ピアノ演奏など近所で起きる騒音は、注意することで近所の人間関係悪化に直結してしまうおそれがあることから、その損害の程度にかかわらず、心理的には深刻な問題だといえます。古い話ですが、ピアノの音が原因で隣人を殺害したという事件が新聞紙上をにぎわせたこともあります。そういう事件は極端ですが、ピアノ演奏、ステレオ鑑賞、ペットの鳴き声、エアコンの室外機音などの生活騒音は、発生させている側には騒音という認識がない一方、聞こえている側には心情的に耐えられないものであることが少なくないようです。
さて、生活騒音に対する規制は、法律(国レベル)ではなく、条例(地方公共団体レベル)で定められています。例えば、東京都の場合、「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」によって、住居専用地域の場合、隣家との境界における騒音の大きさを、午前8時から午後7時までは45デシベル(文教地域など)あるいは50デシベル(中高層地域など)、午後7時から午前8時までは40デシベル(文教地域など)あるいは45デシベル(中高層地域など)以下とするよう定められています。40デシベルは図書館内あるいは静かな住宅地の昼程度の騒音、50デシベルは静かな事務所程度の騒音とされています。したがって、この基準が守られていれば、窓を閉めてしまえば、ほとんど、気にならない程度の騒音になります。
これに対し、ピアノ自体は80~90デシベルの音を発するとされています。これでは、近接した隣家において、窓を開け放して演奏した場合には、ピアノの音が上記基準を上回るのは必至です。どうにかしてもらわないと我慢できないのは当然ですね。
このような隣近所で起きる様々な問題を解決するための基本的な方法は、何と言っても、話し合いです。隣家同士2軒だけでは、問題がこじれる恐れがありますから、近所の何軒かにも声をかけたうえ、区市町村に相談して下さい。そのうえで、ピアノの騒音を防止する方法を皆さんで提案する形をとってはいかがでしょうか。
というのも、ご相談者もお分かりのように、ご近所関係を悪化させないためには、穏便な方法で片づけるのが一番よいうえ、裁判所での手続では強制的に中止させることが難しいからです。例えば、音が通常人にも耐えられないほどうるさく、騒音そのものによって、心身に悪影響が出る場合には、差し止めの仮処分(ある行為を行わせないようにする緊急的な措置。最近では、田中真紀子元外相の娘の記事が掲載された週刊誌の出版が差し止められたケースが有名です)を申し立てることもできます。しかし、通常、ピアノの演奏の音そのものによって、近所の人の心身に悪影響がでることは考えられません。なぜなら、そんなに大きな音が出るピアノであれば、ピアノを弾いている人自身が、病気になってしまうからです。ピアノの演奏音によって、心身に悪影響が出るのは、相談者のように、演奏音が気になって眠られない生活が続いた結果などという場合が多いようです。したがって、差し止めの仮処分は通常できないのです。
では、話し合いで解決しない場合はどうすればよいでしょうか。先ほど相談した区市町村の相談員から改善するよう指導してもらうべきです。例えば、東京都の場合、知事が騒音防止の措置をとるよう勧告したうえ命令することができますし、その命令を守らない場合には、1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金が科せられることになっていますから、区市町村などによる指導には効果があるのです。
万一、区市町村の指導によっても、隣家が騒音を改善しようとしない場合には、都道府県の公害審査会で、あっせん・調停・仲裁手続をとって下さい。あっせんは、自主的解決を促す手続、調停は審査会(仲裁委員)主導によって話し合いをする手続、仲裁は審査会(仲裁委員)に判断を委ね、互いにその判断に従うという制度です。裁判に比べ、費用も安いし、相手が受ける印象も裁判ほど悪くはないので、お勧めです。
最終手段は、その隣家を相手取って、損害賠償請求訴訟(いわゆる裁判)を起こすことです。しかし、思い切って提訴しても、騒音についての感じ方が人それぞれ違うこと、ある程度の生活音は受任すべきであることなどから、判決で損害賠償を勝ち取った事例は見あたりません。とはいえ、おそらく、裁判の途中で、演奏する部屋の防音効果を高めたり、聞こえる側の窓を二重サッシにするなどの措置をすることで和解が成立していると思われるので、どうしても、騒音防止をしてくれない場合には、提訴を選択するほかないでしょう。その際、弁護士に委任して冷静に争わないと関係がより悪化することになります。
