国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

エリック・クラプトンとスティーブ・ウインウッドのライブが始まると、僕はかなり前のめりに…

2011年12月20日 | マスターの独り言(ライブのこと)
この日は気分的なものもあり、オペラグラスも用意をしていなかった。
最近は歌っている人を見るというよりも
その人が歌っている歌を聴くという方に集中するということもあり
クラプトンが見えようと見えまいとあまり大きな問題ではないとも思っていたからだ。

会場は始まる前から異様な雰囲気だった。
往年のクラプトンファンたちはそれなりの年齢を重ねていたし、
若めの人や外国からの来訪者たちは雄叫びを上げ、コンタクトを取り合っていた。
僕は少々窮屈な席にぐっと身を縮めるととにかくその時を待った。

クラプトンとウインウッドが出てくると会場が一気に沸いた。
1曲目は『マディソン・スクエア・ガーデン』と同様に
ブラインド・フェイスの「ハッド・トゥ・クライ・トゥデイ」だった。
最初から超絶的なクラプトンのギターのテクが冴える。
CDで聴いていると実感がわきにくいのだが、
実際に演奏をしているのを聴いてみるとクラプトンのギターは半端じゃなくカッコイイ。
稚拙な表現かもしれないが、巨大な蛇がのたうち、身を地面に叩きつけるような
全然へこたれないような強さとともにシュルシュルと地を這うような素早さがあった。
それがより感じられたのが中ごろにあったアコースティックでの演奏である。
ちょうどライヴも中だるみをしてくる頃だが、
クラプトンのギターの凄みが感じられる演奏だった。
次々に紡ぎ出されるフレーズは丁寧に積み重ねられていき、徐々に熱を帯びてくる。
そこにウインウッドも加わり、
演奏している2人がまるで別世界で興じているかのような空気へと変わっていく。

今回のライヴで楽しみにしていたのが、ドラムのスティーブ・ガットだ。
ジャズ・ミュージシャンとも共演の多いスティーブのドラミングは的確で
かつ曲の鼓動のように生き生きとしたリズムを与えていた。
同時にキーボードのクリス・スタイントンがかなりキテいた。
長髪でその表情は見えなかったが、クラプトンとウインウッドを刺激し続けるような
挑発的で高揚感のある演奏を繰り広げていた。
正直、彼の働きは大きかったと思う。

2時間半近く、MCが入るわけでもなくひたすら演奏が続く。
ジミヘンの「ヴードゥ・チャイルド」もお約束のように演奏をして
武道館を一気に異空間へと変容させていた。

ノリたい人は多かっただろうが、席に座っての武道館ライヴだ。
立ち上がる人もいないで静かに聴くという雰囲気があったが、
それでも最後は立ち上がって熱烈な拍手となった。
最終日だからアンコールが2度ぐらいはあるかなと思っていたが、
通常通りの1回で終わったが、終わった後もスタッフの人がアリーナに
様々な物(おそらくピックだと思うが)を投げ込んでいて
それに人が群がっているという光景も見られた。

最初は躊躇もあったが、結果として聴いておいてよかったと思う。
ライヴにはライブでしか味わえない興奮と感動がある。
たとえそれが一時的であれ、身体に流れた熱は一生静かに燃え続けるものなのだ。