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「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

散髪屋と美容院 Long Good-bye 2025・04・28

2025-04-28 05:55:00 | Weblog

 

  2010年代 、家庭の事情やら天災やら何やらで 、

 読書どころではなかった時期が 、続いた 。

  その十年余りの間に 、世間で発表された小説 、随

 筆などを 、多少心の余裕を取り戻し 、時間の余裕

 もできた 今日この頃 、読んでいる 。

  直木賞や本屋大賞などの受賞作や候補作の中から選

 んで読むだけでも 結構の数あるし 、読み応えのある

 ものも沢山あ 。

  今日の「 お気に入り 」 は 、最近読んだそうした本の

 中から書き留めた 文章 。

   引用はじめ 。

  「  床屋で髪を切るのは何年ぶりだろう 。高校を卒業
  してからは 、流行(はや)りのヘアスタイルにしたく
  て 、美容院でカットするようになった 。なにしろ  ( 自慢じゃないが 77 のこの歳迄 
  行きつけだった床屋のオヤジは 、いつも僕の髪を自  美容院で髪を切って貰ったこと
  分と同じ七三分けにしようとするのだ 。 」        がない 。 )

  「 石鹸の匂いに振り返る 。店主が四角い陶器に茶せ
  んに似たブラシを突っこんで泡だてていた 。
   そうなのだ 。床屋は髭も剃ってくれる 。近所の床
  屋に通っていた頃の僕は 、髭なんてろくに生えてい
  なかったから 、いつも料金の安い調髪のみのコース
  を選んでいた 。他人に髭を剃ってもらうのは 、たぶ
  ん初めてだと思う 。 」

  「 床屋の円柱看板の三つの色は 、赤が動脈 、青が静
  脈 、白は包帯を表している 。僕にそれを教えてくれ
  たのは 、かつて通っていた床屋のオヤジだ 。昔のヨ 
  ーロッパでは 、床屋は体の悪い血を抜き取る治療を ( "瀉血"という言葉を思い出す 。 )
  行う外科医でもあったから 、その目印なのさ 。オヤ
  ジは自分が昔は外科医だったかのように威張ってそう
  言っていた 。
   沿道に置かれたこの店の円柱看板には電源がなく 、
  赤と青の血管に流れている血は凝固したまま動かな
  い 。 」

  (  荻原浩著 「 海の見える理髪店 」集英社文庫 所収 )

  引用おわり 。

  今回読んだ小説は 、若年性アルツハイマー病をテーマに 、

 2004年に発表され 、山本周五郎賞を受賞した「 明日の

 記憶 」でお名前を知っている作家が 、2016年に書か

 た短編(?)小説「 海の見える理髪店 」 。同じ電子書籍に収録

 されている作品は 、以下の六篇 。

   「 海の見える理髪店 」「 いつか来た道 」「 遠くから来た

  手紙 」「 空は今日もスカイ 」「 時のない時計 」「 成人式 」

  この六作のなかでは「 海の見える理髪店 」が筆者にとっ

 ては一番面白かった 。直木賞受賞作 。

  。 。(⌒∇⌒)! 。 。

 ( ついでながらの 

  筆者註 :「  荻原 浩(おぎわら ひろし 、1956年6月30日 - )
       は 、日本の小説家・推理作家 。埼玉県大宮市( 現・ 
       さいたま市 )出身 。埼玉県立大宮高等学校 、成城大
       学経済学部卒業 。 」

      以上ウィキ情報 。 )

 

   

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