テーマとしてはちょっと遠くてシリアスだが、実は自分みたいに日常のあれこれに振り回されがちな人間のための映画だなと思った。遠いリベリアの地とタフなNYの街の話だけど、その空気は安いホテルの壁越しの声以上にビリビリと伝わってくる。
ゴム農園での搾取やタクシードライバーの疎外感、もちろんどっちも未体験だけど、自分の身体のどこかに似たような感覚がある気がする。普遍的、というと簡単だけど、この色の濃い映像の世界には、割とすんなり入っていけた。
映像的には、前半のリベリアのショットは密度が濃くて美しい。しかし撮影監督の村上涼氏は同地で重度のマラリアに感染、NYに戻った4週間後に亡くなられたそうだ。その後のNYでの撮影は、トーンの一貫性およびコントラストを意識して行われたとのこと。そして、この仕上がりも素晴らしい。
個人的には、ラストシーンが印象深いというか、意味深だった。ちょうど併映されたドキュメント短編『Notes from Liberia』も見たので、なおさら2つの土地が繋がって見えた。そこ、監督的には見る人間の想像に委ねたいようだが、やっぱりあの白と黒の2つのオブジェクト、つながっているのでは?
で、日本人監督という点を強調する必要のない軸のしっかりした映画だとは思うけれど、あえて日本の、特に若い人に見てもらえるといいなぁ。きっと自分が立っている場所の見晴らしが、少しよくなると思う。現在、東京は渋谷アップリンクで上映中。この夏の一本に是非どうぞ。
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