情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

4月8日

2005-04-09 07:52:26 | 日記(事件など中心に)
うちの事務所が総掛かりともいえそうな体制で取り組んでいるのが、過度のタクシー規制緩和損害賠償請求訴訟。運転手たちが、大口の顧客を対象に3割まで運賃を下げることを可能とする通達が違法であることを主張している。今日はその弁護団会議があった。みんなで取り組んでいる訴訟は今、ほかにないため、何となく、この会議を楽しみにしている感じ…。

そもそも、タクシーの場合、事実上歩合制だから、値下げするとそのまま、運転手の賃金に跳ね返ってくる。経営者は、運送収入が少々落ちても、利益はそんなに下がらない(賃金が歩合制だから)から、値下げ競争に参入する。運転手だけが苦しくなる。そこで、運転手が上記通達が違法であると訴えたのです。損害は精神的苦痛による慰謝料。

利用者も過度な規制緩和は過当な競争による危険な運転を招くとして、原告に加わって頂きました。良い報告ができるよう頑張らないとね。




共謀罪…これも今国会で…

2005-04-09 04:54:51 | 共謀罪
北海道新聞報道本部の高田昌幸記者のTBをいただきました。

確かに共謀罪は「とんでも法」の一つです。
「団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われる犯罪(懲役長期4年以上のもの。つまりほとんどの犯罪)の遂行を共謀した者」に対し、懲役刑を科すというのですから…。

共謀ですよ、共謀。つまり、話しただけで、犯罪になるわけです。片方が冗談って思っていても、片方が本気だったら、もうアウト。どうやって冗談だったといえるでしょう。

この共謀罪は、国境を越える組織犯罪対策のための条約に基づいて、策定されていますが、日本では3つの問題があります。

1)越境的(国際的)でない犯罪にも適用される
2)組織的(継続的)犯罪集団でない犯罪にも適用される
3)何らかの準備行為(打合せ、電話連絡、犯行準備など)がなくても適用される

本来は、この3つで縛りをかけるべきものなのです。
日弁連パンフレットhttp://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/katsudo/jinken/data/kyoubouzai_leaflet.pdf
日弁連意見書
http://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/sytyou/iken/data/2003_02.pdf
参照。

今国会でまた提出されようとしている。
「団体」とは「3人以上」の集団のことのようです(次の記事で訂正しています)。「組織」とは「当該行為を実行するため」のものも含まれかねないようです。

3人の会社員が酔っぱらって「小泉はだめだ。俺たちでぶん殴ってぎとぎとにしてやる」と言っただけでも(「ぎとぎと」=傷害罪=懲役10年以下=長期4年以上の懲役の犯罪)、成立しうるわけです(次の記事で訂正しています)。

しかし、政府はよくもまぁ、次から次へ…

第1章から第12章について

2005-04-09 03:48:02 | 憲法改正国民投票法案逐条批判


第1章 総則(1条~6条)
 特段、問題点は見あたらない。

 なお、第4条規定の「第1号法廷受託事務」とは「法律又はこれに基づく政令により、都道府県、市町村又は特別区が処理することとされる事務のうち、国が本来果たすべき役割に係るものであって、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの」(地方自治法2条9項1号)


第2章 国民投票の投票権(7条)

 満20歳以上のものに限定している点、また憲法改正国民投票運動に関する違反以外の罪で禁固以上の刑に処せられた者などを除外している点は、問題だと考える。
 
 将来の日本のあり方を決めるという意味では、義務教育卒業年齢者には、投票権を与えるべきではないか。
 また、服役中の者を除外する合理的理由はない。



第3章 国民投票に関する区域(8,9条)
 特段、問題点は見あたらない。
 なお、与党協議会実務者会議(以下「協議会」という)において、国政選挙との同時開催は禁止されることとなったため、条文が変更される予定。


