先日、旧友と久々の再会を果たした。実に15年ぶりだった。
それは学生時代の友人だった。物静かな落ち着いた人柄で口数は少なかったが、私はその友人が大好きだった。よく2人で喫茶店に行き長々とおしゃべりしたものだった。話が途切れて沈黙が続いても、そのままぼーっとしていられる私達だった。またある日はお菓子を買い込み、河原に座って大きな川を眺めながらとりとめもなくおしゃべりしたものだった。
そして、私達はそれぞれの職場に就職した。お互いの仕事が忙しくなったことと、友人の仕事は土日勤務もあり、私の休日とはすれ違いとなったことも含め、その友人とはなかなか会えなくなった。それでも電話で話したり、手紙のやりとり(今じゃ希少価値になりましたね~)をしたものだ。
私の転職や結婚で別の土地に転居してからは、連絡することも少なくなり9年くらいは年賀状だけのやりとりになっていた。その年賀状にはいつも『今年こそ会いたいね』と決まり文句を書きながら、ついに会わず1年そして1年が過ぎていた。
ある年の年賀状に、『子宮癌になって手術をしましたが経過は順調です』とあった。その頃、私達は30も過ぎたばかりだったが、その内容に仰天した。ああ、なんてことだろう。どんな思いを抱いているのだろうか。苦しい日々を送っていたのだろう。何か友人に言葉をかけたい、でも何と言ったらいいのだろうか…。手紙を書こうと思っては悩み、そのまま年賀状の季節になってしまった。次の年の年賀状には『仕事に復帰してがんばっています』とあった。私は安心した。そしてまた年月が経っていった。
先日、仕事を終えて帰宅し郵便受けを覗いた。一通の葉書が入っていた。その友人からだった。葉書には『友人との旅行でそちらに○日から2日間滞在します。ウメの家は近いのかな?会えるかな』とあり、携帯のメールアドレスが記載されていた。その日とはまさに今日(葉書を見た日)だった。え~~~!?はやく言ってよ~~~(>_<)今日じゃ~~ん!!時すでに夜7時半。明日は仕事の用事で夜も都合が悪い。会うとしたら、今晩しかない!でも果たして連絡が取れるのだろうか…。私はその友人にメールを送った。10分後に返事が来た。「今新幹線の中です。9時には○○駅に着きます。」え~~?夜の9時…明日は仕事。でも行こうと思えば45分くらいでその駅までは行ける。その友人と会うのは15年振りだった。このチャンスを逃したら、また10年くらい会えないかもしれない。行こう!!
私はまた慌てて時刻表を確認し、家を出た。駅まで早足で歩きながら友人にメールを送った。「○○駅の改札で待っています」と。
電車に乗り込み、新幹線の駅に向かった。本当に会えるかな?ちょっと信じられなかった。そして新幹線の○○駅改札に着き、到着を待った。私は友人の顔がわかるだろうか。15年経って友人は変わっているだろうか。人々が改札口に向かって流れてきた。私は目をこらして1人1人を見つめた。まだだろうか…そう思っていたら、改札を出たところでこちらを見つめている女性に気がついた。友人だった。友人は以前よりずっと痩せていて、何だかきれいになっていた。私達はお互いの再会を喜び合った。
友人は職場の同僚2名と旅行に来たのだが、その同僚までが私達の久々の出会いを喜んでくれ、友人と私がおしゃべりする時間を作ってくれた。友人が泊まるホテルに私も一緒に行き、積もる話しをした。といっても、急に何を話していいのやら、という感じでとりとめもなく、話しをした。友人に「ほっそりしてきれいになって~!」と言ったら、友人は「手術で痩せてね。退院してからも抗ガン剤の点滴を受けるたびに入院して…10ヶ月休職してたんだ」と言った。その後も定期的な検査をしたり、手術の後遺症で腸の癒着を起こしたりと、大変らしい。それでも職場に復帰し、がんばっている…私は彼女の話を聞きながら涙が出そうになるのをこらえた。そして次に「結婚生活はどう?」と彼女が訊いた。私は笑いながら「実は別居しててさ~。いやぁ~、結婚生活はもうごちそうさまだよ。胸焼け起こしちゃった」と言うと、今度は彼女が顔を曇らせ「え~?本当?」という番だった。お互い年賀状だけのやりとりだったので、改めて知ったお互いの近況に、お互いが話しながら、ただ聴き入るばかりだった。お互い離れている間に、いろいろな苦労を体験していたんだな…。あっという間に2時間半がたち、私は最終の電車に乗るため、友人と別れた。友人とはしっかりと抱き合い、「今度会うときは10年後なんてことがないようにしようね!」と約束した。
帰りの電車に揺られながら思った。
毎年毎年、会いたいねと言いながら15年が過ぎていった。そして、まさに当日「会えるかな」と突然の知らせ、そして一瞬のうちに再会を果たせた不思議。なんて再会なのだろう…!
