」と言うと「聞こえたら言いに来るだろう?」と返され終わりだった。私は夫がトイレに入っているすきに音量を小さくしたが、また元に戻された。ステレオで音楽を聴くときも、でかい音量にしていた。私は大きな音が苦手なので、苛立ち、神経質になったがどうしようもなかった。
そして、夫は私に「何が見たい?」とは決して聞かなかった。私が好きなテレビ番組を見ることができるのは、夫の帰りが遅いときだけだった。
ある夜、夫が残業で遅くなること、食事は済ませてくることの連絡を受け、うきうき気分だった。のびのびとした気持ちで1人食事をとりながら好きなテレビ番組を見た。同時に、こんなときしか好きな番組を見ることができないなんて…と溜息をついていた。後かたづけを済ませた後も、テレビを見ていた。しょうもないバラエティ番組だったが、久々に私は家で(しかもひとりで)笑っていた。その時、夫が帰ってきた。私はテレビをつけっぱなしで玄関まで迎えに出て、居間に戻って夫のためにお茶を用意した。夫はちらとテレビを見て「こんなの面白くないよ」と言った。私は「結構笑えるよ」と番組を見続けようとした。夫は無表情で「こんなくだらない番組は消せっ!」とドスのきいた声を出した。私は即座に消した。そして不機嫌な夫の溜息を何度も聞くはめになった。
その後私は、ひとりの時にテレビを見ていても、夫が帰りドアの鍵を開ける音がした途端、即スイッチを切った。しかも、夫がすぐにテレビをつけると、私の見ていた番組がまず映し出されるので、必ず夫の許容範囲の番組に素早くチャンネルを変えてからスイッチを切った。
脅し、そして服従。その後私は過剰なまでに、夫の脅しに反応してしまうのだ。いつもこの繰り返しだった。
今、私はプロ野球観戦をまったくしなくなった。かつて私は夫に合わせ、常に阪神の試合を見、勝てば一緒に喜ぶふりをし、負ければ残念なふりをした。選手の名前を覚え、知人にも「阪神ファン」の顔をしていた。私はただ夫の気をひくために、夫との安全な関係を保つために、夫とともに楽しんでいるという幻想を持つために、不毛な努力をしていたのだ。
でも今は、そのような“ふり”をする必要はまったくない。私にとってはどの野球チームが勝とうと、関係ないことなのだ。もう夫に神経を尖らす必要もない。私は私の好きなことを「好き」と言い、嫌いなことは「嫌い」と言えばいいのだ。
こんなシンプルな私の感情さえ、夫との生活の中では押し殺していた。テレビひとつのことにでも。
うちのテレビは居間に一台だけあった。そして夫との生活において、テレビのチャンネル権は常に夫にあった。食事の時も、くつろいでいるときも、夫は自分の好きな番組だけを見た。
夫は特にプロ野球観戦が好きだった。プロ野球シーズンになると私は密かに胸をなで下ろした。なぜならテレビ中継をしている間は、野球に関心が向けられ、その時だけは夫にあまり神経を遣わなくてすむからだ。夫は阪神ファンだ。阪神の選手がヒットを打てば「おぉー」と叫び、得点が入れば「やった!」と拍手をしていた。その時の夫は非常に嬉しそうだ。そしてビールも進む。私は夫を上機嫌にしたくて、阪神選手の名前を覚えた。そして夫と一緒に勝利を喜び、負けると嘆いた。私はそうしながらプロ野球が夫と私の「かすがい」みたいなものだと苦々しく思いもした。
また、夫は感動ものの人間ドラマが好きだった。悲しい場面になると、涙をこらえて震えていた。笑える場面では、声を上げて笑っていた。
そんな夫の姿はとても不思議だった。夫は私との関係では、テレビに向けるような感情表現はしない。むしろ無感情、無関心だった。現実の人間関係においては、何かと文句ばかり言っているし、深くかかわることができないタイプだ。それをバーチャルな世界においてはひどく感情移入し、感傷的になっている。後に、私はそんな夫の姿を見て「このナルシストめ!」と思ったが、初めの頃は「実は感受性豊かな優しい人なんだ」と勘違いしていた。当時はまだ私の目に「モラ歪曲フィルター」がかかっていたようだ。