第4章 投票人名簿(10条~18条)
 協議会によって、公職選挙法に規定する選挙人名簿を使用することとされた。
 よって、大幅削除の予定。
 実質的には、特段、問題点は見あたらない(年齢の点は除く)。
 ただし、閲覧にあたっては、プライバシーの侵害に留意するべきである。

第5章 在外投票人名簿(19条~30条)
 協議会によって、公職選挙法に規定する在外選挙人名簿を使用することとされた。
 よって、大幅削除の予定。

 公職選挙法30条の4において、一定の国などに「引き続き3ヶ月以上」住所を有する者と規定されている点が問題である。
 憲法改正の発議から投票まで30日(協議会で30日に短縮された)以後90日以内とされているため、海外で投票しようと考えた長期旅行者などが投票の機会を失う。発議から投票までの最短期日を下回るよう規定すべきではないか。


第6章 国民投票の期日等(31、32条)
 31条の憲法改正発議から投票まで「60日以後90日以内」は、協議会で30日以後90日以内と修正された。
 30日は短すぎないか。発議段階で十分な情報が国民に伝わっているのが通常だろうが、手続法においては、通常ではない場合をも、考慮に入れるべきである。すなわち、憲法改悪をひそかに発議して国民に負担を押しつけようとしているような場合、十分な国民的議論を行う必要がある。
 最短は60日あるいは90日でもよいのではないか 。

 なお、協議会において、国政選挙との同時開催は禁止されることとなったため、条文が変更される予定。この点は、改善されたといえよう。

 32条の告示も「20日」では短か過ぎよう。


第7章 投票及び開票(33条~46条)
 協議会によって、投票用紙の様式(36条)、投票の方式(37条)、投票の効力(43条)そのほか国民投票に関し、必要な事項は、憲法改正の発議の際に、別に定める法律の規定によるものとされた。

 したがって、複数項目にわたり改正案が示された場合(例えば、9条変更と環境権の新設)、一括で賛否の意思を示すのか、各項目ごとに示すことができるのか、不明確。この点は、各項目ごとに示すことを明記すべきである。
 日弁連の意見書参照http://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/sytyou/iken/data/2005_14.pdf


第8章 国民投票分会及び国民投票会(47条~53条)
 特段、問題点は見あたらない。



第9章 国民投票の効果(54条)
 「有効投票の総数の2分の1」というのは考えられる最低の基準であり甘すぎる。
 「有効投票総数の2分の1かつ有権者数の3分の1」にするとか、「有効投票総数の3分の2」にするとか、最低投票率を定めるなどの基準を設けるべきである。
 日弁連の意見書参照http://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/sytyou/iken/data/2005_14.pdf


 
第10章 訴訟(55条~60条)
 協議会によって、下記のとおり修正された。

自民党提示案では、一の「国民投票無効の訴訟」と二の「国民投票の結果の無効の訴訟」を一つの訴訟として規定していたが、公職選挙法の「選挙無効訴訟」、「当選無効の訴訟」の区分にならって区別して規定した。

一 国民投票無効の訴訟  ※「選挙無効の訴訟」に相当する訴訟
1 国民投票の効力に関し意義があるときは、投票人は、中央選挙管理会を被告として、国民投票の結果の告示の日から起算して30日以内に、東京高等裁判所に訴訟を提起することができるものとすること。
2 1による訴訟の提起があった場合において、国民投票に関する規定に違反することがあるときは、国民投票の結果(憲法改正に対する賛成投票の数が有効投票総数の二分の一を超えること又は超えないことをいう。)に異動を及ぼすおそれがある場合に限り、裁判所は、その国民投票の全部又は一部の無効の判決をしなければならないものとする。

二 国民投票の結果の無効の訴訟  ※「当選無効の訴訟」に相当する訴訟
 国民投票の結果の効力に関し異議があるときは、投票人は、中央選挙管理会を被告として、国民投票の結果の告示の日から起算して30日以内に、東京高等裁判所に訴訟を提起することができるものとすること。

