こころの声に耳をすませて

あの結婚生活は何だったのだろう?不可解な夫の言動はモラル・ハラスメントだった…と知ったウメの回想エッセー。

コミュニケーション不全

2005-09-25 18:24:16 | モラ夫の特徴
 結婚する前、私は夫といろいろな話しをした、ように思う。日常の出来事や、自分のこと、将来のことなどをお互いによく話したような気がする。ふざけたり、じゃれたりして笑い合ったこともある。そんなこともあったのだ。

 それが結婚してからは、夫と話しができなくなった。

 結婚生活が始まって間もない頃、私は食事をしながら、近所の人から聞いたちょっと笑える出来事を夫に話していた。夫は突然「そんな人の噂話しなんてどうでもいいだろう。よくそんなくだらない話しができるな。」と普通に言った。私は沈黙するしかなかった。また、夕食で職場の話しをして夫にキレられたことは前回記したが、別の日に仕事の話しをしたら「職場の話しをされてもつまらないんだよね」と言われた。
 そして更に追い打ちをかけるように「結婚する前、ウメは自分のことばかりしゃべってたときがあったなあ。何で俺はこんな話しを聞かされなければならないのかと思ってたよ。」「ね、いったい何が言いたいの?ウメの話す日本語は全然わからないよ。」「ウメと話しているとイライラする。」

 ささいな会話の度に釘を刺され、私は次第に家の中では無口になっていた。夫と話さなければいけない時には緊張して、話す内容を慎重に頭の中で組み立てた。また、「この言葉は使っても大丈夫だろうか、今話しかけても大丈夫だろうか。」と過度に神経質になった。
 でも、と私は思った。何でも自由に話せるのが夫婦なのではないだろうか。この前はたまたま不機嫌だったのかもしれない、今日は大丈夫かもしれない、普通に話せる日もあるのだから。私はそう思い直し、夫に話しかける。たまにはそれで会話が成り立つこともあった。私はそれに少しだけ力を得るのだが、次にはまた痛い思いをするだけだった。

 後から気づいたことだったが、夫と会話が成り立つときは、あくまでも夫が主導で話しを進めているときだった。夫は自分の職場の話しもよくしたし、友人の噂話もした。私はそれをただひたすら聞き、時々相槌を打ったり、合いの手を入れたりした。そうしていると夫の機嫌はいいのだった。そこで、私の意見を入れてはいけない。「私はそれについてこう思うけど」などと話してしまうと、夫は機嫌が悪くなった。私は注意深く夫の話を聞き、自分の意見は言わないことにした。私は絶えず自分の思いを抑えるようになった。

 夫と出かけ、外食するときも必ず夫が主導だった。中華料理屋でも寿司屋でも、夫が自分の好きなメニューを選択し、私の分まで注文した。私に「何が食べたい?」と聞くこともたまにあったが、私は「私は何でもいいから」と答えた。そうしないと、恐ろしいことになるのではないかと不安だった。夫の上機嫌を持続させなければいけない。それには夫に反することは言わないようにしなければ…常にそんな気持ちだった。

 ドライブでもそうだった。「今日はドライブでもしようか」と言う夫。私は「いいね、どこに行く?」と聞く。夫は「わからない。」と答える。私はそれ以上は聞かない。とにかく夫の気の向くまま、運転させなければならない。でなければ安全な休日は過ごせないからだ。ドライブに出かけ、気ままに走っているとだんだん日が暮れてくる。夫は「今日の夕飯は何?」と聞いてくる。私は身を縮めながら「まだ夕食の買い物してないんだけど」と話す。昼食を食べてすぐにドライブに出かけたので、何も準備ができてなかったのだ。夫は「お米も仕掛けてないのか?こういうときはすぐ食べられるように準備しておくのが妻のつとめだろう!」「ごめんなさい。」恐怖のあまり動悸が激しくなる。「仕方ない。今日は外食だ。でもおまえが夕食代出せよ。」「はい。」こう言われると心の中で、『はぁー、助かった。夫がキレなくてよかった。』と必要以上に安心し、夫が怒りを抑えてくれたことに感謝してしまうのだ。
 当たり前の会話ができない。だから一方的でも、会話が成り立ったと思ったらホッとしてしまうのだ。これはモラ毒に感受性が冒されていく過程だ。

 ドライブだって、普通の夫婦だったら…夫「ドライブでもしようか」、妻「いいね。何処に行く?」、夫「といってもどこにしようか思い浮かばないなあ」、妻「じゃあ海の方に行くのはどう?」、夫「海ねえ。いまいちだなあ。」、妻「ふ~ん、じゃあ走りながら考える?今から出るんだったら、夕食どうする?まだ全然準備してないんだけど」…みたいな感じで、何らかのやりとりをしながらふたりで、怒りもせずに、行動を決められるのだろう。そんな会話は私達夫婦には皆無だった。

 私は夫から数々のモラハラを受けながら、夫との生活では普通の会話はできない、ささいなやりとりもできないんだ、とあきらめた。それは非常に寂しい、悲しいことだった。どうして夫婦なのに、気兼ねなく話しができないのか?しかし用心しなければ、自分が安全に暮らすことができない。夫は短気だから仕方がない。夫もいいところはある…。そう無理に自分自身に言い聞かせた。

 そして安全な生活をしようと、私は自らを縛り、閉じこめていくのだった。

2 コメント

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自身の安全を確保する事・・・ (宇砂子)
2005-09-26 01:11:40
日々の生活の中で、安心して生活する事を望めば、

否応無しに、自分自身を殺して生活しなければいけなったウメさんを思うと、

本当に苦しくなります。



安らぎの場である「家」が、慈しみあうはずの「夫婦」が、

自分自身を追い詰め傷つける場になるとは・・・。



私たちは多くを求めた訳では無いのにね・・・



いや!凹んではいけないね(汗)

負けるもんか!(←無理やり・笑)
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どうしてこうなってしまったのか。 (宇砂子さんへ)
2005-09-26 23:18:31
宇砂子さん、こんばんは!

いつもありがとうございます!



本当に、どうしてこんな状況になったのか、

自分でもよくわからないまま、追いつめられて行きましたね。

夫婦ってなんだろうって自問していました。

私なんて、殆ど夫に何かを要求したことなんてないんですけどね。

きっと宇砂子さんもそうだと思います。



何だか、苛酷な状況を思い出して書いていると

凹みそうになるけど、でも今は違う。

モラを陽に晒し、ミイラにして危険物として看板かけときます!

しばらく、モラ行為を陽に晒す作業を続け、客観的に自分を見つめ直す材料にしようと思っています。

でも「うぇ~…息苦しい…見たくない~!」と思いつつ、なんですけどね。

宇砂子さんも読んでいると、しんどくなるかも。

しんどくなったら、塩をまいて

魔(モラ)除けの札をはっておくれ~(爆)



       ウメより
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