「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

人は見たくないものは見ない Long Good-bye 2023・12・03

2023-12-03 06:09:00 | Weblog

 

 今日の「 お気に入り 」は 、沢村貞子さん ( 1908 - 1996 ) のエッセイ

 「 老いの楽しみ 」( 筑摩書房 刊 ) から 。

  備忘のため 、抜き書き 。

  引用はじめ 。

 「 近頃は若い人の間にも難聴者がふえたらしい 。街に溢れる自動車 、

  速さを競うオートバイ 、民家の真上で訓練する軍用機など 、・・・

  文化国家は 、なんとも騒々しい 。そのせいで 、若い人たちの鋭敏な

  耳も 、早く疲れてしまうのかも知れない 。まして 、永い間 、働き続

  けた老人たちの耳は 。」

 ( 中 略 )

 「 寺田寅彦先生は 、随筆の一節に 、

  『 人間は見たくないものには 、眼をつむることができる 。しかし 、

   聴きたくないことに耳をふさぐことはできない 。これは不思議な

   ことだ 』

  とお書きになっているそうな ・・・ 。

  それを考えると ・・・ 難聴も満更ではないし 、補聴器もなかなか

  楽しい 。寺田先生がおできにならないことができた 、というわけ

  だから ・・・ 。

   さあ 、今日も 、聴きたいことだけ聴いて 、おまけの人生を 、ゆ

  っくり 、楽しむことにしましょう 。 」

  引用おわり 。

   

   その昔 、家に来た叩き大工の爺さまは 、人の言うことが聞えているのか 、

  いないのかよくわからない人で 、施主の言うことの大半は聞き流すという

  特技の持ち主 。自分にとって都合の悪いことは 聞こえないのか 、聞かない 。

   その仁の口癖が「 そうかね 」。でも 、毎日の仕事は要領よくこなして 、

  あとに塵ひとつ残さず 、って行ったものだった 。

   人は見たいもののみ見 、耳に心地よい 、聴きたい言葉のみ聴くどうぶつ

  である 。

   スマホ全盛の今時の若者の将来の聴力はどうなっていくのだろう 。

   21世紀半ばの世の中は 、難聴者でいっぱい ?

 

コメント
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