ここでも思うのだ。もしここで、私が夫と生活していたら、多分メールでのやりとりだけで終わっただろう。「会えなくて残念…」と。友人からメールをもらった時間は、夫と生活していたら夕食が終わるか終わらないかの時だ。その後の片付け、洗濯物にアイロンなど、やらなければならないことがある。それをほっといて、いくら15年振りとはいえ、友人と会うことなんて絶対に許されない。
ああ、ひとり暮らしでよかった。突然の、大切な再会を大事にできた。人生とは、こんな一瞬の積み重ねだ。思いがけない一瞬。その一瞬の時によって、どんなに励まされ力づけられるか。しかしその一瞬はいつやってくるかわからないのだ。その一瞬をつかめる喜び。一瞬を大事にできた幸せ。
ああ、何だかこれからも、いいことがやってくるような予感がする。。。
それは学生時代の友人だった。物静かな落ち着いた人柄で口数は少なかったが、私はその友人が大好きだった。よく2人で喫茶店に行き長々とおしゃべりしたものだった。話が途切れて沈黙が続いても、そのままぼーっとしていられる私達だった。またある日はお菓子を買い込み、河原に座って大きな川を眺めながらとりとめもなくおしゃべりしたものだった。
そして、私達はそれぞれの職場に就職した。お互いの仕事が忙しくなったことと、友人の仕事は土日勤務もあり、私の休日とはすれ違いとなったことも含め、その友人とはなかなか会えなくなった。それでも電話で話したり、手紙のやりとり(今じゃ希少価値になりましたね~)をしたものだ。
私の転職や結婚で別の土地に転居してからは、連絡することも少なくなり9年くらいは年賀状だけのやりとりになっていた。その年賀状にはいつも『今年こそ会いたいね』と決まり文句を書きながら、ついに会わず1年そして1年が過ぎていた。
ある年の年賀状に、『子宮癌になって手術をしましたが経過は順調です』とあった。その頃、私達は30も過ぎたばかりだったが、その内容に仰天した。ああ、なんてことだろう。どんな思いを抱いているのだろうか。苦しい日々を送っていたのだろう。何か友人に言葉をかけたい、でも何と言ったらいいのだろうか…。手紙を書こうと思っては悩み、そのまま年賀状の季節になってしまった。次の年の年賀状には『仕事に復帰してがんばっています』とあった。私は安心した。そしてまた年月が経っていった。
先日、仕事を終えて帰宅し郵便受けを覗いた。一通の葉書が入っていた。その友人からだった。葉書には『友人との旅行でそちらに○日から2日間滞在します。ウメの家は近いのかな?会えるかな』とあり、携帯のメールアドレスが記載されていた。その日とはまさに今日(葉書を見た日)だった。え~~~!?はやく言ってよ~~~(>_<)今日じゃ~~ん!!時すでに夜7時半。明日は仕事の用事で夜も都合が悪い。会うとしたら、今晩しかない!でも果たして連絡が取れるのだろうか…。私はその友人にメールを送った。10分後に返事が来た。「今新幹線の中です。9時には○○駅に着きます。」え~~?夜の9時…明日は仕事。でも行こうと思えば45分くらいでその駅までは行ける。その友人と会うのは15年振りだった。このチャンスを逃したら、また10年くらい会えないかもしれない。行こう!!
私はまた慌てて時刻表を確認し、家を出た。駅まで早足で歩きながら友人にメールを送った。「○○駅の改札で待っています」と。
電車に乗り込み、新幹線の駅に向かった。本当に会えるかな?ちょっと信じられなかった。そして新幹線の○○駅改札に着き、到着を待った。私は友人の顔がわかるだろうか。15年経って友人は変わっているだろうか。人々が改札口に向かって流れてきた。私は目をこらして1人1人を見つめた。まだだろうか…そう思っていたら、改札を出たところでこちらを見つめている女性に気がついた。友人だった。友人は以前よりずっと痩せていて、何だかきれいになっていた。私達はお互いの再会を喜び合った。
友人は職場の同僚2名と旅行に来たのだが、その同僚までが私達の久々の出会いを喜んでくれ、友人と私がおしゃべりする時間を作ってくれた。友人が泊まるホテルに私も一緒に行き、積もる話しをした。といっても、急に何を話していいのやら、という感じでとりとめもなく、話しをした。友人に「ほっそりしてきれいになって~!」と言ったら、友人は「手術で痩せてね。退院してからも抗ガン剤の点滴を受けるたびに入院して…10ヶ月休職してたんだ」と言った。その後も定期的な検査をしたり、手術の後遺症で腸の癒着を起こしたりと、大変らしい。それでも職場に復帰し、がんばっている…私は彼女の話を聞きながら涙が出そうになるのをこらえた。そして次に「結婚生活はどう?」と彼女が訊いた。私は笑いながら「実は別居しててさ~。いやぁ~、結婚生活はもうごちそうさまだよ。胸焼け起こしちゃった」と言うと、今度は彼女が顔を曇らせ「え~?本当?」という番だった。お互い年賀状だけのやりとりだったので、改めて知ったお互いの近況に、お互いが話しながら、ただ聴き入るばかりだった。お互い離れている間に、いろいろな苦労を体験していたんだな…。あっという間に2時間半がたち、私は最終の電車に乗るため、友人と別れた。友人とはしっかりと抱き合い、「今度会うときは10年後なんてことがないようにしようね!」と約束した。
帰りの電車に揺られながら思った。
毎年毎年、会いたいねと言いながら15年が過ぎていった。そして、まさに当日「会えるかな」と突然の知らせ、そして一瞬のうちに再会を果たせた不思議。なんて再会なのだろう…!
ここでも思うのだ。もしここで、私が夫と生活していたら、多分メールでのやりとりだけで終わっただろう。「会えなくて残念…」と。友人からメールをもらった時間は、夫と生活していたら夕食が終わるか終わらないかの時だ。その後の片付け、洗濯物にアイロンなど、やらなければならないことがある。それをほっといて、いくら15年振りとはいえ、友人と会うことなんて絶対に許されない。
ああ、ひとり暮らしでよかった。突然の、大切な再会を大事にできた。人生とは、こんな一瞬の積み重ねだ。思いがけない一瞬。その一瞬の時によって、どんなに励まされ力づけられるか。しかしその一瞬はいつやってくるかわからないのだ。その一瞬をつかめる喜び。一瞬を大事にできた幸せ。
ああ、何だかこれからも、いいことがやってくるような予感がする。。。