三 訴訟の処理に係る原則
 一又は二による訴訟については、裁判所は、他の一切の訴訟に優先して、速やかにその裁判をしなければならないものとすること。

四 訴訟の提起が投票の効果に与える影響
 一又は二による訴訟が提起されても、その無効判決が確定するまでは、国民投票の効果に影響を及ぼさないものとすること。

  
以上については、意思申立期間が短い、東京高裁に限定している、などの問題がある。 
 日弁連の意見書参照http://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/sytyou/iken/data/2005_14.pdf
 

第11章 再投票及び更正決定(61条)
 第10章の変更に伴う変更あり。
 第10章との関連で問題となるか。


第12章 国民投票に関する周知(62条)
 協議会によって、投票所内に憲法改正案が掲示されることとなった。
 特に問題点は見あたらない。

 

第13章(表現の自由関連)など

2005-04-09 02:10:44 | 憲法改正国民投票法案逐条批判
憲法改正国民投票法案における表現の自由に関わる問題点(第13章について)5月3日改訂版
                       

1 根本的問題点
  法案は、選挙の公正を図るために表現の自由を制限した公職選挙法の規定を流用している。しかし、そもそも、日本の公職選挙法は規制が厳しいうえ(奥平康弘著「なぜ『表現の自由』か」175頁。選挙運動においてこそまさに「あらゆえう言論が…自由に競い合う場」がまず前提的にあるべきであり、ただ「選挙の公正」を確保する観点から自由に対して「必要最小限度の制約」があってしかるべきである)、「一定の候補者」の中から代表者として当選すべき者を選択する際に求められる公正と憲法のあり方そのものについて自ら選択する際に求められる公正は自ずから異なる。なぜなら、選挙の場合は、その人の政策とは関係のない人格攻撃(しかも虚偽の)などが行われる可能性があり、一定程度、そのような不公正な情報が流通することを防ぐことが必要とも思われるからである。しかし、憲法の改正条文について、報道する場合、条文から離れた批判をすることはできない(しても意味がない)。したがって、両者を同一視することはできず、公職選挙法の規定を流用した法案策定は誤りである。

2 具体的問題点 
(1)報道の自由の制限
  ア 予想投票の公表の禁止(68条)
  法案は国民投票の結果を予想する投票の経過や結果を投票日前に公表してはならないとしている。
確かに、選挙に際して予想投票の結果を明らかにすることは、優勢とされた候補者の運動が弱まるなど選挙結果に影響を与えることがありうるなどの弊害から禁止されることに一定の合理性がありうる。
しかし、憲法改正内容についてメディアや市民団体などがアンケート投票させてこの結果を投票日前に明らかにする行為を禁止する合理的理由はない。むしろ、さまざまな角度からアンケートすることによって互いに理解が深まるという効果があるのではないか。
なお、与党協議会は、調査員が面談して行う世論調査は、予想投票とは異なり投票日前の公表を可能としているようであるが、テレゴングのような形での調査は禁止される。テレゴングを伴うテレビ番組によって、国民の関心はより喚起されるはずであり、そのような番組を禁止する合理的理由はない。
  イ 虚偽報道という名目での批判封じ込め(69条、71条)
   法案は、新聞・雑誌・放送事業者が報道・評論において、虚偽事項を報道したり、事実をゆがめて報道することで国民投票の公正を害することを禁止している。 
   確かに、「一定の候補者」に対して、中傷的・人格攻撃的な虚偽報道や歪曲報道をしたりすることは、選挙期間が短期であるため、当該候補者が不当に落選する可能性があるため、禁止することに一定の合理性がある。
しかし、憲法改正案について議論する際には、中傷的・人格攻撃的な虚偽報道はなしえない。改正案の内容について、正面から議論することになる。その際、改正案の評価、将来に与える影響の予測などは、千差万別となりうるし、法案の理解を深めるためにはそのような多角的な議論が交わされるべきである。しかるに、「虚偽」や「歪曲」を理由として規制がなされると、虚偽・歪曲の判断基準が明確でないため(明確性の原則:表現行為を規制する場合、その基準を明確にしなければならないという原則)、表現の自由を著しく萎縮させることになる。本法案のように、罰則をもって、規制をかけることは、萎縮効果を倍増させる。
 
