国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

そのアルトの音色は時間と空間を切り取り、別の世界を作り出す。

2011年12月25日 | マスターの独り言(アルバムのこと)
もしあなたが「ジャズを聴きたい」と思った時に、
手に入れるべきアルバムというのは入門書やジャズ本を参考にしたものである
可能性が非常に高い。
なぜならば「本に載っているぐらいだからそれを聴けばジャズが分かるだろう」という
淡く、かつ甘い期待を乗せてあなたはアルバムを買いに行く。
最初はそのアルバムがとてつもなく魅力的で
「ジャズを聴くぞ!」という意気込みを与えてくれるだろう。

だが、それが次のアルバムにつながる可能性はあまり高くない。
なぜならばそのアルバムは確かに名盤で
大手CD販売店でも「ジャズ」のコーナーに置いてあり、
間違いなくジャズの薫りがする。
しかし求めていたものと何かがズレているような気持ちになってくる。

それには理由がある。
入門書はハズレくじを引かせないように配慮がされている。
「名盤ならばハズレはないだろう」と僕らが思うのは当然のことだ。
確かに誰も間違えていない。
しかし僕らがジャズに求めるものは何だろうか?

その答えはルー・ドナルドソンが知っているだろう。
ブルーノートに最も貢献したアルトサックス奏者であり、
多くのミュージシャンをブルーノートに紹介をした人物でもある。
未だに現役だ。
残念ながら彼のアルバムがジャズ本や入門書で取り上げられる確率は少ない。
なぜならば「これは!」と言えるアルバムが無く、
逆に全てが「これは!」と思えるアルバムだからである。

ルー・ドナルドソンの演奏は奇を狙ったものではない。
ただ単純にアルトサックスを「いかに心地よくならそうか」という
言ってしまえば当たり前の演奏だ。
だが、当たり前の演奏こそジャズの王道である。
知らぬ間に心に染み渡るアルトの音色は僕たちにジャズがいかに深く、
感動的な音楽であるかを伝えてくれる。

『ザ・タイム・イズ・ライト』
このアルバムではコンガのレイ・バレットも参加をしている。
理由は単純だ。
「コンガを入れることでリラックスしたリズムになる」とドナルドソンが考えたからだ。
売れることを考えなかったわけではないだろう。
だが、ドナルドソンはそれ以上に音楽に真摯に向かっている。
「ザ・ニアネス・オブ・ユー」を聴けば、
どこまでも広がるアルトの音と
ブルー・ミッチェルのミュート・トランペットの響きにヤラレてしまうだろう。
合間を埋めるホレス・パーランのピアノも美しい。

ジャズにはそんなミュージシャンがたくさんいる。
決して多くないギャラで音楽に真摯に向かい、音楽を作り上げてきた人々だ。
そう、僕たちはどんなジャンルでも最終的に「人」を求めてしまうのだろう。
それがたまたま僕の場合はジャズだっただけのこと。

きっとあなたにもジャズに限らず、そんな「何か」があるはずだ。