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ザ・ライダー

2021年04月10日 | 映画とか
先日の「ノマドランド」に感銘を受けて、クロエ・ジャオ監督の前作「ザ・ライダー」をNetflixで観た(こちらは4月6日で公開終了、Amazon Primeでも観られます)。映画自体については、以下「シネマトゥデイ」から引用します。

「舞台はアメリカ中西部のサウスダコタ。実際にロデオで活躍していた青年、ブレイディ・ジャンドローが自身の身に起きた出来事を北京出身の女性監督、クロエ・ジャオのもとで演じている。ジャオが別の企画でリサーチ中だった2015年にジャンドローと知り合った後に彼が事故に遭い、再会したジャオが彼の物語を映画化した」
出演者たちは、名字こそ違えど実際の人物。どこか「本人による(ほぼ)再現ドラマ」みたいでもあるが、そうではない。事実に基づく物語を本人が演じることで生まれた、れっきとした「創作」だと思う。
言い換えれば当事者と制作者が、映画という枠組みを通じて物語を再構築する試みであり、ジャオ監督の緻密な筆さばきが、事実とフィクションの間の繊細な線を上手く描ききったということなのではないだろうか。
またそのためには、監督は登場人物と同じ地平に立つと同時に、物語全体を見渡す視点ももたなくてはならない。この2つの対岸を行き来するやり方は、新しいクリエイティブであるようにも思える(イーストウッドの『15時17分、パリ行き』は観てないのだけど、なんかそれとは違う気がする、のですよ)。
この辺、ジャオ監督が北京の生まれ、ロンドン、LA、そしてNYCで学んだというクロスカルチャーな背景を持ち出す手もあるのかもしれないが、僕はそんな単純な話ではないと思っている(なんらかの寄与はあっただろうけれど)。ホント、気になる監督だ。
またドラマチックではない、という見方もあるようだけど、そうは思わない。主人公ブレイディの中で大きなドラマが動いていて、それを遠くから双眼鏡で眺めるように見せてもらった、という印象がある。離れているけれど、かなりドキドキしっぱなしだった。
たぶん自分は、映像世界と物語の距離感、みたいなことが気になっているのだと思う。どちらかが、もう一方をなぞるのではなく、演奏と作曲が同時に進んでいくような創作のあり方は心に刺さった。小さいけれどよく研がれて切れ味のよいナイフのような1本だと思う。

公式サイト(英語)はこちらです。特設サイトじゃないのがインディーズ的だけど、コンパクトにまとまっています。

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