  ウ 新聞・雑誌に報道・評論を掲載することの禁止(70条)
   法案では、国民投票の結果に影響を及ぼす目的をもって、新聞・雑誌に対し編集その他経営上の特殊な地位を利用して当該雑誌・新聞に国民投票に関する報道・評論を掲載することを禁止している(70条3項)。
   確かに、新聞・雑誌が、「一定の候補者」の選挙結果に影響を与えることを目的としてその候補者を誉めたり他の候補者を非難したりすることを禁じることは、メディアの影響力の大きさから一定の合理性がある。理由は、不当な人格攻撃などがなされる可能性があるからである。
しかし、憲法改正案の内容を新聞・雑誌が賛否を明らかにしつつ記事にしたり評論したりすることを禁止することに、まったく合理的な理由はない。条文を離れた不当な批判はありえないからである。
通常の立法や政策についても、新聞・雑誌は、賛否の立場を明確にした記事を掲載しうるのであり、なにゆえ、憲法について、そのような記事を掲載しえないのか不明である。
さらに、法案では、国民投票の結果に影響を及ぼす目的をもって、新聞・雑誌に対し編集その他経営を担当する者に対し、財産上の利益を供与するなどして、当該雑誌・新聞に国民投票に関する報道・評論を掲載させることを禁止している(70条1項。2項はその裏返し)。
しかし、軽い食事をしながらレクチャーするような場合まで恣意的に取り締まられる可能性もあり、また、広告との明確な区別が可能かどうかも不明確である。
(2)国民投票運動(憲法改正に対し賛成又は反対の投票をさせる運動)の禁止
ア 教育者の運動禁止(65条)
法案は、教育者がその地位を利用して国民投票運動をすることを禁止している。しかし、教育者が憲法改正案について、授業などで討議することは考えられるし、そのような活動を禁じる必要はない。むしろ、そのような場で討議することによって、改正案についての理解が深まる。
イ 外国人の運動禁止(66条)
法案は、外国人による国民投票及び国民投票運動を完全に禁止し、寄付の収受すら認めていない。
しかし、外国人の中にはさまざまな事情から長年在日している者もおり、国民投票運動に対して一切の関与を認めないというのはあまりに差別的である。自らの生活環境のあり方を決める重要な政策決定の場でもあるからである。また、例えば、外国での憲法改正後の実態などを外国人が講演したりすることは、国民の憲法改正案に関する理解を深める上でも有益である。

なお、63条(特定の公務員の国民投票運動の一律禁止)、64条(一般的公務員の地位を利用した国民投票運動の禁止)、67条(教育者の地位を利用した国民投票運動の禁止)についても、規制を緩和すべきである。
 なぜなら、63条については、裁判官や検察官、警察官など、国民投票運動の公正さと直接関係のない者についてまで、一律に運動を禁止しており、規制が広すぎるからである。また、64条については、「地位を利用して」という点があいまいであり、職場で同僚とディスカッションすること、あるいは、自分が公務員であることを知っている近所の人とディスカッションすることすらしにくくなる可能性がある(萎縮効果)からである。さらに、67条においては、本来、最も憲法について研究をしており、その発言が注目されるべき憲法学者が、講義中に憲法改正案に関する議論をすることができなくなるなどの弊害があるからである(学者の著作が「講義ノート」などの形をとってなされることはよくある)。


第14章 罰則(72条~95条)
 表現の自由との関係で、73条、85条、86条、91条、92条が問題となる。
 萎縮効果を倍増させるからである。
 
第15章 補則(96条~105条)
 特段問題点は見あたらない。