tokyo_mirage

東京在住・在勤、40代、男。
孤独に慣れ、馴れ、熟れながらも、まあまあ人生を楽しむの記。

帰り道の徒然

2013-06-14 19:02:42 | 今日の出来事
駅から家までの帰り道。

目にしたものと、そこで思った微細なことの徒然。

車道を渡る。夜だというのに無灯火でスピードを上げて突っ走ってくるバンがある。
ああいうのに撥ねられて命を失うようなことがあったらたまらないと思う。

細く薄暗い路地に面した廃屋がある。庭先にはゴミが打ち捨てられている。
土が露出した箇所に一部だけ掘り返された跡があり、そこだけ何か植えられているようである。
割り箸より少しだけ大きいくらいの心もとない板切れが刺さり、「××(ここの地名)ガーデン」と書かれている。
堂々と銘打つわりにはきちんと手が加えられている感じでもない。「投げやりな愛着」。

1階に郵便局が入る賃貸マンションがある。
「1階が郵便局」というのは物件の売りになるのだろうか。
「日中は常に人の気配があり、『警察官立寄所』でもあるので安心です」
「飲食店とは違い、衛生面の不安もありません。臭いや騒音もありません」
…自分が大家だったらどんなセールストークをするんだろうと考える。
マンションの大家であれば、郵便局の大家でもあるわけだから、
郵便局という「上客」にずっとテナントとして残ってもらうために、
この郵便局の売上に貢献しようと、小包の発送は常にここに持ち込むよう心がけたりするのだろうか。

「××銀行寮」と表札の出ている建物の横を通る。名前に数字が付いた銀行。地方銀行だろう。
すでに帰宅した住人がおり、蛍光灯が点いている部屋がいくつか。
地方が本拠の銀行で、行員の本来の生活の基盤もそこにあるはずで、
一時的に東京に赴任することになった今は、嬉しいのだろうか、淋しいのだろうか。
東京近郊でしか暮らしたことのない自分は逆に、名もなき地方都市で暮らしてみたいものだと思うが。

薄暗い住宅街。ジュースの自販機だけが明るい。
自販機の横に青いゴミ箱がある。丸く穴の開けられた、缶のゴミ箱だ。
朝、この界隈を杖をついて散歩している老人がいる。
病を患ったのか、片側半身が不自由なようで、そのリハビリのつもりなのだろう、
道端に落ちている紙くずや枯葉などを拾っている。拾ったゴミを、このゴミ箱に入れている。
缶のためのゴミ箱だから、そのようなゴミが一緒に混じるのは、自販機の持ち主にとっては迷惑なはずだ。
自分が自販機の持ち主だったら、この老人をどう説得してその行為をやめさせたらいいのだろうと思う。
体が不自由な相手に小言を言わねばならない気の重さ。
ゴミを拾う行為は間違っていないが、拾ったゴミを「そのゴミ箱」に入れてはならないのだ、
ということを言い聞かせねばならない骨折り。
…勝手に想像して気疲れする。

小川を渡る。川底が急傾斜するところがあって、瀬の音がする。
「温泉街にいるみたいだ」と思う。具体的にどこかの温泉街を思い出すわけではない。
おそらくは志賀直哉の「城の崎にて」を読んだ影響が大きいんだと思う。

家に着く。最近うちの敷地で見かけるようになった「カエルさん」が今日はいない。
「さん」付けをするのは、親しみをおぼえているというのもあるが、
それよりも、その風采に自分より年長な者の老成を見るからだ。
ある晩見かけた時は、センサーライトが働いてそこだけ明るくスポットを照らされた草の上で、
ピクリとも動かなかった。
しばらくじっと見つめていても動かなかった。
立ち去って、遠くから振り返っても動かなかった。

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