国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

ふたを開けなければ、箱の中身は分からない

2010年08月27日 | マスターの独り言(アルバムのこと)
ある程度珍し物のアルバムを手に入れると
ここで小休止とならないのが、ジャズの恐ろしいところである。
「こんなに紹介されてるのはとりあえず後回しだな」と思ったが最後、
あなた、貴重な機会を逸していますよ(自戒も込めているのだが…)。

ソニー・クリスといえば、
ハードバップリヴァイバル期の作品には濃さがあり、
また凄みもあるためジャズ喫茶でも人気作になっていて早くに購入していた。
逆に60年代のプレスティッジ時代などの作品は、
中古でもよく見かけるので「まぁ、とりあえず後回し」の方に入ってしまっていた。
たまたま『アップ・アップ・アンド・アウェイ』が思ったよりも安値だったため購入。

聴いてみて「しまったなぁ~」と思いましたよ。
何故もっと早く聴いていなかったのか?
1曲目タイトル曲は、もうノリノリで耳にも優しいキャッチーなテーマ。
クリスのアルトが軽やかにアドリブを取れば、ジャズ至福の時である。

同じアルト奏者のジャッキー・マクリーンに比べると
音に空間的広がりがあるというか、少し音がゆるめな感じがする。
マクリーンは音全体がギュッと引き締まった感じがあり、
少々沈むような低めを飛行するが、スッと持ち上がってくるかのような軽やかさもある。
でもクリスのアルトは高めの位置に音があって、
ススッと軽やかに高く飛び立とうと持ち上がっていく。
影響を受けているチャーリー・パーカーのような
すべてを飛び越えてしまいそうな飛来感は無いのだが、
それを目指して奮起するクリスのアルトは生き生きとした響きである。
一方で、その明るさや軽さの裏にしっかりと哀愁感もあり、
ギュギュッと胸を突かれるからたまらない。

2曲目「柳よ泣いておくれ」の緩やかなれども語るべき音をしっかりと出しているところ、
3曲目の「ジズ・イズ・フォー・ベニー」の絡みつくようなマイナー調の音色、
これぞクリスの真骨頂という音がある。
脇を支えるタル・ファーロウのギターやシダー・ウォルトンのピアノが
上手く楽曲全体を束ね、演奏の完成度を上げている。

世の中にはこうやって聴いてみて分かる良い音楽がいっぱいあるのだ。
それはジャズに限ったことではないだろう。
このアルバムに出会えたことへ感謝である。
だからまずは聴いてみなければ分からない。

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