特殊清掃「戦う男たち」コメント公開

戦友の意見交換の場として公開しています。

温故知新・恩古恥心(公開コメント版)

2008-02-26 07:41:58 | Weblog
〝一月は行く、二月は逃げる、三月は去る〟と言われるように、年が明けたと思っていたら、もう二月も終盤。
相変わらず寒さは厳しいけど、陽は随分と延びてきた。
晴れた日には、かすかに春の匂いも感じられ、それだけでもホッとするものがある。


少し前、仕事である街に出掛けた。
その日も、気持ちのいい晴天で空気も澄んでいた。
走らせる車からの景色はクッキリときれいで、気持ちを仕事モードに切り替えるには邪魔なくらいだった。

「あれ?この辺りは確か・・・」
目的地が近づいてくるにつれ、ある過去の記憶が蘇ってきた。

「やっぱりそうだ!」
そこは、その昔、特掃をやった現場のすぐ近くだった。

「懐かしいなぁ・・・時間もあることだし、ちょっと行ってみるか」
依頼者との約束の時間までだいぶあったので、私はそこに行ってみることにした。



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生きる力(公開コメント版)

2008-02-22 09:23:49 | Weblog
私は、幼い頃から高い所が苦手。
よくある「高所恐怖症」というヤツだ。
しかも、私のそれは重度。
この歳になっても、目立った改善はない。

その昔は、分譲マンションの広告を見ても、
「一階は人気も値段も高いんだろうな」
と本気で思っていた。
「好んで高いところに暮らしたがる人なんているはずない!」
と、勝手に思っていたのだ。
しかし、実際はその逆で、高階に上がれば上がるほど人気も値段も高くなる。
そのことを知って、モノ凄く驚いたことを今でも憶えている。


呼ばれた現場は、大小のビルがひしめき合う繁華街。
依頼してきたのは、ビルメンテナンスの会社。
現場で私を待っていたのは、その会社の部門責任者。
もらった名刺を見ると、その会社は某大手企業グループの一社だった。

その男性は、建物の図面を広げて、話を始めた。




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塵も積もればヤマトナデシコ(公開コメント版)

2008-02-18 07:25:34 | Weblog
「引越しをするので、部屋を片付けたいんですけど・・・」
ある晴れた昼下がり、若い女性の声で、そんな相談が舞い込んできた。

「お住まいはマンションですか?アパートですか?」
「アパートです」
「間取りはどれくらいあります?」
「1Rです」
「何階建の何階ですか?」
「二階建の一階です」
「荷物の量はいかがですか?」
「ん゛ー、少なくはないですね」
「車はつけられますか?」
「はい、前が駐車場になってますので」
私は、決まったパターンの質問を事務的に投げ掛け、対する女性も即答。
基本情報を入手したところで、質問の内容を突っ込んだものに変えた。




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守銭奴(公開コメント版)

2008-02-14 09:29:45 | Weblog
「守銭奴」→意味:ケチでお金への執着心が強い者。

では、実際の守銭奴は、どんな奴なのだろうか。
それは多分、私みたいな輩だろう。
普段は、何事においても自信過少な私でも、これには自信を持って名乗りを上げられる。
何故なら、私は、お金を愛し・敬い・恐れているから。
お金の持つ真価を理解しているのではなく、お金の持つ力に毒されているから。

着る機会もないのにブランドスーツを欲しがったり、必要もないのに高そうな腕時計に目が行ったり、仕事には使えないのに高級車に憧れたり・・・
いい歳をして、玩具を欲しがる子供に毛が生えた程度の低次元。

「いい事を言ったって、きれい事を吐いたって、所詮は金がなければ何もできないじゃないか!」
こんなセリフを何度となく吐きながら生きてきた私。




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自探旅(公開コメント版)

2008-02-10 10:26:52 | Weblog
それにしても寒い!
今は、世間の風よりも実際の空気の方が冷たい。
冬は毎年寒いものだけど、昨年の冬に比べると明らかに寒く感じる。
先週の日曜には首都圏でも大雪が降ったし、その後も雪の日があった。

雪が降ると、まずは仕事の足が心配になる。
幸い、日曜日だったため、人の通りや車の通行量は少なくて大きなトラブルに巻き込まれなくて済んだが、辺り一面を白く覆いながら降り続く雪は、どこかの雪国を旅しているような錯覚を感じさせるほどだった。

こんな季節に雪中の露天風呂なんかに入ると、それはそれは格別だろう。
熱い天然温泉に雪を入れて温度を調節。
冷たい空気がオーバーヒート気味の頭を冷やし、温かい湯が死人相手に冷えた身体を温めてくれる。
更に、酒があると至福。
香が飛ばない程度に冷えた日本酒が、身体を中から温める・・・
・・・想像するだけで頬が緩む。




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真偽の痛み(事前編・下) (公開コメント版)

2008-02-06 08:40:01 | Weblog
「私の方が死にたくなりました・・・」
女性は、遺体を発見したときの様子を静かに語り始めた。

都会で独り暮しをしていた娘の突然の死・・・
それも、不自然な死に方・・・
しかも、遺体は誰にも気づかれることなく腐乱・・・
そして、それを最初に発見したのは自分・・・
その時に受けたショックとその後の心痛は、他人の私には想像すらできず・・・
そんな話を聞いて返す言葉もない私は、場の雰囲気をどこに落ち着けるべきか戸惑うばかりだった。

「とりあえず、部屋を原状回復するところまでは責任を持たれた方がいいと思います」
私は、事の真相を他人に明かすかどうかの前に、社会の一員としての最低限の誠を守ることを勧めた。

「それはそうですね・・・」
夫妻は、何かを深刻に考えているような様子で、私の提案に同意した。




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真偽の痛み(事前編・上) (公開コメント版)

2008-02-02 07:57:51 | Weblog
「ちょっと事故がありまして・・・」
ある日の夜、中年の男性から電話が入った。
〝独り暮しをしていた身内が亡くなった〟とのことだったが、〝事故〟という言葉と震える声から、死因が自殺であることがすぐに私の頭を過ぎった。
それから、男性がかなり動揺していることを感じた私は、必要最低限のことだけを聞いて電話を終えた。

その翌日の昼間、私は現場マンションの前で男性を待った。
教わった住所に建っていたのは、築年数の浅い1Rマンション。
建物全体を包む斬新なデザインから、そこが単身の若者向マンションであることが伺えた。



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