TRASHBOX

日々の思い、記憶のゴミ箱に行く前に。

ロブ・カーマンとモデルの吉田くん(仮名)

2018年10月14日 | 雑感日記
随分前の話だけど、ときどき思い出す人がいる。その頃自分はぱっとしないコピーライターで(仕事自体は一所懸命にやってた、はず)、あるポスターの撮影で千葉の海のある辺り……九十九里だったのか、も少し近くだったのか、皆目記憶にないのだけど、ともかくロケバスにスタッフ5、6人で乗り込んで、日帰りで移動した。

ファッション系のポスターで、モデルとして参加したのが吉田くん(というか、実はまったく名前を覚えていないのだけど、何かとっかかりがないと文章を書けてないので、勝手にこの名前にさせてもらう)だったのだが、当時30歳前後でその頃の自分と近い年齢で、なんとなく親しめた。確かにスラッとしたハンサム・ガイなんだけど人当たりが良く、逆に「モデルなんだから、もう少しそれらしい雰囲気あった方がいいんじゃないかな」などとお節介な印象をもったりした。

一緒に過ごした時間のほとんどは、移動のロケバスの中。話題が当たり障りのないトンネルを抜けたころ、なぜだか格闘技の話になった。なんと吉田くん(仮名)はキックボクシングのジムに通っていて、試合を見るのも好きだとのこと。そこそこの格闘技ファンだった自分と(ネットが一般的でなかった当時、雑誌『格闘技通信』と『週刊プロレス』、東スポは毎号網羅していて、それなりに知識はあった)、お互い「ロブ・カーマンはすごい」という見解が一致して、すっと距離が縮まった。

ロケ自体は、なんというか淡々と粛々と。ささやかな時間と予算を丁寧に使って、無事終了。残念ながら(?)ここで端のあるエピソードはない。吉田くんは都内のターミナル駅あたりでロケバスを降り、自分はアートディレクターと一緒に事務所まで行って残りの進行の打合せをして家路についた。

後日、当時の勤務先だった広告代理店に吉田くんから郵便物が届いた。ロブ・カーマンがヨーロッパで出場した試合のビデオだった。簡単なお礼のメッセージが添えられていたが、字はあまり上手じゃなかった気がする(人のこと10000%言えない悪筆ですが)。嬉しかった。家で早速見て、お礼を、と思ったとき、つい興奮して封筒を捨ててしまっていたことに気がついた。一体どこにお礼を届ければいいのか。

結局、アートディレクターにモデル事務所の住所を聞き、「先日のお礼」として葉書を出した。でもこういう、個人的なお礼はあまりよろしくないのかもしれない。それが吉田くんの目に触れたかどうか分からないし、そうだったとしても、それからやりとりが続くような熱量は残っていなかった。でも、あのとき封筒を捨てるべきではなかったのだ(捨てる、というつもりすらなかったのだけど)。

今のキックや格闘技ファンで、ロブ・カーマンの名前を知っている人は少なくなってきたと思うけれど、今でも好きな選手だ。今は多くの選手がやっている上下クロスの攻撃(左のパンチの後で右のローキックとか)は、当時はロブ・カーマンの代名詞だった。その無口で実直なキャラクターとバランスの良い攻撃とのギャップは、どこかイケメンなのに気さくな吉田くんを思い起こさせる。彼はリングで、どんな闘い方をしていたのだろうか。

ところで、たまの「リアカーマン」という曲があるのだけど、これを聴くと(ってそんなに回数聴いてないけど)、「ロブ・カーマン〜♪」って聞こえちゃう方は世界中で自分だけでしょうか。
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