さて、生活騒音に対する規制は、法律(国レベル)ではなく、条例(地方公共団体レベル)で定められています。例えば、東京都の場合、「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」によって、住居専用地域の場合、隣家との境界における騒音の大きさを、午前8時から午後7時までは45デシベル(文教地域など)あるいは50デシベル(中高層地域など)、午後7時から午前8時までは40デシベル(文教地域など)あるいは45デシベル(中高層地域など)以下とするよう定められています。40デシベルは図書館内あるいは静かな住宅地の昼程度の騒音、50デシベルは静かな事務所程度の騒音とされています。したがって、この基準が守られていれば、窓を閉めてしまえば、ほとんど、気にならない程度の騒音になります。
これに対し、ピアノ自体は80~90デシベルの音を発するとされています。これでは、近接した隣家において、窓を開け放して演奏した場合には、ピアノの音が上記基準を上回るのは必至です。どうにかしてもらわないと我慢できないのは当然ですね。
このような隣近所で起きる様々な問題を解決するための基本的な方法は、何と言っても、話し合いです。隣家同士2軒だけでは、問題がこじれる恐れがありますから、近所の何軒かにも声をかけたうえ、区市町村に相談して下さい。そのうえで、ピアノの騒音を防止する方法を皆さんで提案する形をとってはいかがでしょうか。
というのも、ご相談者もお分かりのように、ご近所関係を悪化させないためには、穏便な方法で片づけるのが一番よいうえ、裁判所での手続では強制的に中止させることが難しいからです。例えば、音が通常人にも耐えられないほどうるさく、騒音そのものによって、心身に悪影響が出る場合には、差し止めの仮処分(ある行為を行わせないようにする緊急的な措置。最近では、田中真紀子元外相の娘の記事が掲載された週刊誌の出版が差し止められたケースが有名です)を申し立てることもできます。しかし、通常、ピアノの演奏の音そのものによって、近所の人の心身に悪影響がでることは考えられません。なぜなら、そんなに大きな音が出るピアノであれば、ピアノを弾いている人自身が、病気になってしまうからです。ピアノの演奏音によって、心身に悪影響が出るのは、相談者のように、演奏音が気になって眠られない生活が続いた結果などという場合が多いようです。したがって、差し止めの仮処分は通常できないのです。
では、話し合いで解決しない場合はどうすればよいでしょうか。先ほど相談した区市町村の相談員から改善するよう指導してもらうべきです。例えば、東京都の場合、知事が騒音防止の措置をとるよう勧告したうえ命令することができますし、その命令を守らない場合には、1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金が科せられることになっていますから、区市町村などによる指導には効果があるのです。
万一、区市町村の指導によっても、隣家が騒音を改善しようとしない場合には、都道府県の公害審査会で、あっせん・調停・仲裁手続をとって下さい。あっせんは、自主的解決を促す手続、調停は審査会(仲裁委員)主導によって話し合いをする手続、仲裁は審査会(仲裁委員)に判断を委ね、互いにその判断に従うという制度です。裁判に比べ、費用も安いし、相手が受ける印象も裁判ほど悪くはないので、お勧めです。
最終手段は、その隣家を相手取って、損害賠償請求訴訟(いわゆる裁判)を起こすことです。しかし、思い切って提訴しても、騒音についての感じ方が人それぞれ違うこと、ある程度の生活音は受任すべきであることなどから、判決で損害賠償を勝ち取った事例は見あたりません。とはいえ、おそらく、裁判の途中で、演奏する部屋の防音効果を高めたり、聞こえる側の窓を二重サッシにするなどの措置をすることで和解が成立していると思われるので、どうしても、騒音防止をしてくれない場合には、提訴を選択するほかないでしょう。その際、弁護士に委任して冷静に争わないと関係がより悪化することになります。