国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

ゲッツが目指したものは?

2009年06月12日 | マスターの独り言(アルバムのこと)
さて、スタン・ゲッツの話だ。
とはいえ、僕自身あまりスタン・ゲッツは聴かない。
よく聴くのが『スウィート・レイン』であったが、
最近はちょっと変わってきた。

4月に「いーぐる」で、
「80年代ジャズアルバム100枚選定」イベントがあった。
80年代になるとかなりジャズ自体が下火になり、
何を聴くべきかで悩む年代でもあるため
ぜひぜひにと参加したものであるが、
その中でスタン・ゲッツが2枚選ばれていた。

その内の1枚『ヴォヤージ』が今日の1枚である。
最高で最後の伴侶であるケニー・バロンを加えて、
スタン・ゲッツが透明度の高く澄み切った湖の水面を揺らすかのように
繊細で耽美な演奏を聴かせてくれる。
ケニー・バロン初参加のアルバムでもあるが、
巨人ゲッツと堂々と美しさと優美さを競い合い、
昇華させていくのだから名盤中の名盤だろう。

ゲッツのサックスの音色は、
柔らかさと全てを包み込むような大きさを持っている。
少しかすれ気味に、静かに語るように音は、
何の不自然さもなく当たり前のように空間に溶け込んでいく。
それは深夜に聴いても、その静けさを邪魔することも無いほどに
密やかな語りごとのようである。
現に村上春樹氏の『意味がなければスイングはない』で、
ゲッツ自身がジャズを「夜の音楽」と
インタビューで語っていることが書いてある。

「手抜き」と揶揄されてもゲッツには目指すべき音があったのだろう。
実は日本でもゲッツが熱く燃え上がったことがあるそうだ。
今は無きジャズ喫茶『DIG』で、
ヒノテルとチックが演奏しているのを聴いて、
ゲッツは我慢できずにバリバリに吹きまくったそうだ。

金や名誉をゲッツは求めていたわけではないと僕は思う。
ゲッツが求めていたもの、それはきっと「その夜」に合った音楽なのだ。

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