TRASHBOX

日々の思い、記憶のゴミ箱に行く前に。

ミュンヘン

2006年03月17日 | 映画とか
Munich
Dir: Steven Spielberg DP: Janusz Kaminski

数年前、旅行でベルリンに行ったときにベルリン・ユダヤ博物館という建物を訪れた。ダニエル・リベスキンドという建築家の設計によるこの博物館は、外観も中の構造も不思議でボーッとしていると迷子になってしまいそうだった。

まず入口から空港にあるような金属探知機を通るものものしさに、ちょっと緊張を覚える。しかし展示の内容や見せ方には意外にエンターテイメント性があって、さほど重苦しい思いをすることもなくユダヤ人の歴史について知ることができる。2時間近くぶらぶらしていたが、退屈な感じはまったくなかった。

しかしちょっと恐いな、と思ったのは、展示を見終わる頃にはなんだか「ユダヤの民はなんて優秀で、またなんて虐げられた人々なのだろう」という感覚が芽生えていたこと。この博物館自体はとても素晴らしく、また意義のある存在だと思うが、同時に歴史を一面から見ていくことの危うさについても考えさせられた。

さて第78回アカデミー賞に5部門でノミネートされながらも受賞は逃した「ミュンヘン」。ドラマチックすぎるとかモサドのメンバーはあんなに弱い人間ではないとか批判もあるらしいが、俺は一本の映画としての完成度を評価したい。長い上映時間を意識させない構成力や、あの時代の街の雰囲気の描写など、政治的視点は別として映画の教科書のようなつくりは素晴らしい。映画はやはり映画であって、そこから歴史の真実を知ることはできない。しかしひとつの出来事について想像することは学べるはずだ。その想像力を少しばかり広げてくれる力を、この作品は持っていたと思う。

ちなみにリベスキンドは、911で崩壊した貿易センタービルの後地の建造物のメイン・アーキテクチャーでもある。

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