あるときは特に好きな番組を見るでもなくテレビをつけ、チャンネルをコロコロ変えていた。あまりに変えるので「何の番組が見たいの?」と聞いたら「別に何も見たくない」と言いながら変え続けた。かといって私の見たい番組を聞くわけでもないのだ。
そしてまた大きな音量にしてテレビをつけているのだ。耳が遠いのではないかと思うくらい大きな音で、私はその音に耐えられなかったし、マンション暮らしだったので、近所に聞こえているのではないかと気になった。一度「音、大きくない?」と聞いたが無視された。「近所に聞こえるんじゃないの?」と言うと「聞こえたら言いに来るだろう?」と返され終わりだった。私は夫がトイレに入っているすきに音量を小さくしたが、また元に戻された。ステレオで音楽を聴くときも、でかい音量にしていた。私は大きな音が苦手なので、苛立ち、神経質になったがどうしようもなかった。
そして、夫は私に「何が見たい?」とは決して聞かなかった。私が好きなテレビ番組を見ることができるのは、夫の帰りが遅いときだけだった。
ある夜、夫が残業で遅くなること、食事は済ませてくることの連絡を受け、うきうき気分だった。のびのびとした気持ちで1人食事をとりながら好きなテレビ番組を見た。同時に、こんなときしか好きな番組を見ることができないなんて…と溜息をついていた。後かたづけを済ませた後も、テレビを見ていた。しょうもないバラエティ番組だったが、久々に私は家で(しかもひとりで)笑っていた。その時、夫が帰ってきた。私はテレビをつけっぱなしで玄関まで迎えに出て、居間に戻って夫のためにお茶を用意した。夫はちらとテレビを見て「こんなの面白くないよ」と言った。私は「結構笑えるよ」と番組を見続けようとした。夫は無表情で「こんなくだらない番組は消せっ!」とドスのきいた声を出した。私は即座に消した。そして不機嫌な夫の溜息を何度も聞くはめになった。
その後私は、ひとりの時にテレビを見ていても、夫が帰りドアの鍵を開ける音がした途端、即スイッチを切った。しかも、夫がすぐにテレビをつけると、私の見ていた番組がまず映し出されるので、必ず夫の許容範囲の番組に素早くチャンネルを変えてからスイッチを切った。
脅し、そして服従。その後私は過剰なまでに、夫の脅しに反応してしまうのだ。いつもこの繰り返しだった。
今、私はプロ野球観戦をまったくしなくなった。かつて私は夫に合わせ、常に阪神の試合を見、勝てば一緒に喜ぶふりをし、負ければ残念なふりをした。選手の名前を覚え、知人にも「阪神ファン」の顔をしていた。私はただ夫の気をひくために、夫との安全な関係を保つために、夫とともに楽しんでいるという幻想を持つために、不毛な努力をしていたのだ。
でも今は、そのような“ふり”をする必要はまったくない。私にとってはどの野球チームが勝とうと、関係ないことなのだ。もう夫に神経を尖らす必要もない。私は私の好きなことを「好き」と言い、嫌いなことは「嫌い」と言えばいいのだ。
こんなシンプルな私の感情さえ、夫との生活の中では押し殺していた。テレビひとつのことにでも。
私の場合は、マラソンを見なくなりました。
マラソンが嫌いな訳じゃないんですが、実況中継というのが夫を思い出させて嫌なのです。
次女もそういいます。(笑)
それからナイター。
やっぱり私もウメさんと同じです。
何年経っても嫌ですね(笑)
妙子さんもそのようなことがあったのですね。
マラソンとナイターですか…
私は今や夫の見ていた番組は、ほとんど見ることがありません。
夫がしていたこと、強制されていたことがなくなったこと、
もう夫に合わせることはしなくていい、と思うだけで心が安らぎます。
尋常でなかった夫との暮らしを思うとただ溜息ですが
そんな体験に共感してくださる方がいるだけで、
心慰められます。
ありがとうございました!
