「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2006・08・08

2006-08-08 07:49:00 | Weblog
 今日の「お気に入り」は、昨日と同じ作家水上勉さんの「親子の絆についての断想」と題した文章の続きです。

 「オーデンセは、古い面影を隅々にのこしているのでアンデルセンの球根を物語る森や、公園や、石畳の町が息づいているように思えた。だが、宿で考えたことは、十四歳で出たアンデルセンが、イヤだと思った隣人や、母や、第二の父との絆をその後いかに大切に抱き直して旅したかということだった。七十一で死亡するまで、帰らなかったということの内面についてであった。彼の数多い童話の根底に流れるものは、少年時の原体験にさかのぼっての空想と夢であったと気づいた。」

   (山田太一編「生きるかなしみ」ちくま文庫 所収)
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