国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

風邪の日に最も効きそうな(聴きそうな? いや、聴かないか…)CDとは?

2011年10月19日 | マスターの独り言(アルバムのこと)
どうにも風邪のようだ。
今まで誤魔化して、「風邪ではない」と自己暗示をかけていたのだが、
鼻水が止まらない。
喉の痛みは随分よくなったのだが、鼻水が止まらないのは辛い。

こんな日は早く寝るのに限るのだが、そこはジャズキチ。
一体風邪の時にどんなものを聴いたらいいのか考えて、CD探しを始めてしまった。
想像するにぶっとい注射のような、一撃でエネルギーが注入されるようなものがいい。
捜し物とはなかなか見つからないのである。
あれやこれやとCDを漁っている内に、
「早く寝た方がいいのではないか?」と自分に突っこみをいれたくもなってくる。

と、運命に導き出されるかのように1枚のCDが目に付いた。
『ザ・ジャズ・コンポーザーズ・オーケストラ』である。
よりにもよってセシル・テイラーだ。
その名を聴けばすぐに音は想像できるだろう。
ガチャピシャの、カコカコカコの、ピロギャーンである。

それがなぜか手が勝手にセットをしてしまうのだから仕方がない。
正直持っていても進んで聴きたいと思ったこともなく、
「まぁ、いつか機会でもあったら…」と眠っていたCDが
よりにもよって眠りを必要とする今日に目覚めてしまうとは…

『世界最高のジャズ』(光文社新書)の作者、原田和典氏は、
そのすばらしさを分刻みで解説をしてくれている。
その本を片手に「コミュニケーションズ11番」(タイトルからしてこうだ!)を聴く。
さすがに夜なので音量は抑えているが、
想像通り、いや、想像なぞできない音が流れ、いや、弾け飛ぶ。
ところがどうであろう。
原田氏の解説が上手いこともあるのだが、
意外や意外セシルの音だけがちゃんと拾えるのだ。
風邪のせいで余計なことまで頭に入らないのかもしれない。
オーケストラ(とはいってもドン・チェリーやファラオ・サンダースなど)よりも
セシル・テイラーのピアノがしっかりと息づいて聞こえる。

いつの間にか前屈みで聴き始めて、はっとした。
「あかん、セシルにやられてる…」
本を手放してもセシルのピアノはまるで生ける蛇の如く
その身を伸縮自在に操り、身体をくゆらせていく。
慌ててその1曲でCDを止める。もちろん続きも行けそうだ。
だが、僕は今宵病人なのだ…
セシル・テイラーに連れられて逝くにはまだ早い…