ウメより
いつも記事更新を楽しみにしています。
さて、私にとって生まれて初めてのトラバをさせて頂きました。
事後報告になって申し訳ありません。
もし不適切なら削除して下さい。
どきどき・・・
記事に共感してくださってありがとうございます。
トラバ、大歓迎です。
kabuさんもブログをされていたのですね。
読ませていただきましたが…
う~ん…どこのモラもそれぞれに大変ですねえ。
しかしなぜかモラには共通点あり、「うちと同じ!?」と大いに共感しますよね。
そしてモラ被害を受けた私達にも多分、体験した人でしかわからない
共通の感覚があるのだと思います。
kabuさんは、結構モラ夫のことを客観的に見られているようなので、
後は作戦を立てるのみ!
モラといるとこちらの健康が蝕まれるけど
あまり巻き込まれないように気を付けてくださいね。
またkabuさんのブログにお邪魔します。
ウメより
モラルハラスメントって初めて聞きました
私もこの何分の1位には遭遇したことあるけれど・・・・・
でもね 皆ヒトゴトではないですよね
いつなんどきウメちゃんになるかもしれない
だってモラ夫ってお顔に書いてある訳じゃぁないもの
読みながらひとつひとつその場の雰囲気が伝わって気持のはしっこがビクビクしてきます
私でさえこんな気持になる・・・
ウメちゃんはUPする事によって・・いいえ・・ある程度振り切ったからUPできたのね ねっ 今はきっと良い方向に向かってるよね そうだといいのだけれど・・
またぼちぼち10月をのぞかせていただきます
こんな殺伐としたブログを読んで、びっくりしませんでしたか?(^^;)
きっと読み進めていただくたびにホラー度がアップしますよ。
私もまさかこんな結婚生活になるとは!?って感じでしたが
同じように苦しみ悩んでいる方々がたくさんいることを知りました。
baniramamaさんが「ヒトゴトではない」と言ってくださって
嬉しいですよ。
ごく普通にいたわり合いながら結婚生活を送っている方にとっては
きっと信じられないようなことばかりだと思います。
私でさえ信じられませんでしたからね~(苦笑)
今は心穏やかな生活を送っています。
そして自分なりに今までの出来事を整理し前に進むために
ブログを始めました。
モラハラのことを少しでも知っていただけると嬉しいです。
ありがとうございました!
ウメより
ウメさんは表現がお上手なのでぐいぐい引き込まれます でもネ 只ハラハラドキドキだけではなくこういうコトが現実に今現在進行形の人もいるんだぁ
ということにショックを受けました。
では10月に行ってきます
実はうちの旦那もモラっ気があり、私自身離れる勇気と決断力と経済力がなく、一緒に生活してます。
ウメさんのブログを読んで、ああ、私もって共感したところがあって、私はゴルフが大嫌いです。ウメさんと同じようにルールも選手の名前も覚えました。
それと会話、私はすごくおしゃべりなのですが、旦那とは話しません。ウメさんと全く同じで、どうしても話さないといけないときは言葉を選びながら、揚げ足を取られないよう言葉をさがします。
ただ、唯一の救いは(私を蔑むことはいいますが、)それをねたにして激昂しないことです。機嫌は悪くなりますが(笑)
今から、少しづつ読ませてもらいますね。
長いブログを読んでいただき、ありがとうございます。
小太郎さんもしんどい生活を送られているのですね。
夫婦で、心おきなくおしゃべりできないって
本当に苦しいですよね。
私はそれが本当に堪えました。
どうして、こんなにびくびくして言葉を慎重に選んで
最低限の話ししかできないのかって。
小太郎さん、またよかったらいらしてくださいね。
小太郎さんの思いもぜひ教えてくださいませ☆
ウメより
私は、モラハラと言う言葉を今年の2月に知り、
今までの不思議が、はらはらと解けていくような気持ちでした。
マッチさんの掲示板にも何度か投稿させてもらいました。共存するのか、脱出するのか自分の答えが出せないでいるのです。
子供たちのことを考えるとこのまま辛抱しようかなと思ったり、子供たちは本当に真っ直ぐに優しい子達に育ってくれたことは感謝しています。
(3人目は少しやんちゃで手を焼いていますが→高校2年)まぁ、こんな夫婦の間で育ったわりには良しと思っています。
でも、人生のパートナー(モラ夫)とは、これから先楽しい時間を共有することがないと思うと寂しいの一言です。
だから、こうして他の人のブログにお邪魔して共感したときにこんな風に投稿させてもらっています。
また時々投稿させてもらって、愚痴らせてくださいねm(__)m