今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。
「署名運動は抗議の一手段だというが、以前ずいぶんあってこのごろ少くなった。ほかにハンストもあった。ダイインといって死んだふりするのもあったが、半分死んだ人である私から見ると笑止である。路上で死んだまねしてベトナムに平和が来るのだろうか。
私はテレビは百害あって一利ないと思っている。けれども出来てしまったものを出来ない昔には返せない。」
「原水爆の害を知らぬものはないが、これまた出来てしまったものを出来ない昔には返せない。原爆許すまじ、署名してくれと言われても私はしない。
正義は我にある、署名しないものがあるはずがないと思っているから相手は不服である。」
「私は自分が振出した小切手なら署名する。自分の書いた文章なら署名するが、これは他人の書いた文章だ、故に署名しない。
まさか断られるとは思わなかったのだろう。若者はむっとして事務所の戸を荒々しくしめて去ったが、あの何万人の署名はそのごどうなったのだろう。」
(山本夏彦著阿川佐和子編「『夏彦の写真コラム』傑作選2」新潮文庫 所収)
「署名運動は抗議の一手段だというが、以前ずいぶんあってこのごろ少くなった。ほかにハンストもあった。ダイインといって死んだふりするのもあったが、半分死んだ人である私から見ると笑止である。路上で死んだまねしてベトナムに平和が来るのだろうか。
私はテレビは百害あって一利ないと思っている。けれども出来てしまったものを出来ない昔には返せない。」
「原水爆の害を知らぬものはないが、これまた出来てしまったものを出来ない昔には返せない。原爆許すまじ、署名してくれと言われても私はしない。
正義は我にある、署名しないものがあるはずがないと思っているから相手は不服である。」
「私は自分が振出した小切手なら署名する。自分の書いた文章なら署名するが、これは他人の書いた文章だ、故に署名しない。
まさか断られるとは思わなかったのだろう。若者はむっとして事務所の戸を荒々しくしめて去ったが、あの何万人の署名はそのごどうなったのだろう。」
(山本夏彦著阿川佐和子編「『夏彦の写真コラム』傑作選2」新潮文庫 所収)