情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

反イルカ漁映画「ザ・コーヴ」を機に捕鯨について考えてみた…世界の資産を日本だけ勝手にできない

2010-07-04 17:25:00 | そのほか情報流通(ほかにこんな問題が)
 ザ・コーヴについて、反日映画だとして上映をやめさせようとしている排外主義者のグループが相変わらず騒いでいるが、この問題を機に捕鯨について考えてみた。グリーンピースの刑事事件の弁護では、捕鯨の問題そのものとは少し離れた点が争点だったので、深く考えることはなかったが、ザ・コーヴでは、イルカ漁、捕鯨そのものが争点となっているので、考えざるを得なかった。

 で、自分なりの結論は、外洋の捕鯨は中止するべきであり、近海の捕鯨も中止するか、水銀による危険性を明確に示すべきだということ。

 外洋の捕鯨を中止するべきである理由は簡単。外洋の鯨は日本固有の資源ではない。したがって、その利用方法については、世界的な同意が必要になる。そして、世界の過半数は、捕鯨には基本的には反対している。

 もちろん、日本では捕鯨をしなければ、市民が食糧不足で健康を害するというなら、安易にやめるべきだとはいえない。

 しかし、日本では鯨を捕らなくとも、市民の健康面で何ら問題はない。

 だとするならば、世界の過半数が鯨を捕るのをやめようというなら、それに従うべきだ。

 食文化に口を出すな、という反論のうすっぺらさは、食文化に口を出すなということの法的な意味、つまり、鯨を捕る権利を侵害するな、とおきかえてみればわかる。

 …鯨を捕る権利、そんなものが日本にあるのか?国際的に認められてこそ、そのような権利が発生するのであり、国際的に認められないにもかかわらず、独自にそのような権利があるわけがない。

 他の国からしてみれば、

 日本は、何様ですか?

 ってことになる。

 
 反捕鯨の話題が出ると、「オーストラリアではカンガルーを食っている」、「韓国では犬を食っている」とか反論がでるわけだが、カンガルーも犬も国内で生育している動物であり、鯨のような世界が共有している資産ではないわけだ。

 よって、世界の過半数の賛成が得られない以上、捕鯨は中止するべきだ。



 次に近海のイルカ、鯨類の漁についても、やめるか、水銀による危険性をラベルに表示するべきでしょう。

 というのも、近海の鯨類は歯鯨類だが、それらは食物連鎖の頂上にいるから、水銀濃度が極めて高い。

 厚生労働省は次のような注意をしている。


【一部の魚介類等では食物連鎖により蓄積することにより、人の健康、特に胎児に影響を及ぼす恐れがある高いレベルの水銀を含有している。このため、妊娠している方又はその可能性のある方については、魚介類等の摂食について、次のことに注意することが望ましい。

 これまで収集されたデータから、バンドウイルカについては、1回60~80gとして2ヶ月に1回以下、ツチクジラ、コビレゴンドウ、マッコウクジラ及びサメ(筋肉)については、1回60~80g として週に1回以下にすることが望ましい。

 また、メカジキ、キンメダイについては、1回60~80g として週に2回以下にすることが望ましい。

 なお、妊娠している方等を除く方々はすべての魚種等について、妊娠している方等にあっても上記の魚種等を除き、現段階では水銀による健康への悪影響が一般に懸念されるようなデータはない。魚介類等は一般に人の健康に有益であり、本日の注意事項が魚介類等の摂食の減少につながらないように正確に理解されることを期待したい。】

 まず、妊娠している人以外は大丈夫だと言っているが、妊娠しているかどうか気づくまでの間に食するおそれがあるし、妊娠している人も水銀の危険性に気付かないまま食べてしまう可能性がある。

 そもそも、近海で捕れた鯨やイルカを食べる人はそもそも少ないし、食べる量も少ないんだから、食べなくとも、栄養面での問題が発生するわけではない。

 ならば、妊娠に気づくまでの間に妊婦が食べてしまったり、このような注意を知らないで妊婦が食べてしまったりすることによって、日本の将来を背負って立つ胎児に悪影響が出ないようにする必要があろう。

 そのためには、近海イルカ・クジラ(歯鯨類)の漁を禁止するか、もしくは、禁止しない場合でも、販売する際は、

 「妊婦は、1回60~80g程度を2か月に1回程度以上、食した場合、胎児に水銀による悪影響が生じる可能性があります」

 というラベルを張るべきだろう。

 また、居酒屋でも、イルカ料理などとともに、このラベルが運ばれてくるべきだろう。

 厚労省の妊婦向けのパンフレット(冒頭)をみれば、イルカ類を避けるべきであることが分かる。

 http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/dl/051102-2a3.pdf

 胎児は、将来の日本を背負って立つ人材。それにもかかわらず、販売の際に注意書きがないことに無頓着な人に「愛国心」があるとは到底思えないのだが…。

 …私は、コーヴを見ることで、上記のとおり、日本の胎児を危険な水銀摂取から守らなければならないという愛国心に芽生えたのですが、上映反対運動をしている人は、胎児のことなんてどうでもいいのかな…。


ところで、この映画、賛否両論あるところだが、個人的には、最後のイルカ漁のモニターを抱えてある場所に入るシーンがよかったですね。あの場面を見るだけでも、価値があると個人的には思った。


★水銀含有量
コビレゴンドウは、総水銀量が平均7.100μg/g、メチル水銀量で1.488μg/g、バンドウイルカは、総水銀量が平均20.840μg/g、メチル水銀量で6.622μg/gある。

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/dl/050812-1-05.pdf

ちなみに、この数値は、【国は、昭和48年に魚介類中の水銀の暫定的規制値として「総水銀0.4ppm、かつメチル水銀0.3ppm」と定め、規制値を超えるものは販売をやめるなどの自主的規制等を行うこととしました】(http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kenkou/anzen/osen/files/2007mercury.pdf)という数値をはるかに超えている。(なお、μg/g=ppmとする)


★伝統について
2010.07.01 朝日新聞・大阪朝刊 
捕鯨の歴史は400年を誇り、イルカ漁も古くからあったが、組織的に追い込み漁を始めたのは約40年前。町立くじらの博物館に展示するイルカの捕獲が目的だった。

…40年前からのものを果たして伝統といえるだろうか…。

また、ウィキペディアによると、【その結果、2006年に太地町の学校給食には推定150 kgのイルカ肉が提供されたが、2009年には汚染の問題からイルカ肉は学校給食のメニューから外された】ということで、学校給食への提供は、イルカ肉が売れなくなったための救済措置のようにしか思えない。それで伝統だと言われても…。安全性に疑問がある鯨肉を食べさせることの方が問題が大きいのではないか。


★古いけれども何が問題かが分かる資料→日本の捕鯨およびイルカ捕獲に関する報告書
http://www.eia-international.org/files/reports19-2.pdf
「日本政府のDNA 調査によると、1999 年から2000 年に47 都道府県のうち42 都道府県で「鯨肉」として販売されていたもののうち、「科学調査」捕鯨によるミンククジラの肉であるのは半数をわずかに上まわるのみだと判明しています。残りのサンプルは、イルカ、ネズミイルカ、小型のクジラの肉でした。これは、消費者に対する偽りの販売です。それだけでなく、人体に危険を及ぼす可能性のある汚染物負荷を持つ小型クジラ目を知らずに食べている可能性があるのです。クジラ目製品のラベル改ざんは、食品衛生法における偽造ラベルに当たり、違反行為となります。」



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