今日の「 お気に入り 」は 、沢村貞子さん ( 1908 - 1996 ) のエッセイ
「 老いの楽しみ 」( 筑摩書房 刊 ) から 。
備忘のため 、抜き書き 。
引用はじめ 。
「 近頃は若い人の間にも難聴者がふえたらしい 。街に溢れる自動車 、
速さを競うオートバイ 、民家の真上で訓練する軍用機など 、・・・
文化国家は 、なんとも騒々しい 。そのせいで 、若い人たちの鋭敏な
耳も 、早く疲れてしまうのかも知れない 。まして 、永い間 、働き続
けた老人たちの耳は 。」
( 中 略 )
「 寺田寅彦先生は 、随筆の一節に 、
『 人間は見たくないものには 、眼をつむることができる 。しかし 、
聴きたくないことに耳をふさぐことはできない 。これは不思議な
ことだ 』
とお書きになっているそうな ・・・ 。
それを考えると ・・・ 難聴も満更ではないし 、補聴器もなかなか
楽しい 。寺田先生がおできにならないことができた 、というわけ
だから ・・・ 。
さあ 、今日も 、聴きたいことだけ聴いて 、おまけの人生を 、ゆ
っくり 、楽しむことにしましょう 。 」
引用おわり 。
その昔 、家に来た叩き大工の爺さまは 、人の言うことが聞えているのか 、
いないのかよくわからない人で 、施主の言うことの大半は聞き流すという
特技の持ち主 。自分にとって都合の悪いことは 聞こえないのか 、聞かない 。
その仁の口癖が「 そうかね 」。でも 、毎日の仕事は要領よくこなして 、
あとに塵ひとつ残さず 、帰って行ったものだった 。
人は見たいもののみ見 、耳に心地よい 、聴きたい言葉のみ聴くどうぶつ
である 。
スマホ全盛の今時の若者の将来の聴力はどうなっていくのだろう 。
21世紀半ばの世の中は 、難聴者でいっぱい ?