
羅針盤は古代中国の三大発明の一つで大航海時代には大いに活躍しましたが、現在はGPS航法が主流となり存在感も薄れてしまいました。とは言え、電子機器の故障などに備えて船舶や航空機に羅針盤は設置されているそうです。
羅針盤は棒磁石に目盛盤等を付けて液体に浮かせた機械的な構造なので指針の示す方向も一つ一つに差があります。この差(器差)をある範囲内に収めて正確な方向を示すようにするため、羅針盤のメーカーでは自社の基準器となる羅針盤を持っています。この基準器の精度を維持するため定期的に地磁気観測所に持ち込んで比較観測をしますが、この委託検定業務に携わったことがあります。
厳重に梱包されたメーカーの基準器を慎重に検定台に設置し、望遠鏡で遠くの方位標と羅針盤の差す目盛を交互に20回ほど正確に読み取り、偏角(地図の北と磁針の指す北との間の角度)を算出します。これと同じ時刻の観測所の偏角とを比較して0.5度以内の差であれば検定証が発行されますが、もし差が大きかった場合は羅針盤の調整を行い再度比較観測を繰り返します。
地磁気は日々の太陽活動と共に刻刻と変化しており、偏角も特に日中は大きく変化するので同じ時刻の値で比較する必要があるのです。
メーカーの方の話によると、羅針盤を取り付ける時は航空機や船舶本体の影響を少なくするためにいろいろと工夫をしているそうです。
羅針盤の目盛の幾何学的な模様はとても美しくて特徴があります。大航海時代はまさに命が掛かっていることもあり、この模様にも祈りと信仰が刻まれているようでまるで芸術品と言えます。大海原への夢とロマンを掻き立てられて、見ていて飽きません。
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