「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

ぬか漬け Long Good-bye 2023・12・07

2023-12-07 05:44:00 | Weblog

 

  今日の「 お気に入り 」は 、沢村貞子さん ( 1908 - 1996 ) のエッセイ

 「 わたしの献立日記 」( 中公文庫 ) から 「 寒暖計 」と題した小文の一節

    備忘のため 、抜き書き 。

    引用はじめ 。

 「 うちの台所の寒暖計は 、細い柱からはみ出すほど大きい 。

  使い慣れた小型のものを五年ほど前に取りかえたのは ――

  老眼のためである 。献立日記二十二冊目 ( 五十七年 ) から

  は 、日附 、お天気のほかに温度もつけるようになった 。毎

  朝八時 、ゴミ袋を外へ出すとき 、たしかめることにしている 。 」

  ( ´_ゝ`) 

 「 ぬか漬けの味のよしあしは 、ぬか床の中の酵母菌と酸菌の

  戦争の結果だという 。朝晩 、よくよくかきまぜて酸素を充

  分ふくませれば 、酵母菌の勢がまして 、よい味になるし 、

  何日も放っておけば 、酸菌が威張り出して 、鼻をつくよう

  な酸っぱい匂いがする 。台所仕事ばかりしている奥さんを 、

  『 ぬかみそ臭い女房 』などというけれど ―― どちらかと

  言えば 、不精な奥さんということになるのではないかしら 。 」

  ( ´_ゝ`)

 「 その年の陽気によるけれど 、ぬか漬けを楽しめるのは大体 、

  三月から十月いっぱい 。十一月の声をきけば ―― ぬか床に

  残っている古づけや昆布 、大豆など余分なものをすっかりと

  り出し 、天塩でニセンチほどの厚い塩蓋をして 、ゆっくり

  眠してもらう 。食卓には 、いれかわりに 、たっぷりの昆布と

  柚子 、少量の唐辛子に適量の塩 ―― 重しをきかして漬けこん

  だ白菜づけ ―― これも 、なかなか美味しい 。

   それにしても 、近頃の野菜の悲しいほどのまずさは 、どうい

  うことかしら 。どんなご馳走のあとでも 、お茶漬けを一口食

  べたい私は ・・・ 何とかして 、すこしでも味をよく漬けよう 、

  と 、毎日 、この大きい寒暖計を眺めている 。 」

  ( ´_ゝ`)

 「 献立ひとくちメモ

   漬物のコツ

  『 ぬか味噌の中では酵母菌と酸菌の戦争である 。酵母菌を

  たすけてやれば 、いやな匂いは消える筈 』三十数年前 、

   大学生の投書を新聞で読んで以来 、わが家では朝かきまわす

  度にビオフェルミンの錠剤を 、夏は十粒 、春秋五粒ほどまぜ

  ている 。そのせいか 、いつもおいしい 。漬け込んだ野菜の

  水分でぬか床がゆるくなりすぎたときは 、乾いた布巾をピッ

  タリ貼りつけて水分を吸いとることも大切 。 」

  引用おわり 。

   野菜本来のおいしさは 、丹精込めて庭に作った畑 ( 家庭菜園 ) で

  穫れたお野菜を 、知己からいただいて食べる 、その瞬間 感じる

  ところ 。スーパーで買うものとは あきらかに違う 。

   家でぬか漬けを作らなくなって久しい 。二十年前は 、家人が 、

  ぬか漬けや白菜づけを 、毎日 、食卓に上せていてくれたなあ 。

 

コメント
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