今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。
「今も昔も旅する人はある。以前はアメリカ人が今は日本人が世界を旅するが、どこへ行ってもアメリカ人はアメリカ人であり、日本人は日本人である。
デンマーク人は旅して外国の大都会にあるときは、自分たちだけで一団になるのが常だという。彼らは共に食事をし、共に芝居に行き、共に名所見物をする。手紙が来るとそれを見せあって故郷のうわさに興じるといったあんばいで、しまいには外国にいるのかデンマークにいるのか分らなくなると、アンデルセンはその名高い『自伝』のなかに書いている。
アンデルセンの本がスエーデンで翻訳されると、デンマーク人は祝福しないで『どうだいこれで彼がスエーデン人とよろしくやったことが分るじゃないか』と言うそうである。
日本人は好んで日本人の悪口を言うが、日本人はアメリカ人そっくりである。またデンマーク人そっくりである。」
(山本夏彦著「ダメの人」中公文庫 所収)
「今も昔も旅する人はある。以前はアメリカ人が今は日本人が世界を旅するが、どこへ行ってもアメリカ人はアメリカ人であり、日本人は日本人である。
デンマーク人は旅して外国の大都会にあるときは、自分たちだけで一団になるのが常だという。彼らは共に食事をし、共に芝居に行き、共に名所見物をする。手紙が来るとそれを見せあって故郷のうわさに興じるといったあんばいで、しまいには外国にいるのかデンマークにいるのか分らなくなると、アンデルセンはその名高い『自伝』のなかに書いている。
アンデルセンの本がスエーデンで翻訳されると、デンマーク人は祝福しないで『どうだいこれで彼がスエーデン人とよろしくやったことが分るじゃないか』と言うそうである。
日本人は好んで日本人の悪口を言うが、日本人はアメリカ人そっくりである。またデンマーク人そっくりである。」
(山本夏彦著「ダメの人」中公文庫 所収)