「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2016・05・14

2016-05-14 06:00:00 | Weblog



  今日の「お気に入り」は、養老孟司さんの「バカの壁」から。



  「日立が開発した『光トポグラフィー』という技術があります。頭にオウム真理教が使って

  いたヘッドギアみたいなものをかぶせて、赤外線によって脳のどこに血液が集まっているか

  を調べることが出来る。この装置ならば、かぶせるだけで何の痛みもないから、子供の脳の

  測定も非常にやり易い。CTとかMRIとかそういう装置の場合、子供におとなしく受けさ

  せるのは大変な骨なのです。

   この装置を赤ん坊につけてみる実験がフランスで行われた(どうも、この種のことをする

  場合、日本では何だか親などが色々とうるさいようです)。すると、こんなことがわかりま

  した。テレビのニュースで母国語が流れているのを聞くと、赤ん坊でもちゃんと、言語を司

  る左脳に血液が集まっているというのです。

   今度はそのテープを逆回しして聞かせるとどうなるか。何と、殆ど血液が集まらない。逆

  回しにして意味の無い音の連続になったものに対しては、赤ん坊も反応をしない。まだ言葉

  を覚えないうちから、脳は無意味な音と言葉とを区別して反応しているのです。」 





  もう一つ、山本夏彦さんの著書の中から。


  「私たちはある国に住むのではない。ある国語に住むのだ。祖国とは、国語だ。

  それ以外の何ものでもないという言葉を私はシオラン『告白と呪詛』で発見した。」






   その人の英語はその人の国語を超えることはない。




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