TRASHBOX

日々の思い、記憶のゴミ箱に行く前に。

昼なき男 島田一男

2005年04月24日 | 読書とか
古本屋の店頭でそのレトロで渋い表紙に目がとまり、思わず買った一冊。まあジャケ買いですね。(100円つー値段も良かったのだけど)読んでみるとこれがなかなか面白い。昭和34年に初版が発行されたこのミステリー、第2次大戦後に捕虜として暮らし、浦島太郎状態で日本に戻ってきた男は組織の命を受けた暗殺者だった。彼とその行く手に現れる男女の物語を追っていくうちに、ある陰謀が姿を見せてくる...

ハードな設定ではあっても会話のトーンにはどことなく古き良きノスタルジーが漂う。黒澤明の「悪い奴ほどよく眠る」みたいな世界である。調べてみると著者は50年代のNHKの人気ドラマ「事件記者」の作家でもあり、数々のミステリー(歴史物も含め)を残した売れっ子だったようだ。小説後半の追い込み加減はやや説明を焦っているようで少し興醒めだが、全体の描写は古いB級映画(敬意をこめて)を見ているような面白さだ。友人のO君、こういうの好きじゃないかな、と思った一冊でした。

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